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真・恋姫†無双 SS 『真・恋姫†無双〜仲天演義〜』 第11話


「色々あったよねぇ。
アレとかソレとかコレとかもう本当にたっくさん」
「そうね、本当にイロイロあったわ。
何はともあれ、大陸制覇おめでとー」
「色々はイロイロよ。
これで私たちも安心して興行の旅に出ることも出来るわね」

三者三様のテンションでパチパチと手を打ち鳴らす少女たちの姿があった。
市井の出とは思えぬほど垢抜けた格好と雰囲気を持つ、年のころは互いに近い様子の三人の娘たち。
女性らしい魅力を持つスタイル抜群な長髪の少女が指示代名詞ばかりの語句を緩い調子で語る。
年下的な魅力に満ちたサイドポニーの髪型をした少女が続く言葉を当たり前のように喋る。
この時代には珍しいお洒落な眼鏡をした短髪の少女が何かを〆るかのような物言いで口ずさむ。
共通点は黄色のリボンをしていることと、何かを誰かに認めさせようとしているところであろう。
誰か。
・・・さて、誰だろう。

「いやいやいや、ちょっと待ってくれ!」

そんな三人の間に割って入ってきたのは天の御使いにしてこの街、南陽の住人には知らぬものなどいない、北郷一刀その人であった。
慌てた様子で三人に対して両手で大きくストップのジェスチャーをしてみせてから改めて声を荒げる。

「何でそんなに今までの流れとかを全てぶった切って打ち切りくさい始まりなのさ!
って言うか黄巾の乱が終わってからまだ2週間も過ぎてないよ!
当然大陸制覇なんて何処もしてないから!!」
「打ち切りってなぁに、れんほーちゃん」
「そうねー、何のことだかちぃ、わかんなーい」
「ごめんなさい、姉さん。
天の国の言葉は私も分からないわ。

何処か棒読みの口調の三人だった。
とにかく、黄巾の乱の大ボスとして知る人ぞ知る天和・地和・人和の三姉妹を胡乱気に見つめる一刀である。

「いや、まぁ俺たちの戦いはこれからだ!とか、まだ始まったばかりだからよ!とか、このはてしなく遠い男坂をよ!とかそう言う雰囲気だったよね!?
挙句の果てには雑誌の柱の部分にあらすじ3行とか!!」
「おとこざか・・・?
あらすじ3行は悪徒-ACT-だっけ」
「まぁ、ぶっちゃけて言えばちぃたちにとってはココから先は消化試合みたいなものだし」
「ちぃ姉さん、さすがにぶっちゃけ過ぎ。
それに天和姉さんもダメよ、設定を無視したら。
ここは後漢末期の荊州なのよ」

設定言うな。

「ま、まぁ確かに1ヶ月以上何もしていなかった気がするけど、そんなの気のせいだから!
大体もう戦乱が終わったのなら曹操はどうしたんだよ?」
「死んじゃったね」
「えええっ!?」

天和がにこやかに告げる。
あまりにも当然という口調だったので危うく信じかけた一刀である。

「死因は腹上死。
何でも前人未到・豪華絢爛・佳人薄命・酒池肉林なドキっ!女だらけの50人祭り!を開催中の不慮の出来事だったとか。
それでも曹操さんはやり遂げた感を見せつける立派な死に様だったそうだよ?」
「・・・いや、全然立派じゃないし」

もし本当にそんなんで死んでいたらさすがにアホ過ぎる。
一刀は見たこともないツインテドリルな小娘の顔を青い空の向こうに幻視してそっと目頭を拭った。
乱世の奸雄の死因(想像上)は最低だ。

「じゃあ劉備はどうしたんだ!?」
「死んだわ」
「・・・そうなのっ!?」

今度は地和がきっぱりと告げる。
あまりにも毅然とした口調だったので一刀は数秒ほど信じた。

「死因は失血死」
「・・・今度は結構まともだな」
「鷲頭麻雀で血を抜かれたの」
「全然まともじゃない!!」

驚愕した。
色々と台無しである。

「ちぃの地和と天和姉さんの天和であっさりトんだからね」
「犯人がココに居たっ!!」
「知ってる一刀?
若い女性の生き血を飲むと老化防止に役立つのよ?」
「鬼過ぎる!!
って言うかこの時代で名称が鷲頭麻雀なのはおかしいだろ!
そもそも天和と地和ってお前らいくら自分の真名だからって森夫と浩史か!」
「誰?」

きょとんと首を傾げる地和である。
永遠に麻雀を打ち続ける白髪の爺さんのことは知っていても、結局のところ一部でしか知られていない同人ゲーのことなど当然知らなかったようだ。
とにかく一刀は青空の向こうにほんわかホエホエとした、剣を構えればへっぴり腰な可愛いお嬢さんが生き血を限界以上に抜かれてげっそりと俯いているのを幻視してしまい涙が溢れて止まらなかった。

「じゃあ、じゃあ孫策は!?」
「死にました」
「皆死んだんだな、おいっ!!」

さすがに一刀もつっ込み慣れてきた。
びしり、とポーズまで決めて人和へと突っ込みを入れる。

「死因は毒殺。
彼女が制圧した呉郡太守の許貢の部下によって暗殺されました」
「孫策だけやけにリアルな殺され方してる!!」

ショックを受ける。
キツイ目つきのきれいなお姉さんが憤慨やる形無し、といった風体で空に浮かんでいた。
あ、うん、無念はよく分かります。

「そんなわけで我らが仲国が大陸の真中から各地を切り取っていって見事に統一を果たしたわけです。
めでたしめでたし」
「いや、待て。
まってくれ。
しばらく更新が無かったから、見ている人も作者自身も内容覚えてないだろうと適当に言ってるだろ?」
「うわ、メタ発言はダメなんだよ、一刀。
そんなことないからね?」
「ぶーぶー」
「大丈夫です、北郷様。
ここで北郷様が『ああ、そういうこともあったなぁ・・』と感慨深げに呟いてくれれば、きっとソレが真実になります」
「・・・やっぱり嘘っぱちじゃないか」

一刀は早速疲れ果てたという様子でため息をこぼすことぐらいしか出来そうに無かったのである。
それからメタ発言言うな。



「・・・と言うかこういう世界観とか何もかも無視した話題は止めようよ。
天和たちは何でそんなことを知っているのか、とかも全力で見逃すからさ」
「ちぃの妖術のお陰ね!!」
「妖術すげぇ!!」

一刀が目を見開いた。
マイク代わりに妖術でカバー。
スピーカー代わりに妖術でカバー。
大型モニター代わりに妖術でカバー。
もちろん世界情勢だってお手の物!
何でも出来るよ!
やったね、妖術!!
そんな妄想を思い描いた一刀はことさら詳しい話を聞いてみたい衝動に駆られるが、あまり深く突っ込んではいけない領域のような気も同時にしてしまい、結果、異常に悶々とした気分を覚えるばかりである。
とは言えこのままでは何時までたっても話が進まないので、心に棚を作って今までの全ての突っ込み所を押し込んでから、一刀は心機一転な心持ちで口を開いた。

「と言うか三人はこんなところで何をしてるんだ?」
「ん〜、雑談、かな」

こんなところとは、街の中心部にある公園である。
元々この大陸の街ではあまり見られない設備だが、一刀の発案の下で実現した市井の民たちの憩いの場所だった。
簡単に言えばお金が無くとも単価が安い屋台の料理を摘み一休みできるような場所である。

「黄巾のときのお金は全て没収されたし、1文無しに近いんです。
その上大陸の情勢と私たちの取り巻く事情のせいで気ままに興行を組むわけにもいきません。
衣食住は一応お城から保証してもらっていますけれど、何時までもって訳にはいかないのも重々承知していますので」
「だからこれからどうしようかって言う、三姉妹会議なわけ」

人和の人の世の世知辛さを再認識させるような説明に地和の台詞が被さる。
しかし、なるほど。
確かに一躍時の人と化し、国家転覆の首領と恐れられ挙句の果てにはタコ殴りで絶体絶命な状態からほとんど反則な方法で逃れてきたばかりの彼女たちだ。
再起を図るにしても色々と段取りも必要なのかもしれないと、一刀は一応の話の流れを理解してから提案する。

「ふぅむ、街の人と話をするのも俺の仕事と言えば仕事だしな。
良ければ相談くらいにならのるよ?
オヤツぐらいならご馳走するし」
「街の人言うな」
「オヤツ?」
「・・・そうね、北郷様なら話もし易い方だし、そもそも私たちをここに連れてきた張本人ですし。
お願いしてもいいでしょうか?」

地和の突っ込みと天和の食欲でしか動いていないような台詞からやや間を置いて、考えがまとまったらしい人和がこくん、と首肯する。
そうして一刀たちは腹ごなしも兼ねて近くにある点心の店へと向かったのであった。





「街の人から話を聞くために今話題のオヤツを出す店に移動してみました」
「だから街の人言うなっ!」
「・・・今の私たちには街の人、以外言いようがないわよ」
「でもでも、お姉ちゃんは『綺麗な』とか『可愛い』って枕詞が欲しいなぁ?」

そんな訳で移動した先である点心の店で4人、卓を囲みながら注文が来るのを待っていた。
状況説明的な一刀の言葉に三者三様の突っ込みが入るが、続く一刀の謝罪も彼女たちの文句の言葉も遮って注文された料理が届く。
しばし、天の国で見たことのあるような彩豊かなスイーツを前に黙々と舌鼓を打つ。
何を隠そう一刀のアイディアと料理人の情熱によって再現されたメニューであった。

「・・・確か俺が皆を城に連れてきてから一週間ほどは城に軟禁されていたんだよな。
俺も何度か顔を見にいったけど丁度間が悪くて留守だったんだ」
「うん、そうだよ。
張勲さんに結構な時間拘束されちゃってたから仕方ないね」
「黄巾の後始末は諸侯の協力もあって早々に終わったらしいというのと、三人が協力的な態度で尋問を受けてくれたからほとんど知らない内に俺預かりと言うことにされて、城の軟禁からは解放させてもらって・・・。
確か街の宿屋に一室だけだったけど、俺の名前で一ヶ月ぐらいは予約入れてあげたはずだけど」
「北郷様の計らいで最低限の罰だけで絶対絶命の危機を救われました。
改めて御礼致します」
「い、いや、そう言うのは良いよ。
俺もほとんど何もしてないし、北郷様なんて言われるようなこともしてないから。
うん、三人には真名を許してもらっているんだし、俺も一刀で良いよ」
「はい、勿体無いお言葉、ありがとうございます」
「俺たちしかいないんだし、敬語も良いってば」

そうして唯一畏まる態度をとってくれる人和に逆に慌てながらも、一刀は思い出したように彼女たちの近況を尋ね始めた。
彼は彼で軍に出す指示や街を去る趙雲の送別会などを開いたりとそこそこ忙しい日々を過ごしていたこともあり、張三姉妹と話を交わすタイミングに恵まれなかったのである。
きちんと言葉を交わすのは久しぶり・・・と言うか、実のところ始めてと言って良い状況だった。

「では、一刀さん、と。
確かに城の軟禁からは開放されたけど、街から出ることなどは当然許されてはいないわ。
それに、もしもそんな許可が下りていたとしても、今の私たちは旅に出るわけにはいかないけれど」
「そうだねー。
袁術ちゃんの支配下の街ならともかく、そうじゃない場所に行ったらたちまち捕まっちゃうかもしれないし」
「ざーんしゅ!
何て言われるかも・・・ブルブルっ」

肩をすくめる人和にまるで他人事かのような口調で余り洒落にならないことを呟く天和、そして首をはねられるジェスチャーをしてうえ、と舌を突き出す地和とそれぞれのリアクションをする三人を見つめてから、一刀はなるほどと言った風に頷いた。

「・・・そうかもしれないな。
幸いと言っていいのか、結果的に荊州は黄巾の被害が最も少ない州だったから、まだ三人に対する風当たりも弱いだろうし」
「もちろんほとんどの人は私たちの素性は知らないはずだけど、万が一ってことはあり得るから」
「そうだねぇ。
元黄巾の人たちは当然わたしたちのこと知っているはずだし」
「そういう前提条件が無かったとしても、今の大陸の動向だと女三人だけの旅なんて危なくてとても出来ないわ。
聞いた話だと曹操さんの領地なんかは結構安全らしいけど、そもそもそこまで行くことが出来ないしね」

それは当然だろう。
黄巾の本隊が倒れたとは言え、その名に便乗して略奪行為を働いていた各地の盗賊たちは未だに大小様々な規模で残っていた。
武芸の心得すらない女だけの旅など安全を担保どころか危険を担保するような旅路となってしまうだろう。
具体的にはLiquidのゲームになる。

「なるほど。
確かに南陽でも正規軍はこの二週間の間にも幾つかの部隊が盗賊討伐に出ているみたいだしな。
三人の言う通りだよ」
「それこそ全部の街の太守がさっきの話しに出た曹操ぐらい有能な人だったらあっと言う間に鎮圧出来るんでしょうけど、いいとこ半年は危険だと思うわ」
「・・・曹操ってそんなに凄いヤツなのか?
ええと、後学のためと言うか、好奇心と言うか、他の諸侯でも知っている奴がいたら教えて欲しいんだけど」
「じゃあわたしが教えてあげるよ〜。
あっ、その前にね〜、この焼き菓子って食べてみたいな?」
「・・・どうぞ」
「やた!」

メニューをひらひらと指差しながら交渉する天和の邪気の感じられない笑顔の前に撃沈した一刀が、店員を呼んで追加メニューを頼む。
ついでに地和と人和の分も注文してやってから話の続きを促した。

「・・・ほら、俺は天の御遣いとか呼ばれているけど、実際にこの大陸に来たばかりだからあんまり諸国のことに詳しくはない・・・いや、全く知らないんだよ。
三人なら諸侯たちのことを実際に見聞き、どころか戦った経験もあるんだろ?」
「そうね、一言で言うと・・・化物ね」

一刀の疑問に対して、びしりと言い切った人和の言葉に残った天和と地和がうんうん、と頷く。

「飛将軍・・・三万人切りの呂布なんかその筆頭も筆頭だし、それ以外にもどう見ても人間の域を逸脱してそうな連中が何人かいたわね。
孫策とかすごいおっかない鬼みたいな人だったって」
「曹操さんのところの夏侯惇さんが剣を巨大化させて黄巾の人たちをなぎ払っていたって噂を聞いたことがあったね」
「劉備のところの関羽は100人からの突進を苦もせず受け止めたという報告があったわ」
「・・・まさか」

話半分と思わなくもない一刀だったが、呂布の三万人切りの話は七乃からも聞いていた。
そして彼の下で客将として腕を振るっていた趙雲もまた、確かに何十人もの人が束になっても敵わない豪傑だった。
であれば、超有名どころか、武神とまで讃えられる関羽のような連中ならばそれぐらい出来たって不思議ではないだろう。
やっぱり不思議だが。
それでも納得せざるを得ない状況ではあった。

「いや、うん、分からなくはない・・・かな。
ウチにも趙雲って娘が仲間にいてくれたんだが、彼女も一騎当千の強者だったし、軍を率いても他の連中より何十倍も戦果を挙げてたしなぁ」
「そもそも、そういった人知を超えていそうな力を持った武官が黄巾党にはいなかったのよ。
だから、私たちが何十万人も集めたとしても、結局負けていたのはこちらだったでしょうね」
「・・・あの連中は正直反則だとちぃは思うの」
「お姉ちゃんもびっくりだったよ」
「とにかく、そんな武官たちの姿を見せ付けられる結果になって、自分たちが如何に無謀な争いに巻き込まれているのかを再認識したわ」
「そーそー。
だから一刀の提案は渡りに船だったわよ」
「そうだね。
わたしももう呂布とは二度と会いたくはないなぁ」

いつもニコニコと危機意識の欠片も無さそうな印象のある天和さえも青ざめた表情を浮かべるぐらいである。
その実力は推して知るべし、なのだろう。
呂布に手を出してはいけない。



「じゃあ名士はどうなんだ?
軍師とか文官とか、そんな連中の印象って何かあるか?」
「・・・うーん、正直言って直接見たわけじゃないから何とも言えないかなぁ」
「そうね、人和の作戦が上手くいくことは多かったし、あんまり凄いって印象はないかも」

続く一刀の文武の片割れ、文に対する疑問は天和、地和の2人からは芳しい答えは返ってこないようである。
最後の1人に望みを託すように視線を送ると人和は考え込む仕草を見せていたが、その後に自分の考えをまとめるようなゆっくりとした口調で声を上げた。

「いえ、姉さんたちには悪いけど私の作戦は一部の軍にはかなりの部分が筒抜けだったみたい。
裏をかかれている、あるいは踊らされていると感じた勢力がいくつかあるわ。
一つは曹操。
一つは孫策。
一つは劉備。
他に幾つかの軍でも同じように感じたわ。
知識教養は一通りこなせるつもりだったけど、少なくとも私程度では相手にもならない連中がいるのは確かなの」
「そっか。
孫策のところは周喩かな、やっぱり。
・・・劉備って今はほとんど流浪の将なんじゃないのかなぁ?」
「流浪?
ええ、確かに正式な官軍ではないみたいだったけど。
少なくとも下手な官軍よりはよほど印象深い、強い軍だったわ」
「ふぅん。
やっぱり俺が知っている範囲とは少し違うのかもしれない。
それにしても知識人もやっぱり別格な連中なのは間違いないな。
風だって俺なんか及びもつかない深謀遠慮の持ち主だし、似たような連中はやっぱり他にもいるってことか」

話をまとめると、やはりこの大陸には才能の一言では言い表せないぐらいの凄まじい、様々な天分の才の持ち主が何人もいるらしいことは確かなのだろう。
一刀のぼやくような、羨むような言葉を耳にした人和が同意するかのように頷く。

「・・・しかし、以外だよな」
「そうね、反則としか思えないわよね」
「いや、そうじゃなくてだな。
三人も巻き込まれていただけ、なんて思っていたけどさ。
話を聞いているとさ、実は結構、普通に黄巾党の代表をやっていたのか?」
「仕方なかったのよ。
そもそもの公演の計画は私がしていたし、必然的に着いてくる人たちがいるからそれを見越した動きを考えないといけなかったわ。
・・・それに、ちぃ姉さんは不必要に官軍との接触を煽ってくれたからね」
「むぅ。
ちぃ、わかんなーい」

すっ呆けた顔をして知らないフリをする地和だが、額に浮かぶ一筋の汗からして一応彼女も扇動していた自覚はあるのだろう。
とにかくその話を続けるのは得策ではないと判断したらしい。
少し声のトーンを大きくしながら、地和は話を切り換えようと口を開いた。

「ところでさ。
今日の本題なんだけど、ちぃ達はこれからどうすれば良いかな。
一刀は何か考えない?」
「・・・俺っ!?
俺は・・・うぅん・・・そうだなぁ」
「わたしはやっぱり歌いたいなぁ。
ねぇ、一刀。
一刀もわたしの歌を聴きたいよね?」
「と言うか聞いたことないからな。
正直興味はあるよ」

魅了の魔法を使っているかのような愛らしい猫撫で声で喋る天和に対して、一刀は苦笑いを浮かべながら考える。
個人的にアレだけの人数を虜にする張三姉妹の公演とやらを見てみたいというのも事実であった。

「そもそも何時までも一刀さんの財布を当てにするわけにもいかないし、かと言ってウチの姉たちは芸以外に何もとりえの無いダメ人間だから普通の仕事を探すのも大変なのよ」
「あ、れんほーちゃん、ひどーいっ!」
「そうね、人和はもっと姉を敬うべきよ」

姉妹喧嘩とも呼べないじゃれ合いを横目に、一刀の頭にはやはり芸で生計を立せさせるのが一番なのだろうという前提が浮かぶ。
その上、彼女たちの芸能ノウハウを手に入れることができれば、兵を集めるのにも慰労するのにも色々な面で助かるのは事実なのだ。
彼女たちの願いはそういう意味ではこの国の思惑とも一致するだろう。

「・・・劇場。
劇場なんてどうだろう。
街の真中、例えばさっきの公園の脇にでも舞台を作ってそこで定期的に公演をするんだよ。
良いと思わないか?」
「それってわたしたちのための劇場?」
「一刀が作ってくれるの?
ちぃのためにっ!?」
「えええっ!
俺が作るのっ!?」
「それはそうよ。
私たちはお金なんてほとんどないし、劇場なんて作るどころか借りるのも無理だもの」
「いや、うん、そうだ。
天和たちだけじゃなくて他にも旅芸人を招いたりして、そこで色々出来るようにすれば・・・うん、やっぱりそういう施設って必要だよな。
じゃあ早速今日城に帰ったら提案してみるよ。
・・・ただし、あんまり期待しすぎないでくれよ?」
「ダーメ。
絶対に劇場を作ってね?」
「そうね。
上手く劇場を作って、さらに封切りをさせてもらえるのなら・・・ちぃたちの舞台を目の前の特等席で見てもいいから!」
「ちぃ姉さん。
それはあんまり交渉材料にならないと思うのだけど」

兎にも角にもそんなわけで、一刀は南陽の街の真中に劇場を作ることになるのであった。
ちなみに劇場建築の申請は美羽に話をしてみたところ、あっさりと意見が通ったことをお知らせする。
げに恐るべきは袁家の財力なのかもしれなかった。


(続く)