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早夜緋想天


その日、私はいつもと違う自分に気がついた。

何と言うか、そう、他人の身体から立ち上るオーラが見える。


朝方、起床の時間を知らせに来たイナバから、

もやもやとした緋っぽいオーラが立ち上っていた。

私はそれを晴嵐っぽく感じた。

次に、朝食の時間を知らせに来た別の因幡からも同じようなオーラが見えた。

私はそれを台風っぽく感じた。

さらには、着替えを持ってきた別の因幡からも同じようなオーラが見えた。

私はそれを曇天っぽく感じた。


と言うわけで思ったのよ。

私すげぇ。

目覚めちゃった。


これはきっと昨日夜遅くまで読んでいたHUNTER○HUNTERのお陰だろう。

夢の中でも散々念を使う練習をしていたことだし、

溢れる才能の持ち主である私、蓬莱山 輝夜としては念能力者として目覚めていても不思議じゃない。

私はウキウキとしながら、そのことを教えてやろうと勢いよく彼女の部屋の襖を開け放った。


・・・ノックはしないのかって?


自分の従者の部屋を訪ねるのにわざわざんなことする主が何処に居ますか。

実際、私の従者の八意 永琳も当然のように文句一つなく、こちらに振りかえ・・・あれ?


「やばっ」


永琳は似つかわしく無い台詞を吐きつつ、何か本のようなものを彼女が向かっていた机の引き出しに押し込んだ。

それから、何事もなかったのようににっこりと微笑みながらこちらに振り返る。


「何、輝夜。
もしかして10時のオヤツ?
それなら・・・」

「ねぇ、永琳。
怒らないから言ってごらんなさい、何隠したの?」

「何も隠してなんていないわよ」


私の言葉に永琳は何でもないことのように答えたが、

彼女の目はとんと珍しいことにこれでもか、と言うほど泳ぎまくっていた。


「見せなさい」

「・・・何もないってば」

「いいから」

「・・・分かったわ」


なおも緩めない私の追及に観念した永琳は隠していた本を取り出し、おずおずと差し出した。

正直、永琳が隠すような本なんて見当がつかな・・・


「・・・何よこれ」


掠れた声で私が呟くと、永琳はさっと顔を逸らす。

彼女をして見られないぐらい今の私はみっともない顔をしているのだろうか。

それも性の無い話だ。

何故ならその本は・・・



10.5th Touhou Project 東方緋想天 台本 (八意 永琳様)



とタイトルがふってあったのだ。

え、あれ?

10.5?

私、聞いてない。

聞いてないってば。


「どういうことっ!?
何よ、それっ、わた、わたしっ、聞いてないっ!!」

「輝夜・・・」


みっともなく取り乱しながら騒ぐ私の叫びを聞いた永琳の瞳がこちらを向いた。


「永遠亭からの出場枠は一枠、・・・うどんげに出てもらうことにしました。
当然、私も出ません」

「どうせEDに出るんでしょ、永琳はっ!!」

「ぎくっ!!?」


・・・図星かよ。

額に汗のしずくを浮かべながら、あさっての方向に視線を走らせる永琳の顔をじろり、と睨み付ける。

花映塚に続いて、またそんな結末・・・っ!!


「・・・仕方ないじゃない。
輝夜人気ないし。
人気急上昇中の妹紅と慧音を差しおいて枠を取るだけでも精一杯だったのよ」

「ひどいっ!!
えーん、えーりんのばか―――っ!!」


私は永琳の非道すぎる発言に思わず涙を流しながら部屋を飛び出した。

涙だって零れちゃう、だって女の子だもんっ!

駆け出した私のすぐ目の前に湯のみを持ったイナバが居たので、取りあえず
湯飲みの中身をイナバ目掛けてぶっかけてウサギだけにウサ晴らしをしつつも永遠亭の敷地を駆け抜けていった。






「・・・そうね、だったら乱入してやればいいのよ。
あの門番のようにパッチ化して中途半端に弱体化されるよりよっぽどいいわ。
となれば、向かうは神社ね」


永遠亭を飛び出した私はふよふよと浮かびながら、今後のことを考えていた。

そのまま諦めて自室に篭ったきりでいるとまた、
『ニート姫、今回もひきこもり。なよ竹ならぬ、ひっきー竹のかぐや姫』
などとあやややや新聞の一面を飾ってしまうだろう。

くそう、私も『ぐやややや』などと言えば人気が出るのか?

そもそも前提からして違うし。

本当の私はアクティブで、アウトドア派なの。

ただ姫としての立場上外に出られないだけなのよ!

その辺り、勘違いしないでもらいたいものだ。

それを世間様にしらしめるためには、やはり本編に威風堂々と参戦しなければならないだろう。

で、出した結論は単純だ。



乱 入 上 等。



今から神社に乗り込んでやって有無を言わせず弾幕ごっこを仕掛けてやるのだ。

何度か宴会に参加したことがあったので、幸いにも神社の場所は覚えている。

私は足取りも軽く、無論空を飛んでいるのだから当然だが、神社への道のりを急ぐことにした。



「・・・これは予想外」


ほんの十分程度で神社に辿り着いた。

これは予想通り。

神社には巫女の姿は発見できなかった。

これも異変が起こっているのなら、まぁ予想通り。

だけど・・・神社が倒壊しているなどとは思いもしなかった。


「巫女―っ?
みっこみこ−っ?」


境内の真中からその辺りに向けて声を掛けてみる。


・・

・・・返事はない、ただの屍のようだ。


そんな定型句が頭に浮かぶと同時に、嫌な想像が頭の片隅をよぎる。


「もしかして、この下に生き埋めになってるんじゃあ・・・」


残念ながら、救助犬じゃないので地面の下に人が埋まっているかどうかなど私には分かりっこない。

それでもここまで見事に崩壊されてしまっていると疑わざるをえない。


・・・ごくり。


思わず息を呑む。

永琳が慧音に頼まれて寺子屋で臨時講師を勤めた際に講義していた、
『教えてえーりん!災害救助編』によると生き埋めの場合、72時間が勝負だそうだ。

この神社が何時倒壊したのかは分からないが、人外を除くとあの黒白ぐらいしか滅多に尋ねることのない場所だ。

最悪、もう72時間が経過している可能性だってある。


「・・・御玉串はいくら包めば良いかしら」


現実逃避的にそんなことを呟いてみるが、
私一人しかいないこの境内では誰も突っ込みを入れてはくれない。

ちなみに御玉串とは仏教で言うところの香典のこと・・・、くそ、一人でそんなことを言ってても寒いじゃない。

私はどうしようもないことを考えながらも、いつもの長袖を腕まくりして現場に近づいていく。


「取りあえず掘り起こさないと・・・」


珍しくも殊勝なことを考えた私の背中から、


「うわっ!!
何ですか、これっ!?
み、見事なまでにつぶれてます・・・」


呆然とした叫び声が聞こえてきた。

ぎょっとして私が振り向くと、そこには緑色の巫女服を着た少女が立っていた。

・・・さすが弾幕格闘ゲーね、巫女の2Pカラーかしら?



「分社が壊れたのを感じたので、様子を見に来たんですが・・・何ですかこれ。
何が起きたんですか?」


妖怪の山にある神社の巫女をしていると言う少女がぽつぽつと事情を話す。

以前にも会ったことがある気もするが、まぁそこはそれ。

・・・私が一度で人の名前なんて覚えるわけないじゃん!!


「私が知りたいわよ。
・・・えっと、なまえなまえ・・・?
まぁいいや、ルイージは原因に心当たりはないの?」

「ちょっ!?
えっ、ルイージって私のことですかっ!?」

「うん、そう。
緑だし」

「うわっ、さらりとひどいことを言われた!?」


頭を抱える巫女2号ことルイージの様子を見るに、どうやらコイツも事情は把握していないようだ。

まぁいい。


「そんなことよりも、この下に巫女が埋まっているかどうかって分かる?」

「そんなことって、私の名前は東風谷 早苗ですからねっ!
ちゃんと覚えてくださいよっ!!
・・・えっ、霊夢さんが・・・この下に?」


律儀に名乗るルイージだったが、すぐにぎょっとした顔をしてペシャンコになった神社を見つめた。

暢気なルイージを横目に私は苛立たしげに詰問する。


「そうよ、分からないなら掘り返してあげないと。
巫女だって人間なんだから、生き埋めになってたら早く助けてあげないと死んじゃうわよ」

「死・・・、は、はいっ!
すみませんが、私にはそういったことは分かりません。
ですから早く掘り返さないとっ!」


ようやく事態の緊急性を呑み込めたのか、慌てた様子でルイージが私に詰め寄ってくる。

だが、まだまだ年若い彼女には少々刺激が強すぎたようで、今度は冷静さを失いパニック一歩手前になってしまっていた。


「落ち着きなさい。
押しつぶされて下敷きになっていたらもうどう足掻いても助けられないし、
逆に上手く隙間に入り込んでいたとしても、下手に瓦礫をどかして崩れてしまったら一緒なのよ。
自分に出来ることを冷静に判断して、その中で何をするべきなのかを考えなさい」


私は永琳の言っていた災害救助の際の鉄則を思い出しながら、彼女を諭す。

正直なところ、個人的には巫女が死んでしまっても別に構いやしない。

とは言え、他でもない命のことだ。

助けられるのならば助けてやらない理由はない。


「あっ、はいっ!
・・・私は、風を起こせますので、それで瓦礫を少しずつ吹き飛ばすことは出来ると思います」

「そう、じゃあ私は結界を張って貴女がどかそうとした瓦礫以外が崩れないようにするわ」

「ありがとうございますっ、よろしくお願いしますっ!」


こちらに頭を大きく下げる彼女は真面目そのもので、そんな姿に感化されてしまったのか私も真剣な顔で頷いていた。

こうして、私とルイージの共同戦線による神社の瓦礫撤去作業が始まったのである。






「・・・飽きた」


私がぼそりと呟いたのは、作業開始から一時間も経った頃である。

この場に永琳やイナバが居たならば、きっと褒めてくれるだろうぐらいの集中力を発揮した私であるが、
そろそろその奇跡も限界に近い。

体力的にはつらいがまだまだ出来ないことは無い、が如何せんやる気がついてこない。

取りあえず、今張っている結界分が終わったら休憩をしよう。

休憩にはやっぱり甘いものが欲しいわね、何か用意できないかしら。

そんなことを私が考えているとルイージの作業が終わったらしい。

これで一通り屋根部分を撤去することが出来たので、作業的にも一度休憩に入るのは間違いではないと自己弁護。


「蓬莱山さんっ!
こちらの作業終了しましたっ!
次の場所に移りますので、結界の張りなおしをお願いします」

「分かったわ。
・・・くっ、ガッツが足りないっ」


ガッツが足りないのは本当なので、割と本気の声色が出た。

きょとんとした顔をしている彼女に、しれっとした口調で言葉を続ける。


「残念だけど、少し休憩しましょう。
何か甘いものある?」

「あ、はい。
おまんじゅうと水筒のお茶でよければですけど・・・って!
休憩している場合じゃないでしょうっ!!
こうしている間にも霊夢さんの体力が限界に近づいていっているかもしれないんですよっ!!!」

「慌てない慌てない。
こういう場面では思った以上に緊張で身体が張っているものよ。
ムリをして動いてもダメ、イザというところで失敗するわよ」

「・・・あ、は、はい」


何か心当たりがあったのか、比較的あっさりと彼女は私の意見に同意してくれた。

そわそわと落ち着かない様子で事故現場をちらちらと振り返りながらではあったが、私の方へと近づいてくる。

そんな彼女の唇からは、無意識にであろう、ほっとため息が漏れた。


・・・あの子の方が、限界に近かったのかもしれない。


私は口に出さないまでもそんなことを考えながら、この生真面目な少女を好ましく感じ始めていた。



「・・・むぅ、ぬるい」


彼女が敷いてくれたシートの上に座り、崩れた神社の真横で臨時のお茶会を開く。

そんな最中、水筒から汲んでもらったお茶をずずず、と啜って漏れた私の一言がそれである。


「あ、すいません。
もう夏ですし、ぬるめの方が良いかな、と思ってたので・・・」


私のために淹れてきてくれたものではないのだから、私の好みにあってなくて当然だ。

それなのに彼女は謝ってくれる。

反射的にではなくて、・・・心底配慮が足りないと思った故のようだった。

くそう、ウチのイナバは卑屈に謝るばかりで心配りなんてしてくれないのになぁと思わず比べてしまう。


「いいわよ、美味しいお茶だったから熱かったらもっと美味しいかな、と思っただけだし」

「ありがとうございます」

「そっちのおまんじゅうも貰っていい?」

「どうぞ」


にっこりと微笑んで差し出してくれたまんじゅうを受け取り、少量をちぎって口に運ぶ。

・・・む、これは。


「美味しい・・・」

「ありがとうございますっ、小豆は外に居た頃に手に入れた物でちょっと質の良い品なんですよ?」


こちらは自信があったらしい、饒舌で笑顔に満ちた彼女の姿はきらきらと輝いて見える。

私はそんな彼女の様子にぱちくりと目を瞬かせてみせて、それからふと自分の口の端が吊り上っているのを感じた。

ああ、くそ、悪い癖だ。



・・・そんなに綺麗だと、欲しくなってしまうではないか。



本当にひどい話だ。

目の前の少女に蓬莱の薬を飲ませて、
未来永劫私のことを考えさせるようにさせてみたい、
永遠に私とのダンスに興じさせることが出来ればなんとゾクゾクするだろう、
永久に私に焦がれる乙女、それは素晴らしくもなんと愛おしいんだろう・・・、
そんな考えがこびりつくように私の頭から離れない。

私はそんな自分の醜い願いを悟られたくなくて、咄嗟に彼女から視線を外し・・・それに気付いた。


「・・・ヘビとカエル?」

「あ、この髪飾りですかっ?
えへへ、私の仕える八坂様と洩矢様のシンボルです。
お二人ともとっても、良い神様なので蓬莱山さんも困ったことがあったら何でも神頼みして下さいね!」

「・・・そう」

「あ、あれ?
あの、私何か悪いこと・・・」

「何も言ってないわよ、さて、そろそろ続きやりましょ?」


私はそう言って、彼女から目を逸らしたまま立ち上がった。

なんとなく、彼女たちの絆を覗き見てしまったような気がした。

それを崩そうとした私は、ひどく汚いんじゃないかって思ってしまう。

平安の昔は、妹紅に同じようなことをけしかけてなんとも思わぬことだったと言うのに、である。

永遠を手に入れた身で、考えが変わるなんてことがあるのか。

全く、だからこそ生きているものとの関わりは、私にとっては瞬きの間に過ぎないこととは言え喜ばしいことなのだ。


・・・なんてね。


「さ、結界を張ったわ。
今度はこちら側の柱の撤去をお願いね」

「・・・は、はい?」


返事をし慌てて立ち上がる彼女を、少し離れた場所から、
私はただ眩しいものを見るかのように瞳を眩ませながら見つめていた。


それからの作業は順調に進んだ。

彼女の手並みはなかなかに見事なもので、
どかした瓦礫を作業の邪魔にならない位置まで上手く風を操って誘導していたし、
私もそこそこやる気を見せたので彼女が少しぐらい激しめの風を操ってもびくともしない結界を維持することが出来た。


・・・ただ、神社と言う奴はなかなかにしてパーツが多い。


私たちがようやく全ての瓦礫を撤去出来た頃には、もう太陽が西に沈もうとする時間になってしまっていた。

その静かで濃密な時間が、私と彼女との間に奇妙とも言える連帯感を生んでいたとしても不思議ではない。

・・・少なくても私は、彼女により強い親しみを覚えていたのは事実である。






「はぁー、はぁーっ」


最後の一つの瓦礫をどかして遂に神社の撤去作業を終えた緑の巫女が、息を大きく乱しながら立ち尽くしていた。

同じように疲労した表情を浮かべていた私を横目に彼女はそのまま、ばたんっ、と境内の脇に仰向けに倒れこむ。


「い、居ませんでしたね、霊夢さん・・・」

「・・・そうね、何処行ったのかしら」


アレだけの重労働をこなした上、空振りに終わるのでは圧し掛かってくる疲労感も数十倍に感じてしまう。

それと、作業が終わってしまったせいで、張りつめていた緊張の糸も途切れてしまったのだろう。

地面に伏せながら、ぜいぜいと呼吸を荒げている彼女は起き上がる気配も見せなかった。


「汚れるわよ?」

「あはは・・・、もう土ぼこりとかで汚れちゃってますし、こんなに奇跡を連発したのなんて初めてで・・・」

「・・・くすくす、汗もかいたし、確かに今さら気にしてもしょうがないわね」


私はそう言うや否や、彼女の隣にそっと寝転んだ。

なるほど、身体は休憩を欲していたようで、一度座り込むともう足が根を張ったように動かない。

むき出しの手足にぺたぺたと玉砂利がくっ付いてくるのが少し不快だが、
それを補ってあまりあるほどの疲れが溜まっていた。


「・・・こんな状態の神社放っておいて、霊夢は何処行ったのかしら」

「多分、神社倒壊の異変を解決しに行ったんじゃないですか?」

「それもそうね、ぐうたら巫女とは言え、自宅が潰されればそりゃ本気で動くか。
あーあ、無駄な作業だったわね」

「ええ、でも瓦礫撤去中に潰れている霊夢さんを発見してしまうよりは無事で居てくれる方がずっとマシです」

「それもそうね・・・くっくっ」

「ええ・・・ふふふっ」


私たちは隣り合って寝転んだまま笑った。

こういうの何て言うんだっけ・・・そうそう。


「青春ね!」

「へ?
あ、はい、本当に青春って感じですね、蓬莱山さん」

「・・・輝夜」

「はい?」

「輝夜で良いわよ、呼びにくいでしょ、蓬莱山なんて」

「・・・輝夜・・・さん」

「何、ルイージ?」

「そこでそのネタをまた引っ張るんですかっ!?」


ガ――ンと大仰にショックを受ける『早苗』を横目に見つめながら大きな声を上げて笑う。

彼女も、もう、と頬を膨らませながらも一緒に笑ってくれた。



「・・・で、アンタ等はヒトん家で何笑っているのよ」

「あら、風流を解せない発言ね。
時に貴族には必要なのよ、こうした大げさで華美のあるみやびな一幕がね。
・・・そうね、分かりやすくこう言ってあげる。
空気読め、霊夢」

「こっちは天界まで特攻仕掛けて疲れてるのよ、むしろこっちが空気読めと言いたいわ」


突如音も無く現れた、やる気の欠片も見せない表情で淡々と喋る霊夢の口調に思わず頬が引くついた。

全く、こっちの気もしらずにこのサボさんは・・・っ!

私が言い返してやろうと少しは回復した身体にムチ打って立ち上がると、
早苗が素早く私と霊夢の間に割り込んで調停に乗り出してきた。


「霊夢さん、そんな風に言わないで下さい。
輝夜さんは崩れた神社の下に霊夢さんが生き埋めになっていないか心配して、
私と一緒に今の今まで瓦礫を退かしてくれてたんですよ?」

「・・・へ?
早苗はともかく・・・この姫さんが・・・?」

「何よ・・・悪かったわね、似合わないことして」

「いあいあ、ごめん、ちょっと面食らっただけ。
・・・心配掛けて悪かったわ、それからありがと」

「むぅ・・・」


素直にペコリと頭を下げる霊夢に、こちらも気勢が削がれてしまう。

それ以上何も言うことが出来ず言葉を濁す私であったが、ふと気付く。

霊夢が帰ってきているってことは異変は解決済み?

・・・あーあ、残念。


「ちょっと霊夢、お取り込み中悪いけれどここまで無理やり連れてこられた私は、どうすれば良いのかしら」

「あんたは、さっさと神社を建て直す算段を考えなさい。
悠長にしている余裕はないのよ、私の住む所的に考えて」

「人使い荒いわねぇ」

「・・・あんたが壊したんじゃなかったら、いくらでも優しい態度とってあげるわよ。

とにかく負けたんだからちゃきちゃき直しなさい!」

「あー、はいはい」


霊夢の後ろに立っていた長髪の少女が傲岸そうな態度を隠そうともせずに、
両手をひらひらと振って霊夢の言葉を聞き流す。

どうやらあの少女は神社を修理しに来たらしいわね。

・・・ん、待てよ。

これはある意味チャンスかもしれない。

霊夢は異変を解決したばかりで疲れているし、霊夢と一緒に空から降りてきたらしい少女もきっとそうだろう。



・・・ぶっ潰すチャンス!!



「霊夢、それから魔理沙っ!!」

「魔理沙さんじゃないですよっ!?」


早苗が高速で突っ込みを入れてくる。

・・・段々、突っ込みのレベルが上がってきた気がするわね、侮れないわ。


「霊夢と一緒にいるし、魔理沙であってるでしょ?」

「どんな人物認識ですかっ!!」

「・・・はぁ」


私に突っ込みを入れる早苗はげんなりとした表情を浮かべ、霊夢も呆れたように私を見つめている。

・・・あれ、違ったかな?

まぁいいや。

気にしない!!


「ちょっと、天人であるこの私とあの黒白魔女が一緒くた?
喧嘩を売っているのかしら、そこの対人関係を築くのが苦手そうな女は」

「たいっ・・・!」


私の中の、『言ってはいけないことランキング』の上位を常にキープしている単語を吐きやがったその女をぎろり、
と睨み付ける。

ああ、ホントにコイツが魔理沙だろうと、ダレだろうともう関係ない。


「・・・そうね、関係ないわね。
今日の初心に戻って本編参加目指して乱入上等よっ!
霊夢と魔理沙(仮)、アンタらを叩きのめして次回作の自機になってやるわっ!!

「・・・はぁ?」

「・・・ええ、それなら話しは早いわね。
ぎったんぎったんにノシてからゆっくりと私の名前を教えてやるわ」


やる気無さそうに先ほどと同じ言葉しか洩らさない霊夢と、
対照的に犬歯をむき出して好戦的に笑う魔理沙(仮)を前に自分の入れ替わり大作戦を披露してやることにする。


「ふふ、私が巫女服を着てもぶっちゃけ、
『またちょっと変わったか?でもZ○Nだしこれぐらいの差はあったりするよな・・・』
ぐらいにしか思われないはずよ!
・・・イケる!!」

「そ、それ禁句!
言っちゃだめですよ、輝夜さんっ!」

「天人の私でもそんな恐れ多いこと言えないわよ・・・あれ、何者?」

「・・・ただのバカよ。
ま、私は神社を片付けてもらった恩もあるし、弾幕ごっこに付き合うぐらいはいいわよ。
負けてはあげないけど」


私の妙案に何故か大慌ての早苗と魔理沙(仮)、それから冷めた目でこちらを見つめてくる霊夢。

と言うか早苗、何驚いているのかしら。

貴女も出番が無くて鬱憤はたまっているでしょう?

きっちり巻き込んであげるわよ。


「さ、2対2よ。
貴女は魔理沙(仮)を倒して、魔理沙(仮)の代わりに自機になってみせなさい・・・早苗っ!」

「え?私の名前覚えて・・・ふふふっ、そうですね、
私は貴族じゃあないですけどこういう時どうすれば良いのかぐらいは理解しているつもりです。
秋のリベンジといかせてもらいますよ、魔理沙(仮)さんっ!」

「いや、だから魔理沙じゃあ・・・」


すっかりノリの良くなった早苗が、これでいいですかと満足気な笑みを私に向けて浮かべた。

そして、なおも否定を続ける女々しい魔理沙(仮)を無視して、私は高らかに宣言する。

さぁ、この際自機云々は置いておいて、誰もが驚くぐらいにこの後夜祭を盛り上げてみましょうかっ!


「せっと、すぺるかーどっ!!」
(了)