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真・恋姫†無双 SS 『真・恋姫†無双〜仲天演義〜』 第10話


これは例えるならば、ただの日常のお話だ。
もちろん、山が無ければ谷も無い。
つまるところ、オチが見当たらない話と言い換えることが出来る、と言うかそうとしか言い様がなかった。

「・・・ぐぅ」

ほとんどの人間が慌しく日々の生活を営む昼下がりの午後。
そんな喧騒とは無縁を画する様に、ここ、南陽太守の住まう城の奥まった箇所にある一室で北郷一刀が寝台の上で惰眠を貪っていた。
暑くもなく、寒くもない。
それでも太陽が降り注ぐぽかぽかとした陽気が誰であっても眠気を誘う一時であった。
さらには部屋の外から聞こえてくる小鳥の囀りと、猫がにゃーにゃーと鳴く声が逆に適度な誘眠効果を持つかのように軽いうたた寝のつもりだった一刀の眠りをより深いものへと誘う。
彼はそんな周囲の環境に逆らうこともなく、寝台に身体を横たえてぐっすりと寝息を立てていた。

ギィ・・・

一刀の私室のドアが軋む音を立ててかすかに開いたと思うと、一匹の猫が音も立てずにするり、と忍び込んできた。
ひくひく、とヒゲを震わせてまっすぐに彼の寝台の上へと器用に飛び乗ると、もぞもぞと彼の掛け布団の中に我が物顔で潜り込む。

「・・・むにゃ。
あったかいな・・・」

猫と一緒に寝るなんてことは羨ましいように見えて、実は件の動物の体表面とお腹の中には寄生虫が居てよろしくはなかったりするのだが、そんな現実は無かったことにする。
一刀は意識を手放したまま、反射のようなごく自然の無意識の動きで天然の湯たんぽとでも言える猫を腕の中に抱きしめて至福の表情を浮かべる。
暑苦しくは思わなかったようだ。

トス

寝台の上に新たな影が現れる。
また猫。
ニャーとも鳴かなければ猫かどうかは文字だけでは判別し辛いものがあるが、どう見ても猫だった。
足音は立てずとも寝台に飛び乗った際にかすかに響いた小さな着地音が聞こえたかと思うと、二匹目の猫もまた当然のような足取りで一刀の布団の中に入っていった。

「・・・んぅむぅ?」

一刀は目覚めぬ意識のまま、違和感とそれから何某かの感情を憶えたようだが、それでも目を覚ますこともなく眠り続ける。
それどころか二匹目の猫もごく自然な動きで、無論意識しているわけではないのだから動物的な意味ではごく自然な動きなのだろうが、抱きしめる。
暴れることもなく為すがままにされる猫が二匹に増えた。

「・・・」

またまた寝台の上に影が見えた。
またまたまた猫。
鳴きもしなければ音も完全に無音だったせいでまるで存在が掴めないが、確かに一刀の目の前に迫っている。
三匹目の猫も代わり映えのしない動きを見せて一刀の布団の中へと進入していた。

「・・・何だ?」

さすがに三匹目となると違和感も大きい。
スネーク顔なしの無音ミッションをやり遂げた三匹目の猫を責めることは出来ないが、それでも寝台を占める割合の三分の一程度が猫になるとさすがの一刀と言えどぐっすりと安眠しているばかりもいられない。
ぼんやりと歪む眠けまなこを何とかこじ開けると、猫がいた。

「・・・猫か」

寝起きで頭の働かない一刀は猫が居るとは認識できたものの、数までは考慮の範疇外だったようである。
猫ならいいか、と再び半眼だった瞳をゆっくりと閉じて午睡の続きを再開させようと力を抜く。

「にゃー」

一刀が寝入る前に、鳴き声が聞こえる。
ニャーと鳴く以上猫に違いない、というか猫はもういるし一匹でも二匹でも一緒だろう、そんな風に寝ぼけた頭で考えた一刀は寝台の脇から聞こえた声の主も布団の中に引きずりこんでやろうと、両手を伸ばす。

むに

柔らかい感触が伝わってくる。
暖かい。
もちもちとして、ぷにぷにとして、ほんのり暖かいソレが猫のどんな部位なのだろうかと眠けが澱のようになって働かない頭で考えて、だが答えが出ない。
目を開くのも今の一刀には労力が必要で、あまりしたくはなかったが諦めて目を開く。
思わずぎょっとする。

「にゃあ」
「お早う・・・」

そこには柔らかそうな、事実柔らかい感触が伝わってきているのだが、頬を一刀の両手で鷲掴みにされた風の姿があったのである。
何故か猫の鳴き声付きだった。
サービスなのかもしれない。
誰に対してだ。





「おお、風一号に風二号に風三号よ。
お前たちの草としての実力は確かなもののようですねぇ。
風ではお兄さんの寝台に侵入することすら適いませんでしたから?」
「・・・この猫たちは風の差し金かよ」

とりあえず猫に草、つまりスパイとしての技術を仕込むことは不可能ではないだろうかとつっ込みを入れようかと考えた一刀だったが、世の中には猫を見ると『お猫様』と騒ぎ立てる一流の草もいるかもしれないと、そんなあり得ない妄想をしてから、とりあえずいの一番に聞きたいことを尋ねるにとどめる。

「んむぅ?
風の差し金で猫がにゃーにゃーとお兄さんの寝台に潜り込むなどと、奇怪なことをお言いになる。
風は自分でも気づかぬ内に猫遣いになったようですねー?」
「若しくはその頭の上の宝ャで猫を操ってるな!?」
「ないない」

パタパタと腕を大仰に振る風の頭から宝ャを引っこ抜いてみる。
猫は変わらず一刀の寝台の周りを我が物顔で陣取ってまるで動揺した素振りも見せやしない。
どう見ても考えすぎだった。

「これこれ、お兄さんオイタが過ぎると大声で悲鳴をあげますよ?」
「・・・リアルな脅迫をしないでくれ」
「りある?」
「やられたら素で困る類の言動ってことだよ」
「いえいえー。
そういう事でしたら既に城の皆様には風はお兄さんの愛人のように認識されているようですからねぇ。
声を上げてもそういう床の業としか思われないのではないでしょーか?」
「初耳なんだけどっ!!」

思わず目を見開く。
力の抜けた瞬間を見計らったように風が素早く宝ャを取り戻し所定の位置にセットするが、一刀はそれには目を向けることもなく驚愕の篭った表情のまま続ける。

「どうしてそんな根も葉もない噂が!?」
「いくつか理由はありますけどー。
尚香さんがお兄さんに所構わずベタベタとしてますからね。
お兄さん部隊の上役は皆、お兄さんの情婦だと思われても不思議じゃありません」
「そ、そうか・・・?
確かにシャオとのアレコレをいつも見られているわけだし・・・でもアレだってちょっと過剰かもしれないけど、過激ってわけでもないし・・・」
「それからぶっちゃけて言ってしまうと名門袁家な上、黄巾討伐で結果的に評価をうなぎ上りにあげた袁術さまの麾下に加わりながら、敢えてお兄さんの部下として振舞ってますからねぇ。
並々ならぬ関係だと邪推されるのも仕方ないことでしょー」
「そーいうものなのか・・・」
「ええ、そーいうものですよ」

抑揚の感じられない口調で言い切った風であるが、本人的には気にした様子も見せてはいない。
一刀も殊更驚いてうろたえて見せても仕方ないかと、とりあえずは納得したということで自身を誤魔化しながら寝台の上に座ったままペコリと頭を下げた。

「ええと、どちらにしても俺が原因だもんな。
すまん、風。
気になるようだったら何処まで出来るか分からないけど説明して廻るけど」
「お気になさらず〜。
それならそれで都合が良いですしねぇ」
「都合が良い?
何でだよ」
「簡単に言えば袁家のように名門さんでお金や出世欲で働かない存在というのは目立つんですよー。
それでも愛情、もっと言ってしまえば愛欲に駆られて、というのは得てして説得力はありますからねぇ。
傾国の美女なんていう戒めは昔から治世の禁忌ですし」

最もお兄さんは男性ですけど、と言葉を結んだ風である。
確かになるほど、と思わなくもない。
一刀の知る歴史のわずかな年表の中でさえ、異性関係で破綻した国というものが存在するのだ。
ある意味では、人が生きる上で容易に理解し易い理屈ではあるだろう。

「確かにそうかもしれないな。
・・・で、話は戻るんだけど、この猫たちは一体何なんだ」
「そちらのお兄さんの膝の上で丸くなっているのが風一号。
お兄さんの左腕に引っかかってブラブラと揺れて遊んでいるのが風二号。
我関せずと布団の上で睡眠欲を満たそうとしているのが風三号。
風がお兄さんの部屋のドアをこそっと開けてみたら侵入した次第です」
「やっぱり風の仕業じゃないかっ!!?」
「気のせいですよー」

どう見ても気のせいではないのだが、断言されると気にしてはいけないのだろうかと不安になる小心者の一刀だった。
と言うか名前はやはりつっ込み待ちなのだろうか。

「そしてお兄さんに頬を摘まれたのが風四号です」
「風零号じゃないのっ!?」
「そこはあえて?」
「疑問符っ!?」

寝起きでテンションが少しやばげな一刀だった。
風も一刀のリアクションに満足したのか、にっこり、そんな笑顔を浮かべたのでこれにて詰問パートは終了。



「・・・お兄さんの部屋の机にはお菓子が常備してあるんですねぇ。
贅沢者です」
「美羽用のお菓子だよ。
アイツ、お菓子が欲しいときに部屋の中にないと拗ねるんだ」

取りあえず一刀はいつまでも寝台にいるわけにも行かぬと、猫軍団(三匹)から逃れるように立ち上がって備え付けの机に移動する。
すると彼に付いてきた風が目敏くも、あるいは当然のように机の中央に置かれた幾つかの焼き菓子に視線を向けながら尋ねた。
そんな一刀の答えに一つ頷きを返した後、風はひょい、と手を伸ばして菓子を摘む。
パリポリ、と焼き菓子特有の乾いた音が響いた。

「いただきました」
「別に良いんだけど、できれば頂く前に言って欲しいかな」
「そう言えばお兄さん。
風には怖いものがありまして」

どう見てもフリだった。
話を聞くまでも無い。
まんじゅう怖い。
それから・・・。

「茶が怖いんだろ?
分かった分かった、用意してやるけど不味くても文句言うんじゃないぞ」
「文句は言いますけど、風は別に美食家でもないですから。
ちゃんと飲めればお代わりを所望します」
「・・・期待すんなよ?」

眼が覚めてもこの常に半眼眠け眼の軍師、やけに『眠』の字が多いのが特徴だ、のペースから逃れることも出来ずに一刀はのたのたと茶器の置いてある場所へと向かう。
彼が甲斐甲斐しくも茶の準備を始めるのを見つめていた風だが、やはり彼女も女の子と言うべきだろうか。
机の上の箱の中にある焼き菓子をひたすらぱりぽり、とやり続けていたりするのはご愛嬌だろう。

「ほら、期待するなよ?」
「いえいえ、先ほどはああ言いましたが折角お兄さんが手づから淹れてくれたお茶を不味いなどと言うわけが・・・まず」
「やっぱり少しショックは受けるよね!?」

ぱっちりとしたかなり大きめな瞳が普段よりもさらに細められ風が取れる限りの表情で苦々しい、この場合は正に味覚的な意味で苦々しかった、ことをアピールする。
とは言え茶器などは一刀が使ったことのある急須などと比べたら遥かに複雑だったのだし、兎に角まずいことをしてしまったと、一刀も自分の手に持っていた茶をぐい、と飲み干す。
・・・苦かった。
ただただ苦かった。

「おかしい・・・。
教わった手順どおり、一杯はご主人様のため、一杯は自分のため、一杯はポットのためとメイドさんクオリティなお茶淹れをしてみせたのだが・・・」
「お兄さんが何を言っているのか天の国の常識には無学でさっぱり分かりませんが、きっと碌でもないことなんでしょーねぇ」

苦々しい泥水と形容すべきお茶もどきをそれでもぐい、と飲み干した風がため息混じりに零した。
ぺろ、と自分の舌を外気に触れさせようと外に出し、真っ赤な舌がどこか官能的に感じることを本能で認識しながら一刀は動揺を隠すようにフォローをいれる。

「おい、不味いんだから無理して飲まなくてもいいのに」
「それにしても面白い返しが出来るほどヒドイ味というわけでもないですし、かと言ってお世辞にも美味しいとは言えないですし。
やれやれ、お兄さんは芸人として中途半端は良くないと教わりませんでしたか?」
「・・・とりあえず全部飲んでくれたことには御礼を言っておくよ。
ありがとう。
そして大きなお世話だ!?」

つっ込みを入れながら肩を落とした一刀が、一度息を大きく吐いてから続ける。

「お茶の淹れ方ぐらい勉強しないとな」
「それよりは戦意高揚や説得のための口上やそもそもの戦略、戦場の動き方だとか、先に学ぶべきことは山のようにあると思いますけどねー」
「・・・精進します」

風の意趣返しとも捉えることが出来そうな厳しめな発言に、一刀はげんなりとした口調で政治家のような答弁をすることしか出来なかったのであった。



「・・・ん〜。
やっぱりダメそうですねぇ」

そんな訳でリベンジである。
風は一刀が『ちょあああああ』などという謎の気合を込めながら斬新な手管で茶器を準備しているのを見て、『ああ、コレはダメだな』と思わなくもなかった。
とは言え、とりあえずは黙って見ていようとまったりとした視線を一刀に向けている次第である。

「思いっきり口に出してるよ!!?」
「お兄さん、地の文につっ込みを入れてはいけませんよ?」
「つっ込みを入れざるを得ない!」

寝台の上で自由気ままに寝そべる三匹の猫とこちらも気の向くままに戯れつつ、風は再び不味いお茶を呑むハメになりそうで軽くため息をこぼす。
それでもそんなに嫌な気分ではない自分の姿に口の端をかすかに持ち上げつつ、彼女は寝台に持ち込んだ菓子を再び口に放る。
どうやらこの城の主の趣向を見通した、蜂蜜を小麦粉の練り物にまぶしてから焼き上げた菓子のようだ。
少し強めの甘さとパリポリという食感のわりにしっとりとした口あたりはかなり上質の菓子であることを窺わせる。
少なくとも一刀の自作のお菓子ではないだろう。

「・・・おやぁ?」

味はいい、むしろ貴族の生活などにトンと縁のなかった彼女にとって素晴らしい味わいのお菓子だと言ってもいいほどだが、難点が一つあった。
風がそのことに気付いたとき、ただ、既に遅かったようである。

「確かにこのたぐいの菓子はこぼれやすいですしねぇ。
その上猫がにゃーにゃーといれば、この惨状も確たるものでしょうか?」

ありていに言ってしまえば風がこぼした菓子の欠片目掛けて、猫たちは寝台の上でベロベロと後始末に必死だったのだ。
もっと簡単に言えば猫の唾液で敷布団がベタベタになっている。
結構ひどい有様である。
そこそこに臭い。
風はとりあえず最後の菓子をパクリと食べ終え、改めて周囲を見渡す。

「・・・まぁ、気にしない方向でー」

程仲徳程度の神算鬼謀ではこの惨状を乗り越えることは出来そうになく。
実力のないものが無力を嘆くしかないのはいつの世でも同じなのだろう。
簡単に言えば洗濯するつもりはないようだ。

「お、お待た、ぎゃーーーっ!?
布団がエライことにっ!」

彼女が見て見ぬフリをするという結論を出したところで、後ろから悲鳴が響く。
くるりと振り返った風の視界には一刀が両手に湯のみを持ちながら、悲しげな瞳で寝台を見下ろしている姿が映る。

「まぁ、猫のヨダレですから気にしない方向ということでココは一つ」
「・・・はぁ。
まぁ下の粗相をしたわけじゃないし、簡単に水洗いしてから女中さんに洗濯をお願いすることにするよ」
「よっ、さすがお兄さん。
広い心に寛大な人柄。
憎いね、この天の御遣いっ!」
「・・・反省してないだろ?」
「ごめんなさい」

本気ではないがポーズとして凄んでみせる一刀に風がペコリと頭を下げる。
素直に謝るのは大切だ。

「とにかく再挑戦だ。
風、今度のはイケると思うぞ」
「そですか?
確かに香りは・・・おや、甘ったるい?」

湯のみを受け取った風がまじまじと水色を見つめてみると、無色透明である。
それに鼻腔をくすぐる独特の甘い蜜のような香。
さきほどまでソレを使った菓子を摘んでいたこともあって、ピンとくるものがあった。

「蜂蜜ですか?」
「おお、その通り。
蜂蜜水は美羽のところにいる限りは必須だからな。
こればっかりは俺も自信があるんだよ」

少し嬉しそうに声を出す一刀をチラリと見つめてから風は湯のみを傾ける。
喉を通る蜂蜜水はなるほど、確かに濃厚なようで口当たりもよく、彼女の口にもあっていた。

「どうだ?
ちなみにな、とっておきの蜂蜜を使ったから美羽と七乃にはナイショだぞ。
俺と風だけの秘密だな!
風は俺にとって大切な仲間だし、これからもよろしくって意味もあるんだぜ!」

とにかく一刀にとっては先ほどのリベンジにして、もっとも自信のあるメニューなのである。
彼は童子のような無垢な笑顔を浮かべ、風の感想を今か今かと待つばかりだ。
ニャーと猫が声をあげる。
それから風は、こと、と寝台の脇の台に湯のみを置くと、ふるふると身体を震わした。

「ぷっ、あはははははっ」

声を上げて笑い出す。
一刀は風がツボに入ったかのような笑い方をするなんて想像の範疇外だったのか、きょとん、とした顔をしてただただ笑う彼女の様子を見つめることしか出来なかった。

「あはははっ。
お兄さんは、お兄さんはそーいう人だったんですねぇ。
なるほどなるほど。
英雄の資質ってヤツですか、いやいや、納得納得」
「・・・?
何が?」
「星ちゃんもお兄さんの本性が分かっていたら、きっとこの場所に残ったんでしょうねぇ。
とは言え、コレも一つの天命ってヤツなのかもしれません」

風は一刀を置いてけぼりにしながらも、1人分かったような口調でそう結論づけた。
ちなみに趙雲は黄巾党の後始末をようやく終えた先日の折、まだ見ぬ強者に会いに行く!などとカッコイイ台詞を決め顔で告げて颯爽と旅立っていった。
ただ別れた後まっすぐに迷うこともなく露天に出ていたメンマの壷を買い求めていたあたり、色々と台無しな別れのシーンであったりして、結果として丸々そのシーンはカットされたのである。

「・・・?
いや、だから何がだよ」
「さぁ、何なんでしょうねぇ」

一刀は風が言いたいことなどまるで検討もつかないとばかりに首を捻る。
彼女もまた、にやけ面を浮かべたまま、明言を避けて言葉を濁す。
どちらにしろ答える気はないようだ。

「・・・それにしても。
お兄さんはちっちゃい娘好き好き団の団長さんだったんですね。
囲っているのは袁術さまに孫尚香さまに、それから一応私もですかねー?」
「な、七乃さんもいるもんっ!?」

何故かそんなことを唐突に言い出す風に、思い返してみればそうかもしれないと恐れ戦きながらも一刀は些か間抜けな返しをするしかなかったのであった。


(続く)