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とある魔術の禁書目録 SS
『とある幻想の白黒色彩(モノクローム) 第7話 共感不和(ブリジ・プリンセス)A』


「ぐんにゃりですわー」
「このお菓子も貰って良いか?」
「うう・・・乗っ取られた気分です」

誰も使っていない机を占領するかのごとくグデグデと両腕を投げ出して突っ伏した黒子と、備え付けの茶菓子をお土産袋とやらにどんどんと詰め込む上条へと向けて切なげな視線を向けながら、初春はそっとため息を零した。
黒子は人の目があれば凛とした態度で支部に詰めているけれども、初春と2人きりの時は年頃の女子中学生然とした軽いノリで居ることも多い。
先ほど結構な事件に取り組んだこともあり黒子がだらけてしまいたい気分も分からないでもない初春は、自分が懸命に学園都市の情報を精査している状況であるため、多少なりとも憤りを感じないでもなかった。
それでも実際に現場に赴いてからがメインの前衛と後衛とでは気合をいれる箇所が違うことくらいは理解している。
理不尽なものを感じつつも、やはり、文句を言うのも憚られてしまうのである。

「えぇと、上条さん。
お菓子、随分とたくさんお持ち帰りになるんですね?」
「ああ、ゴメンゴメン。
知り合いのシスターにあげようと思って。
取りすぎなら返すから言ってくれ」

矛先を変えて初対面とは言え、遠慮なくばかすかと風紀委員(ジャッジメント)たちが持ち込んだ備え付けのお菓子を持ち帰ろうとする上条へと似合わない嫌味を言ってみたりもした。
だが、素直に謝られてしまって、なおかつ『じゃあ返せ』とも言えないチキンな初春は、もう一度ため息を吐いてから続けた。

「いえ、構いませんよ。
お手伝いいただいているのですから、遠慮せずに持っていって下さい」
「そうか?
悪いな、そりゃ」
「・・・初春。
お兄様は空気読んでくれませんから、本気にしますわよ」

むく、と顔を上げて他人事のような口調でぼやいた黒子の声にぎょっとした顔を返すが、時は既に遅かった。
上条は心底嬉しそうな顔で小さな声で何事か呟きながら、さらに数個の菓子を袋に詰め込む。
耳を澄ましてみると、こんなことを言っていた。

「これだけあれば少しは約束破ったのも許してもらえるかなぁ・・・」

改めて初春が上条の顔を見てみると、結構切実な顔をしていたりする。
どうも、その知り合いのシスターとやらと何かしかの約束をしていたらしい彼は、お菓子を許してもらうための口実に使うつもりなのだろう。

・・・となれば自分ではないとは言え、風紀委員(ジャッジメント)の事情に巻き込んだ立場上、あげるのも致し方ないと初春は思ってしまう。

どちらにしろ、不特定多数の風紀委員(ジャッジメント)が持ち込んだお菓子であることだし、初春自身も持ち込んでいるとは言え、つぎ込んだ金額などどうせ数百円程度に過ぎないのだ。
ここは一つ寛大な心で、彼の無遠慮な振る舞いを許すことにしよう。

「・・・っと?」

そんなことに思考の大半を費やしながらも、ほぼ無意識のうちで続けることが出来ると自負しているタイピングの動きを、何かに気がついた初春はピタリと止めた。
学園都市全域で起こっているリアルタイム事件の収集中に、同じ場所で連続して発生しているトラブルが見つかったのである。
怪しい場所が見つかれば、後はちょちょいの、ちょい、というわけだ。
初春は舌で唇を湿らせながら、幾つものウインドウを同時に操って事件の情報を緻密にまとめていく。
事件現場は、この一七七支部よりほど近い繁華街の一角。
京都のとある町をイメージにした区画で、実際にかの古都でも使用している昔の石や木材を用いてわざわざ雰囲気作りをしている場所だったはずだ。

「見つけました!
さすがに確実ではありませんが、場所はこの支部から歩いていくことが出来ます。
今なら何処よりも先行が可能です!」
「良くやりましたわ!」

初春の宣言に応えて、ガタン、と音を立てて椅子から立ち上がった黒子がそのままの勢いで彼女に近づく。
PCの画面を覗き込んでくる黒子のために、初春はダウンロードした地図を画面へと大きく表示させてから、首をひょい、と傾かせて画面が見やすいように配慮した。

「・・・ここは『宇治通り』ですわね。
で、現場はどんな状況なんですの?」
「簡単に言ってしまいますと、たくさん喧嘩が起こっているようです。
それも報告があっただけで、この10分の間に8件。
解決の報告はまだ来ていないようですし、どうにも嫌な予感がします」
「なるほど」

黒子が初春の肩越しにモニタを見つめながら状況を確認して呟く。
だが、ここで考えていても結論など出はしないことなど、初めから分かりきったことではある。
すぐに画面から視線を外した黒子が、ぐいっ、と背筋を伸ばしながらこちらの様子を窺っていた上条の方へと向き直る。

「さ、お兄様。
ここから先はわたくしたちの出番ですわ。
場所はこの学校から徒歩で10分ぐらいの、これ見よがしな都合の良い場所ですの。
さっさと行って、早々と片付けてしまうことにいたしましょう?」
「おう。
『宇治通り』って言うとアレだろ?
京都っぽい街並みを再現したとかいうデートスポットになっているところだったよな。
俺は行った記憶がないんで、案内は任せた」
「ええ、そうですわ。
戻り橋なんてものまでありますし別れ話の象徴のような場所なんですけどね。
色々間違っている気がしますけれど、学生にはあんまり関係ない話ですわ」

そう言って苦笑する黒子の言葉の意味を聞いて、上条の頭には電球が点いたようなイメージが浮かぶ。
戻り橋なんていう話は残念ながら特に歴史や御伽噺に興味のない彼には聞いたことがないモノであったが、つまり、『カップルを別れさせる異変』が起こっていると考えるのが自然なのだろう。
初春があっさりと見当をつけたのも分からないでもなかった。

「ああ、そうだな。
とにかく急ごうぜ。
こんな異変で別れ話なんてどうにかしてやりてーしな」
「・・・あら?
やる気ですわね?
てっきり、幸せそうなカップルなどこの機会に全て別れてしまえ、フハハハハー!
などと叫びだすと思いきや」
「白井の中で上条さんがどんな人物像なのか気になるんだけど!?」

掛け合いながらも、黒子は一般学生の避難用や暴徒鎮圧用の装備を簡単に修復しただけの穴の空いた鞄にいくつか突っ込んでいく。
その穴がどうして開いてしまったのか微妙に気になりながらも、初春が2人に座ったまま声を上げる。

「私はバックアップとしてここに残ります。
万が一、ただの喧嘩だった場合の次の手など、新しい情報を集めておきますので現場はよろしくおねがいします!」
「おう!」
「任せておきなさいですわ」

準備を終えた2人が風紀委員(ジャッジメント)支部を飛び出していくのを確認して、初春は再度画面へと向き直って再び学園都市内で起こっている事件の収集を始めたのであった。





風紀委員(ジャッジメント)ですわ!
今すぐこの乱稚気な騒ぎをお止めなさいっ!!
・・・って誰も聞いてなさそうですわね」
「そうだな。
しかし、思っていたよりもひどいな、こりゃ」

現場の中心地と思われる宇治通りの戻り橋までやってきた上条と黒子の感想は正に修羅場、の一言に集約された。
右を見ても、左を見ても、喧嘩、喧嘩、喧嘩である。
強い感情の篭った声は言霊となって他者に影響を与える。
そのせいかどうかは分からないが、こうも諍いの声ばかりを聞いていると思わず頭を抱えてしまいたくなってしまう。
こればかりは上条の右手でも防ぐことなど当然出来るはずもなかった。

「とにかく、犯人とかが居るのか探さないといけねーな」

上条は萎えそうなやる気をなんとか奮い立たせてから、ぐるり、と周囲の様子を改めて見渡す。
キーキーと甲高い声で喚き、浮気モノと彼氏と思われる男性に詰め寄る女子高生。
地面をスニーカーでダンダンと踏みならしながら、他の男に色目を使ったな、と彼女らしき女性へと叫ぶ男子高校生。
女の子の2人連れがいたと思うと、彼女たちはアンタの方が胸が大きい、お前の方が痩せている、といがみ合っている。
数人の男たちの集団が、喧嘩して罵りあうカップルへとさらに因縁をつけてまわっている。

・・・よく見たらその男たちの腕に風紀委員(ジャッジメント)の腕章がついている気もするが、それは見なかったことにした方が良いのだろうか。

何しろ、この場にいる数十人の人間たちが、全員暴徒と化しているのである。
それは取り締まりの側であるはずの風紀委員(ジャッジメント)も例外ではないとなれば、もう事態を落ち着かせることなどできるわけがない。

「っていうかちょっと待て。
例外なく、だと?」

上条の額から、さぁっと血の気が引いた。
さっきも似たようなことがあったし、まさか二回も同じことにはならないですよね?
そんな祈りを込めた台詞をもごもごと呑み込みながら、上条は横に立つ黒子へと視線を向ける。

「ふしゅるるるる・・・」
「はい、儚い希望は潰えました。
まあこんなもんだと分かってました、分かってましたよ、上条さんは!!」

案の定と言うか、予想通りと言うか、とにかく死神のときと同様に黒子もあっさりと敵の能力の影響下に墜ちてしまったようである。
目を血走らせて、謎のモンスターのような吐息を零しながら上条を睨みつける黒子の姿は最早花も恥らう女子中学生どころか、女を捨てたバーゲンのおばちゃんも裸足で逃げ出すレベルである。
この姿を写真に撮って、UMAを特集している雑誌に送ればまず間違いなく掲載されることは確実だ。
そのぐらい人間離れしてる。

「ちょ、ちょっとお待ちなさい、白井さんっ!?
そんな簡単に敵の術中にはまるような子じゃないはずでしょ!
ほら、頑張れ、頑張って正気を取り戻せっ!!」
「ぐげげげげ」

最早人間ではないと断言できそうな奇声を上げる黒子を前に、上条が後ずさる。
だが、先ほどのように上条の右手で触れてやれば回復するのではと思うと、さすがに黒子を置いて逃げ出すのも体裁が悪い。

「ああ、神様!?
インデックスの普段の祈りを全部この瞬間の奇跡のためにお使いくださいーっ!?」
「・・・い?」

逃げ腰になりながらも必死に何故か神へと祈りを捧げてみたエセ信奉論者の上条の言葉が通じたのか、言葉など通じそうもない未開の地の住人のような黒子の口から、人の言葉が漏れる。
おお、まさか、本当に!?
上条が人類の奇跡を目の当たりにして、神様の存在を信じてしまいそうになりながらも、油断はせずにもう一度声をかけてみる。

「し、白井さん?
そこはかとなくホラー映画の犠牲者になりそうな予感を感じながらも上条さんは声をかけますよ?
大丈夫だよね?」
「この類人猿がーーっ!?
お姉様のため、今こそ貴様をこの場でぶち殺すっ!!
とは言っても、本気ではありませんのよ?
安心してほしいですの。
ちょっとちんこ切り落とすだけですわ」

やっぱり神なんて居ないんだ、と科学信奉者としての原点に帰ってきた上条の全身がガクガクと震える。
女子中学生からそんな発言を聞いてしまったら、普通であれば照れてしまいそうな上条ではあるが、このときばかりは違う。
上条の息子は、黒子の声色に思わず縮み上がった。

去勢される!?

何処までも本気くさい黒子の宣言に、さすがの上条と言えども挫けそうになる。
何しろモノがモノだ。
万が一使い物にならなくされたら、悔やんでも悔やみきれるものではない。

「お姉様を惑わすものは死ねぇっ!!」

あくまでも本気なのか、スカートに隠された太もものベルトから仕込み針を抜き放った黒子が上条の懐へと踏み込む。

「・・・ざけんなっ!?」

かつてない身の危険、というか雄としての危機に野生の感でも働いたのだろう。
普段の上条であれば反応さえ出来ないはずの速度ではあったが、一直線に凶器を突き刺してきた黒子の腕を彼は何とかしっかりと自分の右手で掴み取ることに成功した。

「・・・あら?
わたくし、どうしたのでしょう?」

その途端、きょとん、とした目つきで黒子が呟く。
その声は上条に手を掴まれている現状が理解出来ないとばかりにハテナマークに満ち溢れていた。
ほっと胸をなで下ろした上条が黒子から手を放し、悪ぃ、などと声をかけようとする。

「やっぱり許せないですのっ!
死ねぇっ!!」
「うををををっ!
アブネぇ!?」

再び間一髪、超感覚に目覚めたかのような動きで上条が黒子の片腕を自分の右手でがっしりと掴む。
すると、黒子の狂気に犯されているかのように釣りあがっていた眦が、瞬時に元の意志のこもった理知的な眼差しへと戻っていく。

「こ・・・コイツぁ、どうなってんだよ。
おい、白井、大丈夫か?」
「うーん?」

黒子はやはり自分でも良く分からないといった疑問符だらけの表情で上条を見つめたかと思うと、上条の右手でしっかりと握られた自分の腕に視線を落とした。
そして、ぶんぶんと勢いよく腕を振る。
咄嗟のことに対応できなかったのか、上条の手がすっぽぬけると同時に、ぞわぞわとした、彼に対する心のざわめきが黒子の心の中に強く湧き上がる。

「っ!?」
「おいっ、何考えてんだ!」

さすがに今度はすぐに上条が黒子の手を握りなおす。
同時に、台風のときの海辺のように真っ黒にざわめいていた感情の波がぴたり、と収まる。

「・・・心理掌握(メンタルアウト)?」
「なんだそりゃ?
名前から言って、えらく仰々しいな」
超能力者(レベル5)の第5位の能力ですわ。
ソレと同じものかどうかは分かりませんが、この場にいると心が一つの感情に支配されるのは間違いありませんわね・・・」

ぶるり、と上条の身体が震えた。
黒子の言葉が正しければ、それはつまり・・・。

「・・・超能力者クラスの相手ってことか?」
「どうでしょう?
わたくしも話に聞いた程度ですけれど、心理掌握(メンタルアウト)は『操られていることに気付かれずに人を自由自在に操ることすら可能』だという話ですわ。
今のわたくしの状態から言って、そこまでの能力ではないようですわね。
あくまでもわたくしの心の一部分を増幅しているといった・・・」

ちらり、と黒子が上条へと視線を向ける。
確かに黒子は上条に対して、彼女がお姉様と慕う御坂美琴を巡る敵愾心のようなものを持ち合わせているのは確かなのだ。
そんな感情に付け込まれた、というのが正解な気がした。
そして、その感情の名前を一言で現すと。

「・・・嫉妬」

ピン、と来た単語を黒子が呟くと、上条がなるほど、といった顔で改めて周囲を見回した。
確かに意識して彼らの喧嘩の中身を聞いてみると、カップルは互いの愛情を疑い、同性の一行は羨ましいやら嫉ましいだのといったことでの言い合いに統一されている。

「間違いないな。
・・・しかし、こりゃひどい有様だよ」
「いえ、まだ手が出ていませんので、最悪の状況ではありませんわ。
怪我人が出てしまったりなどして、騒ぎがさらに広まってはそれこそ大変なことになりますの」

黒子が緊張感の篭った声で返事をするのを聞きながら、その通りかもしれない、と上条は思う。
この能力の制限人数によっては、上条以外は誰もこの区画では動けないかもしれないのだ。
先ほどの黒子のように錯乱した人間に凶器で襲い掛かられてしまったとしても、まともに救急車も呼ぶことが出来ない。
どうにかして、今のうちに事態を収拾する必要があるだろう。

「あの、お兄様、ちょっと力が入りすぎですわ」
「・・・っと、悪い」

知らないうちに力が入っていたのだろう。
いつの間にか、ぎゅっ、と手の平が白むほどに握り締めていた黒子の手を、今度は意識して痛くしないように握りなおす。

「これなら大丈夫か?」
「ええ、とは言え身長差がありますから少しムリな体勢になるのは仕方ないですわね」
「だったらもっと近寄れよ、ほら?」

人一人分ほど距離が離れているせいではないかと考えた上条は、声をかけると同時にぐいっと、完全に隣り合うぐらいの距離まで黒子を引き寄せる。
それでも身長差があるからか、どうもピッタリとこない様子なのだが、それはもうどうしようもないのだろうか。
ふむ、と上条は頭を捻りながら打開策を考えてみる。

「どうもダメだな・・・。
こうすりゃいいか?」
「へ?
・・・あひゃあ!」

ぐい、とさらに黒子を引っ張って、上条は自分の右腕を彼女の左手と組むように絡ませる。
ピタリ、と寄り添うほどに傍に立つことになった黒子が、変な声を出した上にそのまま二の句を続けることが出来ずにパクパクと口を開閉することを繰り返しているのを気にした素振りも見せずに、上条は真剣な口調で先ほどまでの続きを喋り始めた。

「白井、とにかく元凶を探す・・・」
「またカミやんが違う女の子連れてると思うたら、今度は年下のツインテール中学生なんてこの世には神も希望もあらへんっ!!」
「うにゃーっ!
ロリな魅力に目をつけたのは良い着眼点と褒めてやっても良いが、ソレとコレとは話は別だぜーいっ!!」

そこに、二つの叫び声が背後から割り込んできた。
どうみてもネイティブとは思えない、発音やら音の強弱などは全く気にした様子も見せずに語尾だけそれっぽくしただけのエセ関西弁。
ロリがどうこうと昼日中の街中で恥ずかしげもなく叫ぶ、語尾ににゃーなどと付けているわりに可愛らしくもなんともない男らしいダミ声。

「そ、その声はっ!?」

上条が振り返ると、想像通りの奴らが数十メートル向こうに立っていた。
一人は身長180センチオーバー。
怪しげな色としか形容できそうにない青髪にピアスをつけた糸目っぽい上条と同じ年頃の青年。
一人は身長180センチオーバー。
怪しげな金髪に薄い青のサングラスをかけ、さらに金色のアクセサリをじゃらじゃらと鳴らす青年。
言うまでもなく上条のクラスメイト、青髪ピアスと土御門元春である。
2人とも問答無用で異変の影響下に入っているようで、普段よりもかなり本気な、ギラギラとした血走った目つきで上条へと向かってダッシュで近づきながら尚も叫び声を上げる。

「何腕を組んだりして独り身の僕らに見せ付けてくれてんのやーっ!
しかも常盤台のお嬢様なんてカミやんの旗は一体どこまで制覇するつもりなんやっ!?」
「またフラグ立てたのかにゃー!
夏休みでも気にせず次から次へとフラグを立てる、山があるからのぼるんだ的登山家のような姿勢は万死に値するですたい!」

何処に注目されているかに気付いた上条が咄嗟に組んだ腕を離そうとするも、ここでそんな事をしては今度は黒子も2人とともに上条へと襲い掛かってくるのだろう。
つまりは近づいてくる二人の嫉妬マンたちを、上条はただ黒子の手を握ったまま迎え入れるしかなかったのである。

「別に白井とはなんでも無い、って言ってもあの状態じゃあどうせ通じないんだろうぜ。
・・・不幸だ」

上条の声に何故かは自分でも良く分からぬままムカムカと頬を引きつらせていた黒子の姿には、彼は当然のように気付くことなどなかった。

(続く)