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リトルバスターズ!SS 『ロリ争奪戦!其の衝動は悪くない、多分』



「そろそろ称号を返上しようと思う」

その始まりは昼休みの学食でのことだ。
恭介の発言はいつも唐突だが、
その日もやっぱり突然だった。

お昼ごはんのうどんをつるつるとすすりながら、
僕はその言葉の真意を考えてみた。
・・・何が言いたいのか、やっぱり分からない。


「何が?」
同じく頭に疑問符を浮かべている皆を代表して、
僕が恭介に疑問を投げかけた。

恭介は、よくぞ聞いてくれた、といったような満足気な表情を浮かべてみせた。
そんな恭介はやっぱりかっこいい。

「もう『ロリ容疑』は勘弁してください・・・」

がくり、と膝をついて僕らを仰ぎ見ながらそう答えた。
すごい真面目な貌だっ!
というかちょっと泣きそうだし、かっこ悪いよ!?


「うるさい、変態」

鈴の容赦のない突っ込みに、

「うおおおおおおおっ!!!」

と叫びながら地面をのたうち回る恭介にちょっと同情してしまう。


「ああ、恭介、落ち着いてっ!?」

僕がわたわたと奇行を止めようとやっきになっていると、
その横から恭介に向けて誰かの腕が伸ばされる。

謙吾?

謙吾は、恭介の回転を片手でいともたやすく止めてみせた。
ああ、謙吾なら恭介を救えるよ!!
僕はそんな期待を込めて謙吾の顔を見つめた。
彼は、任せろ、とでも言うかのように頷いてみせた。

やっぱり謙吾は頼りになる!


「認めてしまえば楽になる。

・・・敢えて言おう、俺は、巫女が好きだ」


斜め上だよっ!!!
ていうか、何カミングアウトしてるのさっ!?


「変態ばっかりだな」


鈴、僕もちょっとそう思っちゃったけど、
はっきり言うことが良い場合ばかりじゃないからねっ!?


「いや、別にオレはメイド好きとかではないぞ」

真人っ!
真人は馬鹿だけど、今は一番まともに見えるよ!!

ちょっとひどいことを考えながらも、
僕の親友の一人である彼に賛同しようと、

「いや、お前も変態だ」

って鈴っ!!

「ああっ、なんでだよっ!?」

「お前は存在がきしょいんじゃーーっ!!」

言葉と同時に
ばきっと、鈴のハイキックが真人のコメカミに突き刺さった。


「うおおおおおおおおおっ!!!」


痛みでごろごろと地面を転げ回る真人。

ああ、なんだかすごいことに。
というか、なんだかいつの間にか謙吾まで一緒に転がってるしっ!!
すごい笑顔だし・・・


「うおおおおおおおおおっ!!!」
「うおおおおおおおおおっ!!!」
「わははははははははっ!!!」

学食の床がすごいことに・・・。
色んな意味でやばすぎるよ。

「こいつらきしょいな」

うん、それについてはもう僕も同意するよ。



リトルバスターズ!SS
ロリ争奪戦!其の衝動は悪くない、多分



「ちょ、ちょっと皆!
そんなに騒いだりしたら周囲の視線が痛いからっ!?」

「もう遅いけどな」

鈴はあっさりとそう言い切って捨てる。
鈴も仲間だと思われているんだけど、全然気にしてないね!?

「そうだけど、ほら、今からでも止めれば少しは違うよ!
恭介、そんなに騒ぐことでもないよ、きっと!」

僕は鈴にそう言ってから、
転がっている恭介の両肩をなんとか掴み取った。
彼には似つかない、意気消沈した縋るような瞳を見つめながら、説得を試みる。

「俺の兄としての威厳はまだ守られているのか?」

「うん、恭介は威厳あるよ!」

とりあえず全肯定しておく。

「鈴はちょっとだけはにかみながら、お兄ちゃんって呼んでくれるか?」

ちょっと図々しい発言かもと思いながらも、
僕は後ろとっさに振り返ってアイコンタクト。
鈴も成長したし、空気読んでくれることを期待するよ!?


「呼ぶか、ぼけーっ!」


「うおおおおおおおおおっ!!!」

鈴の予想通りと言えばあまりにも予想通りな言葉に、
再び床をごろごろと這いずり回る恭介。

ああ、今度はひねりを加えてるっ!!
・・・ちょっと余裕あるのかなぁ。


恭介は『病的なシスコン』の称号を得た!


「ちょっと待てぇい!!」

あ、立ち上がった。

「100歩譲ってシスコンは許してやる!
だが、『病的』ってなんじゃいっ!!」


「ロリでシスコンか、犯罪者だな」

「全くもって擁護出来んな」

いつの間にか回復した真人と転がるのに飽きたらしい謙吾が、
ここぞとばかりに恭介を口撃する。

「そういえば、西園さんに『お兄さん』って呼ばせて喜んでたよね?」

ふと思い出したことが口からついて出た。
出した後 『あ、失敗した』と思ったがもう遅い。

「理樹、お前も裏切るのか・・・。
ていうかちょっと待てお前ら!
シスコンになったならロリは外れただろ!?
ちょっとステータス開いてみろ!」


『ロリで病的なシスコン』


「なんで合体してんだよっ!?」

恭介の突っ込みが神速で入る。
さすが恭介、突っ込みも完璧だ・・・。


「じゃあ、あたしはこまりちゃんに呼ばれているから」


実の兄の性癖大公開にさすがの鈴もまじ引きらしい。
そそくさと、いつもは言いもしない口上を述べてから踵を返した。


「お、おい、鈴!
逃げないでくれーっ!!」

「呼びかけんな、ド変態――っ!!」

恭介の悲痛な叫びにもきっつい返答を叩きつけ、
鈴は駆け足で学食を飛び出して行った。

僕らだけが残され、沈黙の帳が場を支配する。

恐る恐る恭介のダメージを確認しようと、
俯いた恭介の顔を覗き込んでみる。

「こ、こいつは・・・」

僕と一緒に覗き込んだ真人が驚愕の呻きをもらす。

「弁慶の立ち往生・・・だな」

シリアスな風に謙吾がその続きを解説しているけど、
それって弁慶に失礼だと思うな!

弁慶は妹に『変態』呼ばわりされて気絶したことなんて無いだろうし!!



「よし、バトルをしよう!」

意識を取り戻した恭介が、
またもや脈絡のないことを言い出した。

「へっ、わざと負けて称号を変えようなんて姑息な手段じゃないだろうな?」

にやり、と真人が笑いながら言い放つ。
きっと鈴がまだこの場にいたら、
「こいつ、鬼こわい」
と言い放ったことだろう。

「・・・確かにな。
まぁ、恭介がわざと負けるようなことがあれば、
『たった1人なのにロリロリハンターズ』という称号にしてやろう。
感謝するがいい」


「感謝せんわいっ!
大体、わざと負けるなんてせんでもルール変更でなんとでもなるわいっ!
ええい、わいわい言いすぎだっ!!」

「恭介のセルフ突っ込みだ・・・すごい・・・」

「ああ、なんて説得力だ、思わず涙腺が潤んじまったぜ」

僕と真人は恭介の美しい突っ込みの妙技にぐうの音も出すことが出来ない。


「よし、反論はないみたいだな。
それじゃあルール変更だ。
負けた奴は俺たちが今現在持ってる称号を全部引き受けるんだ。
具体的には、
真人の『評価:もっとがんばりましょう』
謙吾の『こまりちゃんに負けました。』
理樹の『真人係』
これら全てを負けた奴が引き受けるって寸法だ」

「ああ、いいぜ」

「って、真人即答!?」

「俺は最強だからな」

「コイツが最強かどうかはともかく、そういうことだ。
・・・負けなければいい」

「謙吾まで・・・、でもこれって僕が圧倒的に不利な気がするんだけど」

もっとがんばりましょう、とかこまりちゃんに負けましたなんて称号なのに、
2人とも自信たっぷりなのがすごいなぁ。


「そこは心配する必要ない。
公正な勝負にするからな。
体力勝負では真人が有利、
集中力では謙吾が有利、
機転を競う勝負では恐らく俺が有利だ。
・・・ふむ。
じゃあ、理樹が勝負を選択していいや」


「ええっ、僕がっ!?」


「ああ、それなら公平だし、納得できるだろ?」

「オレもいいぜ」

「不服はないな」

恭介の問いに真人と謙吾がそれぞれ首肯してみせる。


「それじゃあ・・・」

僕は少しだけ考えてから、恐らく公平に近いだろう勝負を持ち出した。

「残りのリトルバスターズの面々から持ち物を借りてくる借り物競争は?
例えば、小毬さんの星の髪飾りとかさ」

「ほぅ、それは面白そうだな」

にやり、と恭介の口元がゆがむ。
どうやらお気に召したらしい。


「だが、理樹の提案を100%呑んでしまっては理樹が有利かもしれんな。
1つだけプラスアルファさせてもらうぜ。
借りてくるものは俺たちが指定するんだ。
それぞれ1枚ずつ借りてくるものを書いて、
それをくじにして引くんだ。
で、引いたものを誰でもいいから借りてきた奴が勝ちだ。
・・・どうだ?」


僕らはこくり、と頷いてみせた。


「よし、それじゃあ皆書いたくじをこの箱の中に入れてくれ」

恭介の言葉に僕らは順番にくじを箱に突っ込んだ。
最後に恭介が自分のくじを箱に入れ、がらがらとかき回す。

十分に混ざったところで真人が歩みよる。

「引くぜ」

そう言ってくじを引く。
続けて僕と恭介も迷わずに引いて、中を開く。


「「「パンツ」」」


全くの同音同句だ。
真人も恭介も、もちろん僕も空を仰ぎ見て、
・・・むろん室内なのでフリ、なだけだが、
この後起こりそうな惨劇に胸を震わせた。


「ふはははははははっ!」


唯一引いていなかった謙吾が突然高笑いを始めた!

「愚かなりっ!
パンツと書いたのは恭介と真人、そしてこの俺だっ!
理樹はパンツなどと書いたりしないだろうから、勝つのも・・・この俺だっ!!」

そう言い放ち、残った1枚のくじを引き抜いて高々とささげ持つ。


「パンツ」


「うおおおおおおおおおっ!!」


さっきと似たような叫びだが、
今度は絶望感が漂いまくっている所が大きな違いだろう。

どうやら全員が全員ともくじを引いた相手が借りにくいものを選んだみたいだね・・・。
僕も含めて。


「いや、無断に結束力強いな、俺ら」

恭介が額に冷や汗を流しながらも呆然と呟いた。

・・・そうだね。
僕はそう心の中で同意してから、改めて恭介に向き直った。

「でも、恭介どうするの?
こんなの借りてこれっこないし、ノーゲーム?」

「馬鹿言え。
そんなわけあるか、俺はやるぜ」

「え・・・?」

僕は彼の方を振り向いた。

笑っていた。
まるで困難な道に挑むことが楽しくてしょうがないといった、
そんな少年漫画に出てくる主人公が浮かべそうな笑顔だ。

それは僕たちが愛してやまない彼の魅力だった。


「ああ、やりとげてみせるぜ。
それが俺のジャスティスさ!
1度決めたことは這ってでもやりとげてみせるさ」

彼はそう言い放った。
まるで、今晩のおかずを買いに行ってくる、というぐらいの気楽さで。
パンツを借りてくると断言した。
・・・ってそう言えば、パンツか。

「言ってることはかっこいいけど、パンツだよ?
本編とか色々台無しだよ?」

「だからこそだ。
他人がくだらない、って思うことこそ自分を貫いてやる価値があるんだ。
俺はそう信じてるぜ、
お前たちも・・・そう思うだろ?」

「へへっ、そうまで言われたら、やらないわけにはいかねーじゃねぇか」

「ああ、恭介にだけ貫かせるわけにはいかんな」

「うん・・・」

って頷いたっ!?
僕も含めてすごい勢いで恭介に流されたよっ!!


・・・でも、一度言ってしまったからには僕たちは譲れない。
ここにパンツ借り競争の開幕が決定した。
一歩間違えば犯罪者だ。

ごくり、とつばを飲む。

だけど、恭介のことだ。
きっと勝算があるんだろう。
つまりは、パンツを貸してくれそうな心当たりがあるっていうことか。


それは・・・、
鈴?
違う、絶対貸してくれない。
小毬さん?
のらりくらりと交わされそうな気がする。
来々谷さん?
・・・絶対無理。
西園さん?
すごい冷たい視線で見られそう。
葉留佳さん?
その次の瞬間には全校に知れ渡ってそうだ。

・・・ということは。
クドだ。
クドなら、頼み方次第では穏便に貸してくれるのではないだろうか。

少なくとも他のメンバーよりは致死性は低そうだし。

よしっ!
ターゲットは決まった!!


「よーしっ。
それじゃあターゲットは各々まとまったらしいな。
それじゃあいくぜっ!
ミッションスタート!!」


だだだっ、と勢いをつけて加速する真人と謙吾。
一歩遅れて僕。
それから掛け声をしてからスタートとなった恭介が続く。

学食のドアを開け放ち、さらに前進!
確かクドは・・・今日は教室にいるはず!

教室までの道のりが半分をきったところで気づいた。
ここまで来ても全員同じ方向??
・・・これは皆クド狙いだっ!!

当たり前だっ!
僕が気づくことに恭介や謙吾が気づかないはずがないっ!!

ということはこのままでは前方を走る真人と謙吾の一騎打ちで終わっちゃう!


僕がそんな危惧を抱いた瞬間、

「真人っ、謙吾がお前の筋肉は見せ掛けだけだ、って言ってたぜ!」

「ぬぁんだとっ!!」

「謙吾っ、真人がお前のホモ疑惑の犯人だぜ!」

「な、なんだってーーっ!」

恭介の言葉がそれぞれに降りかかった。
そしてそのまま二人の身体が廊下の中央に集まって・・・

ドーンっ!!!!

と不条理な音を立ててぶつかり合う!


今だっ!!


恭介が作った隙だが、僕も利用させてもらう!
ぶつかり合う二人をさっとかわし、
そのままトップに躍り出る。

続けて恭介が僕と同じルートで2番手に続く。
でも、・・・やらせないっ!!


「葉留佳さん直伝、ビー玉マキビシっ!!」


僕はポケットに入れていたビー玉をばらばらとばら撒く。
「ぬわっ、うをっ!」
まともに引っかかった恭介のスピードが目に見えて落ちた。
この隙になんとか10馬身ぐらいの差がついて−。

「これならっ!?」

僕はそのまま前を向いてラストスパートっ!!
恭介が僕の背中を見つめているのが感じられた。

彼が考えていることが伝わってくる。


『お前は、俺を超えてその先まで行ってしまうのか・・・。
だが、まだまだお前に全てを譲ってやるわけにはいかんっ!!』


その途端、背中に強いプレッシャーを感じた。
まだこれじゃあ安全圏じゃないっ!!


さらに其の後ろから大きなプレッシャーが2つっ!
振り向かなくても分かる。
真人と謙吾だっ!!!


僕の圧倒的なリードが一気に消費されつくす。
だが、ゴールはすぐそこだっ!!
それでも、目的の教室にたどり着いた頃には、
もう押し合い圧し合いのダンゴ状態と化してしまっていた。

誰が開けたかも分からないが、がらりっとドアが開かれる。
これは一瞬の差が明暗を分けてしまうっ!?

僕らはそう判断を下し、
ターゲットの姿を確認するやいなや、最後の気力を振り絞って駆け寄った。

もう4人は一列に並んでるような状況で、
目の前に不思議そうな表情を浮かべて立つクドまでまったく差は見られない。

・・・これは先に言い切った奴の勝ちだっ!!?


だから僕、いや僕らは我先にと言い放った。


「「「「パンツくれっ!!」」」」


・・・あれ?
なにか・・・おかしい。


「わ、わふーーーーーーーーっ!!?」


クドの悲鳴ではっと我に返る。
・・・何をストレートに言ってるんだろう・・・


僕が最後に見た光景は、
顔を真っ赤にして硬直するクドと、
蹴りをかまそうと構えをとった鈴、
どこから取り出したのか日本刀を抜いた来々谷さん、
ビー玉を指弾で構えた葉留佳さん、
NYPとかいうなんだかよく分からん力が原動力のメガバズーカランチャーをこちらに向けた西園さん、
そんなよく分からない、
というか理解したくな・・・
わーーーーーーーーーーーーーっ!!?


理樹、恭介、真人、謙吾は『ロリロリバスターズ』の称号を得た!


(終わり)