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とある魔術の禁書目録 SS
『とある幻想の白黒色彩(モノクローム) 第4話 此岸彼岸(ステュクス・アケロン)A』


それは、滑稽なまでに現実味のない風景だった。
SFチックな未来的な都市という背景に、登場人物として現れたのが古風な出で立ちであったかのような違和感。
上条と黒子は、そんな出来事に直面していた。

「・・・随分と個性的な格好ですわね」
「そうかい?
あたいらの仕事着みたいなもんだが、確かに今の時代にはそぐわない。
ま、だからといって変えるつもりもないが」

そう言ってケラケラと笑う上条よりも幾分か年上に見える赤毛の女は、自分の着ている藍色で染め上げられた簡素な着物風ワンピースのスカート端をつまみ上げた。
古めかしく思える衣装の割にあまり汚れた様子も見えなければ、逆にほつれたところもない。
かといってコスプレ衣装のように見栄えだけの衣服ではないようで、彼女と服の間には普段から散々着こなして来たような統一感があった。

「いや、そこじゃないだろ。
どう見ても下駄と鎌だよ、問題は」
「ええ、どう見てもそっちですわ」
「・・・ありゃりゃ」

もちろん、そんな衣服の趣味なんて些細なことで、本当の違和感はもっと分かりやすいところにある。
上条たちの疑惑の視点が後ろ手に持つ人の背丈ほどもありそうなほどの巨大な鎌と高さが10センチはありそうな高下駄に集中していることに気付いた女は、今度は心情は分からなくはないといったところなのか苦笑を浮かべながら、一度、カランコロン、と地面を踏み鳴らして郷愁を誘う音を響かせた。

「しかし、随分と冷静だね。
自分で言うのもなんだが、あたいみたいな怪しいのと遭遇したら普通はもっとパニックじゃないか?」
「学園都市の不良さんはなかなか個性的な方が多いですから。
もちろん、その中でもかなりのレベルにいることは間違いありませんですわ」
「アイアンメイデンな銀髪シスターとか黒髪ロングの日本人形な巫女さんとか、そんなんに立て続けに遭遇したせいで耐性がついたんだろうな、多分」

先ほどのジリジリとした緊張感を忘れてしまったかのように暢気な感想を好き勝手に言う上条たちを前に、呆れたような顔をした女は一つため息をついてみせた。
それから場の空気を正そうとでも言うのか、巨大な鎌をぐるり、と小器用に一回転させてから威圧感を篭めた声で続ける。

「コイツはあたいの仕事の相棒さ。
コレを持っていれば、相手にも割と何が起こったのか理解が早くてね。
面倒がなくてよいのさ」
「仕事?」
「・・・マジかよ」

超能力なんて知らない人にとってみれば超能力もオカルトの領域とは言え、学園都市で学んでいる普通の学生たちにとっては超能力は科学的な方法で学べることは周知の事実であり、つまりは皆一様に科学シンパである。
黒子もその例に漏れないようで、この時代錯誤甚だしい格好をしている女の様子を見ても、ただのイカれたねーちゃんだという感想しか抱かないようであるが、上条は違った。
搾り出すような声で信じられないとでも言いたげに呟きながら、頬に流れた一筋の汗に気色悪さを覚えてしまう。

・・・超能力に魔術は認める、だからと言っておい、まさか、そんな馬鹿な。

女は思い通りのリアクションをしてくれたらしい上条の様子に満足したのか、20歳そこそこの風貌からは考えられないような圧迫感を滲ませながら自己紹介を始めた。

「初めましてニンゲン。
あたいは死神ってヤツさ。
此岸と彼岸を渡す船の番人。
閻魔の使い。
魂をかりとるもの。
寿命の担い手」
「その、死神さんがこんな所に一体何の御用ですの」

絶句する上条の様子をいぶかしみながらも、現実主義の黒子がすかさず質問を発した。
女の自己紹介の言葉を当然のように信じてはいなかった彼女であっても、人間離れした死神のプレッシャーに思わず声が震える。
心の中で自己を叱咤しながら、じっ、と死神の真っ赤な、煌々とした双眸を見つめる。

「そう怖い顔しなさんな。
何、『開いて』いたからちょっと様子を見にね。
ついでに折角だからこみ始める前に送り迎えのサービスと・・・それから忠告かな」
「・・・?」
「この都市は、少し人を殺しすぎる」

そう、死神が声を大気を震わした瞬間、上条の身体が思わず動いた。
隣に立つ状況を良く理解していない少女をぐい、と押しのけて、目の前のソレから黒子を庇うように自分の異能に対して必殺と言える右手をかざす。
それでも死神は上条の態度に怯んだ様子も見せずに肩をすくめていた。

「そう脅えなさんな。
あたいだってあんたが何か企んでいるなんて思ってやいないさ。
割りを喰うのはいつだって力のない子供たちなんだ。
無慈悲なことにね」
「・・・っ」

独白するように呟く死神の声はどこか優しげな響きがあった。
上条の脳裏に、不意に先日の三沢塾の一見が思い浮かぶ。
あそこには学生がたくさんいたのに、錬金術師も、魔術師も、まるでソレを気にした素振りも見せなかった。
・・・つまりは、そういうことなのだろう。

「それでも、あんた達にだって出来ることがある。
例えば、今からだって死に逝く定めにある一万人もの命を救うことだって出来る。
どんな生まれだろうと、あたいらは区別しない。
ただ、死を知ったものを運び、連れて行くだけさ」
「何をおっしゃっているのかは分かりませんがっ!!」

死神の声に被さるように、上条の後ろから声が響く。
同時に、だんっ、という力強い踏み込み音が聞こえたと感じるよりもわずかに早く、上条の真横を潜り抜けるように小さな影が駆け抜けた。
誰かなんて、言うまでもなく、茶色い二本の尻尾の残像を残して死神の足元まで踏み込んだ少女が、体躯に似合わぬ力強さでもってスカートを思いっきり翻しながら下段蹴りを放つ。
ある程度喧嘩慣れした上条でも反応できそうもない速度で、まるで死神のお題目を奪うかのように足元を刈ろうとしたその一撃は、しかし、驚いた表情を浮かべながらも死神はなんとかと言った様子でかわす。

「学園の風紀を乱すのであれば、拘束した後風紀委員(ジャッジメント)の詰め所でみっちりと聞いてさしあげますわ」
「な、なかなかやるねぇ、お嬢ちゃん。
いや、これは驚いた」
「あら?
まだまだ、驚きになるには早いのではございませんかっ!」
「お、おいっ!
白井っ!?」

目の前の存在がただ妄想を言っているだけではない、と何と無くだが感じている上条が制止の声を上げるが、何も知らない黒子がそれで止まるわけもない。
空間移動(テレポート)を使わずともさすがは風紀委員(ジャッジメント)だと思われるような、上条のような実地で慣れただけの闇雲さではない、訓練された人間の無駄の少ない体捌きで二度、三度と続けて足技を振るう。
リーチの差もここまであると逆にやりづらいのか、懐に潜り込もうとする黒子から必死に逃げ回る死神が、いい加減に痺れを切らしたとばかりに、初めて手に持つ鎌を振り回す。
だが、普通に考えればそんな大降りの攻撃が・・・

「ちぃっ!?」

そう思った上条の思惑とは裏腹に、黒子は思い切り地面を蹴り上げて後ろにバックジャンプしながら、手に持つ鞄を自分の身を守るように前に掲げる。
ほぼ同時に、ばすっばすっ、と鈍い衝撃音が響いた。

「飛び道具ですか。
なるほど・・・その大げさな武装は飾りというわけですわね?」
「飾りじゃなくて、身分証明みたいなもんさ。
投げたのだって武器じゃなくて、ただの銭だよ。
宵越しの銭ってヤツさ」
「何を仰いますか、爆発する硬貨なんて聞いたこともありませんわ」

そう言う黒子が無造作に持ち上げてみせた彼女の鞄には小さな穴がぽっかりといくつか開いていた。
幸い貫通タイプの攻撃ではなかった上にちょうど穴の空いた部分を抜けてきた硬貨もなかったためか、黒子自身には傷一つなかったようだが、それでもここから先の打開策がない以上彼女が不利なことは変わらない。
空間移動(テレポート)を封じられているのに加えて、武装でも体格でも劣る黒子が出来ることなど限られてくる。

・・・無茶を承知で能力を使ってみましょうか

自身の不利を覆す手っ取り早い方法を心中で呟きつつも、黒子はまだそこまで追い詰められているわけではない、と頭を振ってその考えを保留する。
どうやら空間を何らかの方法で制御することが出来る能力者のようだが、何しろまだ相手の能力も良く分かっていないのだ。
いきなり勝負に出てしまうのは、愚の骨頂と言えるだろう。

「あんた達と遊んでいるのも楽しそうだけどね。
あんまり時間もないんだ。
ここいらでお暇させてもらうよ」
「おい、白井!
気をつけろ!
何か仕掛けてくるぞ!!」

自分から不用意に動くことが出来なくなってしまった上条たちへと向けて、死神は声を上げて笑った。
まるで友人たちがバイバイと手を振るぐらいの気楽さで、無造作に肩に担いでいる鎌を持っていない方の手を上条たちに向けて掲げる。

「最後に教えてやろう。
あたいの能力は、物理敵にも精神的にも等しく作用する、距離という概念を操ることさ。
本来はこういう使い方をするもんじゃないんだけどねぇ。
あたいが逃げる時間を稼ぐぐらいはしてくれるだろう?」

そんな聞く人間を不安にさせるような死神の宣言が耳に入った瞬間、上条は咄嗟に感じてしまった嫌な予感に流されるままに右手を持ち上げる。
右手の先から、ばきぃ、と上条の幻想殺し(イマジンブレイカー)と死神の発動した能力がぶつかって砕ける音が響いた。

「やっぱ何かの異能かよっ!
白井っ!?
大丈夫か!!」
「おや、何でかな?
兄さんには効かなかったみたいだね。
まぁいい、しばらく経ったらあたいの能力も切れるから、どうせなら楽しんでおくれ」

少しだけ自分の異能が通じなかった上条に対して驚いてはいるようであったが、元々絶対の自信があったわけでもないのだろう。
先ほどまでの威圧感の『い』の字もないぐらい気の抜けた様子で言い放った死神がすたすたと歩いていくのをそのまま見逃がすのも問題だが、だからと言って謎の異能を防御もなく受けてしまった黒子をそのままにして置いておくわけにもいかない。
手をひらひらと振りながら悠々と去っていく死神の背中を一瞥した後、上条は胸元を抑えて下を向き全く動く様子を見せない黒子のそばへと慌てて走りよった。

「白井、おい、返事しろ!」
「・・・」

あの死神の言い方だと、恐らく足止め程度のことしか期待していなかったはずだ。
だが、今の黒子の様子は、まるでもっと重大な何かが起こってしまったかと思わせるのに十分だった。
上条は未だに全然返事をする様子のない、ぶるぶると小刻みに震えながら何かを耐えるかのように下を向く黒子の肩を左手で掴んで再び声をかける。

「白井、大丈夫か!?」
「・・・も」

ようやく微かに囁くような声が黒子から漏れる。
反応を返してくれたことに上条がほっと息をなで下ろしたのもつかの間、同時に顔を上げた彼女の表情を見た彼は思わず黒子の肩から手を離し、ずずず、と後ずさった。
黒子の頬はまるで林檎のような紅色に染まり、瞳は闇夜の猫のようにギラギラとした光を放ち、唇はまるでホラー映画の吸血鬼のように半開きで犬歯をむき出していた。
ついでに言うと、息がやけに荒い。
疲れて汗でもかけば呼吸は荒くなるものだが、・・・何か興奮した犬のような乱れ方である。

「な、なんなんですか、コイツは・・・。
上条さんは嫌な予感しかしないんですが」
「もっともっともっともっと・・・」

ブツブツと呟く黒子を前に思わずさらに、ずずずずずず、と後ずさっていく上条。
頭では右手で触れて死神の異能を解除してやれば良いと分かってはいるものの、今の黒子に進んで近寄ったり、ましては触ったりすることなどさすがの上条といえども躊躇われてしまったのだ。

・・・何だか身の危険を感じる。

先ほどの死神との対峙よりも更に緊張した様子で上条が、ジリジリ、と間合いを測っていると、黒子の様子が一変する。

「・・・う、ううううううっ!」
「おい、白井、何処か痛むのか!?
待ってろ、今コイツで・・・」
「が、我慢できませんわっ!!」

突如苦しみだした黒子を前に、躊躇っている場合ではないかと上条が突き出した右手をかいくぐり、彼女は彼の腰の辺りに思いっきり突進した。
そりゃあ見事なまでのタックルだったせいか、喰らった上条が地面の上へと、べちゃり、と情けなく崩れ落ちる。

「げふっ!?」
「ああ、何でか分かりませんけど、お兄様と1センチたりとも離れたくないですわーっ!」
「いたたたたたっ!?」

マウントポジションを確保した黒子によって、ぎゅうぎゅうと力の限りに締付けられた上条が思わず悲鳴をあげる。
上条も健全な男である。
可愛い女の子に抱きしめられることに嬉しさを感じないでもないが、だが、これは話が別だ。

「ほ、捕食されるっ!?」
「イヤですわお兄様。
わたくしどうしてだか分かりませんが、お兄様とぴったりとくっ付いていないといけませんの。
そんな捕食だなんて・・・じゅるり」
「ひぃーやぁーーーっ!?
不幸だーーーー!」

地面に仰向けに倒れた上、どういう原理か分からないが体重でも力でも黒子よりも圧倒的に勝っているはずの上条の上半身はびくとも動かない。
頼みの右手も黒子の片足と地面で挟みつけられてしっかりと押さえつけられているし、左手は辛うじて動かすことが出来るものの、残念ながら左手一本でこの窮地から逃れる術など上条にはなかった。

「何だ、なんです、なんですかーっ!?」
「う、うひひひひひひ」
「怖いよっ!?」

どうやら死神は上条と黒子との間の心の距離を縮めることで、足止めを計ろうとしたのだろうが・・・いや、いくらなんでもコレは縮まりすぎだ!?
上条はほとんど動かない右手を何とか動かそうと、ぐいぐい、と前後左右に揺すってみるがびくともしない。

「怖いことありませんわ、お兄様。
ただこうしてぴったりとくっ付いていたいだけですから・・・それにしてももぞもぞと太もも辺りが刺激されて・・・はぁはぁ」
「はぁはぁすんな!?」
「・・・かゆ・・・うま・・・」

どうやら決死の抵抗が余計な興奮を煽ってしまった上に、ついに黒子の人格がGウィルス感染レベルまで崩壊したらしい。
上条はここで逆レイプされてサメザメと泣く自分を想像してリアルで泣きそうになったが、そんな未来は許されないとばかりに、最後の抵抗をジタバタと始めた。
黒子はそんな上条の様子をネズミを捕らえていたぶる猫のような目つきで嘗め回すようにじっとりと見つめた後、自分から何かを期待するかのように、くいくい、と腰を前後に動かす。

「た、足りない、まだ足りないですわ。
お兄様との距離が遠すぎますわ。
遠い。
もっと近くないと、近く・・・」
「ちょっと待ちなさい、白井さんっ!?
あなたは精神系の能力で錯乱しているだけですよ!?
ソレをこんな上条さんで一生を棒にふってはいけません!」

上条とて男である。
このシチュエーションに素直に喜んでノってやる案も脳裏には浮かんだ。
だが、相手が相手である。
お嬢さまである彼女の実家によっては、初めての男=結婚相手、という家系かもしれない。
というかそれ以前に正気に戻った後に黒子自ら殺される!という未来が何と無く分かるので、必死に抵抗するしかなかったのだ。

「・・・そう。
そうですわ、服。
服があるから遠いんですわ、脱ぐ。
脱がないと」

能力に毒されすぎたのか、興奮しすぎたのか、もう思考力を持っていないとしか思えない様子の黒子がフラフラとした動きにも関わらず勢いよくサマーセーターを脱ぎ捨てた。
そのままぷつ、ぷつ、ぷつ、とシャツのボタンを一つずつ外していく。
開いた胸元からちらちらと黒い影が見えるようになると、今度は彼女は腰を上げてスカートのファスナーを下ろす。
すとん、とそんな幻聴を響かせて布の塊が上条の身体の上に落ちると自然と彼の視線がその先に向いた。
むきだしになった両足の太ももに巻きつけられた黒いベルトに、さらにその奥にも黒い魅惑的な丘が・・・。

「・・・あ、右手動く」
「ぎゃーっ!?」

興奮のあまりか拘束を忘れてしまった黒子のドタマを、上条はようやく自由になった右手でギリギリとアイアンクローでしめつけた。

・・・多分触るだけでも何とかなるとは思ったが、まぁ、なんて言うか、保険?

上条は、自分の右手で隠された黒子の顔が
『痛い痛い痛い痛い』
と叫ぶのを聞きながら、何とかあらゆる意味での危機は乗り越えることが出来た、とほっと息をなで下ろした。
ただし、当然のように死神の姿は既に影も形も見当たらなかったのは言うまでもないが。




「・・・」
「あのー、白井さん?」

幻想殺し(イマジンブレイカー)のお陰で現実に帰ってきた黒子は見事なまでの体育座りで、ずどーん、と顔中に縦線を入れて凹んでいた。
ちなみにまだスカートは上条の傍に転がっており、シャツのボタンも当然のように止められていない。
つまりは暴行された女生徒と犯人っぽい構図で非常によろしくない。
その上、小柄で童顔な彼女とギャップが激しい真っ黒な上下のインナーが、気を抜くと視界を埋め尽くしている己の若さが上条は憎かった。

「・・・いっそ殺してほしいですの」
「ま、まぁ、ここは一つ犬に噛まれたと思って、忘れるのが一番だ!
ほら、スカート穿けって」
「・・・うううう」

黒子は己の今の頼りない姿を思い出したのか、上条が拾って差し出したスカートを泣きべそをかきながらも受け取ってくれた。
力の無い動きでノロノロと立ち上がり、もぞもぞとシャツのボタンを留めていく。
続いてスカートを穿こうとした彼女が太ももに巻きつけたベルトから、一本の金属矢を無造作に引っ張り出した。
それから何の躊躇もなく、矢を持つ右手を上条目掛けて振りかぶる。

「ってうをっ!?」
「こっち見んなですわ!」

空間移動(テレポート)ではなく、物理的に投擲された一撃を辛うじてかわしながら上条が慌てて黒子から視線を外す。
ドキドキと、興奮からではなく、危険から鼓動が高鳴ってきた上条の後ろから衣擦れの音が聞こえてきた。
ジジジジ・・・というファスナーを上げる音に、ゴソゴソと上着を着込む音。
なんて言うか、思春期真っ只中な上条さんとしては、視覚を封じられている環境が余計に興奮を誘ってしまいそうに思えてしまった。

「ウフ、ウフフフフフフ。
こうなりゃもう絶対に逃がしませんわ。
何処のどなたか知りませんが、地の果てまでも追いかけて捕まえてみせます。
ええ、風紀委員(ジャッジメント)の名にかけて!!」
「・・・頑張れよ」
「もちろん、お兄様も手伝って下さいね!
ただ見は許しませんわ〜!」

ようやく着替えが終わったらしい黒子を振り返って見た上条であったが、目が三角に吊りあがり今にも火でも吹きそうな形相の少女が視界に入り思わず嘆息してしまう。
それからやはり面倒ごとに巻き込まれてしまった不幸な自分を哀れんで、何時もの口癖を吐いてみた。

「・・・不幸だ」
「あら?
わたくしの恥ずかしい格好を見ておいて不幸ですか?」
「ノーコメントにしておいてくれ」


(続く)