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魔法少女リリカルなのは SS
『魔法少女ブリーディングはやてStS』


注意!
ATTENTION!
AUFMERKSAMKEIT!
この番外編は4月馬鹿企画です。
一部登場人物に原作との設定に大きな差異が存在します。
ご了承の上、洒落が分かる方のみお進み下さいます様お願い申し上げます。

















―――辞令。
スバル・ナカジマ二等陸士。
ティアナ・ランスター二等陸士。
明日付けをもって、時空管理局遺失物管理部対策部隊「機動六課」への配属を命じる。

「「拝命します!」」



そんなことがあったのは、今からほんの十数分前。
あたしは、もう数年来の付き合いである腐れ縁のスバルと一緒に、
今出てきたばかりの管理局の庁舎をふり返って眺める。
時空管理局・地上本部。
このミッドチルダの陸を管轄する管理組織の本店である。
あたしたちは今日ここで、古巣の災害担当突入部隊からの正式な異動を命じられた。
とは言え、辞令自体はもう何日も前から聞いていたわけで、
当然ながらサプライズ人事というわけではなかった。

新しい配属先は人類最強と噂される大魔道師、八神はやて二等陸佐を筆頭に
エースオブエースと評される高町なのは一等空尉と
フェイト・テスタロッサ執務官という管理局が誇る若き天才たちが作り上げた、
今でもマスコミで散々取り上げられている話題の新設部隊である。
スバルはただ舞い上がって喜んでいただけだったが、あたしはどうも腑に落ちなかった。
そんな期待の実戦部隊にあたしたちのような、
ほとんど実戦を知らないペーペーがいきなりフォワードとして配属されたところで、
上官たちの足を引っ張るのが精々だ。
これは何か裏があるべきだと見るのが正しいだろう。
管理局規定から考えると、高ランクばかりを一つの部隊に入れるわけにもいかないから、
数合わせのためのベンチ要員として宛がわれたと見るのが妥当だろうか。

・・・係官たちは皆哀れみの目であたしたちを見ていたような気がするし、
あながち間違ってはいないだろう。

ふふん、良いわ。
隣は浮かれるばかりのバカでハッキリ言って心細いけど、
ここで成果を上げることが出来れば一気に注目を浴びることが出来るだろう。
虎穴に入らずんば虎子を得ず。
あたしは自分にそう言い聞かせて、都会の町並みに視線を戻す。
よしっ、と明日からの生活に向けて気合を入れた。

「あーもー、なんでやねんっ!
何で犯人捕まえたのに今日一日謹慎処分なんや!
ふざけるんじゃないでっ!!」

その瞬間、後ろから妙に偉そうな女性の声がしてあたしは再度ふり返ることになった。
そこに立っていたのはあたしと同じ茶色の地味な管理局の制服を着た、
若い女性・・・いやまだ辛うじて少女と呼べなくもない年頃の人物である。
あたしはクセで視線を自然と胸元の階級章に向ける。
・・・げ、この女、二等陸佐だ。

「ちょおっっと都市が一つ凍りづけになっただけやんっ!
そんな事じゃこの世界の平和なんて守れへんでっ!
エッラそーに広大な敷地使いおってからにっ!!
このっ!
このっ!!」

そして本局の壁におもむろにヤクザキックを入れ始める変な女。
・・・なんだあれ。
あたしは怖いもの見たさか、そちらにじぃ、と視線を向けていたスバルの肩を掴むと、
慌ててこの場を後にした。
あんなんに関わったらあたしの人生お先真っ暗よ、関わらないのが懸命懸命。
そう、あたしはもう既に関わっているなどということを知らなかったのだ。
・・・あの、悪魔のようなふざけた部隊と。





「・・・おっかしいなぁ、ここのはずなんだけど」
「ティーアー、まだ着かないのぉ?
遅刻しちゃうよぉ」
「う、うっさいわね、指定された場所はここでやっぱりあっているはずなのよ。
でも、それらしい建物なんて・・・どこにも・・・」
「まぁ、見渡す限り一面海だからねー。
六課の建物があれば絶対分かるよ・・・ってことでさ、やっぱりその地図が間違ってるんじゃないの?」
「・・・はぁ。
認めたくないけど、そうとしか考えられないか」

腕時計で時間を確認しつつも、先ほどから手に持っていたせいで少しヘタれてしまった書類を見る。
集合時間は現在5分前、場所は間違いなく湾岸地区のこの住所。
ここに機動六課の事務所があるはずなんだけど・・・視界の端から端まで海ばかりで、
それこそ探すまでもない。
あたしはいきなりのトラブルに、はぁ、とため息を吐いてから何となしに空を見上げてみた。

ジャバーーーーーンっ!!!!

突然の大音響に思わず耳を押さえる。
事態を確認しようと、びっくりして咄嗟に閉じた瞳を何とかこじ開けると大きな影が映った。
そのまま思わず目を見開いてしまったあたしの視界には・・・

「な・・・」

海上に垂直に着水した巨大な機影。
権威の象徴を表すかのような白とワンポイントの黒といったカラーリングに包んだ鋼鉄の船。
普通の水上を走る船が停泊するための港をかねたこの場所にはひどく場違いなものが、
しかし当然であるかのようにあたしたちの視界のど真ん中に存在していた。

「きょ、巨大空中戦艦・・・!?」
「うっわー、すごいねー」

まさか戦艦用ドック以外の場所でこんな馬鹿げた台詞を、言葉にする日が来ようとは思わなかった。
そして、その船はそのまま・・・

「え?」
「あれ?」

あ、あたしたちの方へ近づいてくるーーーーっ!!?

どがああああああああっ!!!

「うっそーーーーーっ!?」
「おかあさーーーーーんっ!?」

そのまま、み、港に、突っ込んできたーーーーっ!!

かつんかつん、と頭にぶつかるかつて港だった場所の小さな残骸と、
津波のように押し寄せた海水のせいでポタポタと水滴がこぼれる髪の毛先を気にすることも出来ず、
あたしはただ呆然とその船を見つめていた。

・・・ぶつっ

同じようにスバルも何も言えずに呆けているのを確認したところで、艦のマイクがONになった。

「あーあー、テステスマイクテスー。
マイクのテスト中〜。
こほん。
そこにいるティアナ・ランスター二等陸士にスバル・ナカジマ二等陸士。
迎えに来たんでいますぐ艦に入りなさーい。
着岸したところに搭乗口あるからなー」

マイクは大音量で、この区画の人たちにこの事件の犯人がまるで
あたしたちであるかのような印象を植え付ける台詞を一方的に吐いてきた。
あたしは肩をがっくりと落として、先ほどは何故か気付かなかった

『遊撃戦艦機動六課隊舎!文句のある奴は死』

とデカデカと赤のペンキで塗りたくられたかつて教科書で見た記憶のある大型艦、
次元空間航空艦船『アースラ』へとノロノロと歩いていくのだった。
・・・いっそ殺して。





「アップルジャーーーーーック!!」

あたしたちが艦内に入ると同時に、先ほどの女性と同じ声が艦内スピーカーを通して高らかと響く。
えっと、アップルジャックってことは・・・非常警報!?

「ティ、ティア?
これって、警報だよね?
ど、どうしよう?」
「・・・分からないけど、とにかく誰かに部隊長へ取り付いでもらわないと」

ただ、非常事態宣言が出されたせいか、先ほどから何人かあたしたちの横を通り抜けているのだが、
みな我先にと走りぬけていくばかりで全く状況が掴めない。
ええい、何という新人に厳しい職場だ!

「ちょっと、ソコの貴方っ!」

このまま通り行く人たちをただ眺めていても拉致があかないと思ったあたしは、
取りあえず次にこちらの横を走りぬけようとした人物の肩を掴む。
引き止められた制服の上に白衣を羽織った女性の足が止まる。
・・・白衣?

「あら、どうしたの・・・って、見たこと無い顔ですね〜?
・・・ああ!
あなたたちが今日ウチに来たストライカーさんね!
えぇっと、ティアナ・ランスターさんに、スバル・ナカジマさん。
待ってたのよ、さあ、一緒に行きましょ!」

こちらが握っていたはずの腕をいつの間にかほどいていた女性は、
逆にあたしとスバルの腕をがっしりと掴んで歩き出す。
ええと、ど、どうなっているの?
あたしたちは事態を把握できないまま、その女性にずるずると廊下を引き摺られていく。
見た目はすごく細い、綺麗な金髪の20代そこそこといった女性が、
顔色一つ変えずにあたしたちを引っ張る力の持ち主だとは到底思えやしない。
災害救助部隊にいたからこそ、人を引き摺る大変さは良く分かっているんだけど。
一体この人、何者よっ!?
ダメだダメだ、色々なことが起こりすぎて頭がパニックになっている、まずは状況を確認しないとっ!

「あ、あのっ!?」
「喋ると危ないわよ」
「へっ?」

彼女から指摘を受けると同時に、廊下ががくん、と揺れた。
そしてそのまま、微妙な振動を続ける地面に違和感を覚える。
・・・これって?

「も、もしかして飛んでいるんですか!?」
「もちろん、遊撃戦艦機動六課の名は伊達じゃないのよ!」
「そうなんですか、すごいんですね〜」

女性を挟んだ逆側で同じように引っ張られているのだろう、
スバルのお気楽な台詞にげんなりとしながらも、ようやく合点が言った。
そっか、当然飛ぶわよね、戦艦だもの・・・。
あたしはもう色々と諦めた気分になりながら、
色々と割り切ることにしてその女性について足を動かし始めた。
この先に行ったが最後もう戻れないんだろうなぁ、そんな風に思いながら。





「・・・随分とたくさんの人がいるわね?」
「うわー、ホントだ。
えーと、いち、にぃ、さん、・・・この船のスタッフ全員集まっているのかな?」
「あのねぇ、そんなわけないでしょ?
ブリッジから人がいなくなったら通信に運転とか、色々と困るでしょうに」

会議室らしき部屋まであたしたちを引っ張ってきた女性は、
そのままこちらを残していつの間にかどこかに消えていた。
ただ、集合場所はここであっているようで、きょろきょろと辺りを見渡すと
何十人もの管理局の制服に身を包んだ人たちがここで待機している。
だが、肝心の隊長格がまだ出てきていないようで、ちょっとした雑談くらいなら出来そうだった。
そのため、ちょっとだけスバルと現在の状況を確認し合っているわけだが・・・。
・・・全然実りがない会話だわ。

「いや、全員集まってもらってるで!!」
「へ?」
「わっ!?」

私の台詞に応えるかのような声が響く。
良く通る、まるで指導者として生まれてきたかのような胸を打つ声、
あるいは声優のように聞き取りやすい声だった。
あたしとスバル、それからその場にいるほかの人たちが一斉に目を向けると、
そこには凄い目立つ一団が立っていた。
管理局のやぼったい制服を着た先ほどの声の女性、八神二佐と思われる人物の他に、
白いバリアジャケットを纏ったツインテールの女性、
広報誌で見たことのある高町一等空尉がその右に
対照的な黒いバリアジャケットを纏った女性、
同じく写真などでよく拝見するテスタロッサ執務官が左に立ち、
さらに持っている雰囲気だけで一流だと分かりそうな方々が3人、
見た目で言うと侍っぽいのと、看護師っぽいのと堕天使っぽいの・・・それから犬がいる。
つ、使い魔かな・・・。
そして敢えて見ないようにしていたけど、ゴメン限界。
何か小さいのが浮いてる。
何よ、あの小さいの?
人形?

「ティア、あの女の人。
さっきあたしたちを連れてきてくれた・・・」
「・・・あ」

犬とか小さいのに気を取られて気が付かなかったが、
先ほど看護師っぽいという感想を抱いた緑色のバリアジャケットを着込んだ女性は、
さきほどあたしたちを連れてきてくれた人である。

・・・わざわざあの一瞬で着替えにいったのか。

と言うか普通制服だろ、目立ちたがり屋か。
ぞろぞろと、管理局の制服を着た女性を先頭にこちらへと歩いてくる集団。
その瞬間、会議室の雰囲気がピリッとした、規律のある物に変わる。
・・・だが、あたしはどうもまだ変な違和感を持っていた。
あの顔。
あの背丈。
あの声。
何処かで聞いたような・・・?
あたしが頭を捻っていると、その女性はこの会議室のちょうど真中、
全員が見渡せる位置まで来て足を止めた。

「機動六課課長、そしてこの遊撃戦艦機動六課の部隊長にして艦長、八神はやてです。
平和と法の守護者、時空管理局の部隊として・・・」

ん?
えっと、もしかしてこれ、部隊創設の挨拶だろうか。
そう言えば貰った書類にも、あたしたちが到着の後、部隊創設式とか書いてあったっけ。
・・・創設式への集合のためにアップルジャックするなよ。
あたしは思わずため息を吐きそうになるが、慌てて口元に手を持っていって何とか堪える。
どこまでやる気があるのかは疑わしいとは言え、曲がりなりにも式典なんだ。
そんなふざけた態度じゃあ・・・

ドガアアアッ!!

「うわたたっ?」

凄まじい衝撃が会議室を襲った。
先ほどの離陸の際にあった衝撃よりもかなり大きな揺れのせいで、
あたしだけでなくスバルもたたらを踏んでいるし、
事務方の人たちの中には転んでしまった人も何人もいる。
ただ、前方の隊長格と思しき面々はさすがと言うべきか、身じろぎ一つしていないが。
まるで何かにぶつかったような衝撃・・・あれ?

「先ほど全員って仰ってましたけど・・・操舵手も、もしかして集合させてますか?」

何気なく呟いたあたしの一言で、部隊長のこめかみに汗が浮かんだ。
彼女は救いを求めるように、右側の白い女性を見つめるが、さっと目を逸らされてしまう。
今度は左側の黒い女性に目を向けるが、困ったような笑顔で返される。

「・・・まぁ、何事にも犠牲はつきものやしな。
よし、バレないうちに進路変えるで。
その後、フライトレコーダーを偽装してやな」
「・・・はぁ」

さすがにこの場面ではため息をついても良いだろう。
・・・って言うか逃げる気バリバリですか。

『八神二佐――――――っ!!!!』

きっと呆れているのはあたしだけではなかったのだろう。
誰もが沈黙を保っていたこの場で、唐突に通信ウィンドウが開く。
そこに映っているのは・・・ヒゲ面の偉そうなごっついおっさん。
あ、そうそう、思い出した。
訓練校の卒業式で偉そうに演説してたレジアス中将。
・・・めちゃくちゃ大物だ。

『いきなり何しとんだ、この大バカ者っ!!
キサマ、どうしても隊舎は戦艦が良いなどと駄々をこねた挙句、いきなりこれかっ!!
建設途中の高層ビルに激突しておるぞっ!!
幸い休工期間だったから死傷者こそでんようだが、そういう問題でもないっ!!!』

額に青筋立てて怒り狂うおっさんを前に八神部隊長は恐縮して・・・ねぇよ。
どうでも良さそうな顔で、

「はいはい、分かってます、すいませんでした」

などと聞き流しながら、
オペレーターやら何やらブリッジスタッフに配置に戻るように指示を出している。
侍っぽいのと、看護師っぽいのと犬が数人を引き連れてぞろぞろと会議室を後にする。
それにしても実質地上トップに対してすごい度胸ね、あの部隊長・・・。

『人の話を聞かんかっ!
これだから野蛮な地球人などを佐官にするのは反対だったんだ・・・。
全く、まともな家族もいなければ後ろ盾もないっ!!
何であんな狸娘がっ・・・!!!』

「・・・ぁあん?」

その瞬間、部隊長の顔色が変わった。
今までただ苦笑を浮かべながらも何もしなかった高町一等空尉とテスタロッサ執務官が
慌てたように八神部隊長に駆け寄る。
何事かひそひそと話しているようだが、こちらまでは聞こえない。
ただ、どうやらあの様子を窺うに八神部隊長を宥めているのは間違いない。

・・・って言うか、あのー、レジアス中将が放っておかれているんで余計にご立腹のようですよ?

あたしは無論、飛び火して今後のステップアップに影響されてしまうのは困る。
気付かれないように何とかやり過ごそうと必死である。
だが、そんなものは無意味だったようだ。

「主砲、発砲準備!!」

・・・は?
あたしは思わず目を点にして驚く。
スバルも私の横で同じような目をしている。
ペラペラの二次元親父のレジアス中将は、画面の向こうで顔を真っ青に染めてびくついていた。

「えええっ!?
はやて、主砲使うのっ!?
一昨日それ使って謹慎したばかりだよっ!!」
「大丈夫や!
今日の主砲は、はやて砲やなくてなのは砲や!!
なのはちゃん、ゴースタンバイっ!!」
「・・・うへぇ」

何だか隊長3人で盛り上がっているなぁ。
・・・あの、あたし今日早退していいですか?
この後、怖い予想しか出来ないもんで。

「ふふふ、昨日アレだけ説教くらったあげく、今日もこんな理不尽な説教やからな。
しかも私の家族を馬鹿にするなんて、逆鱗に触れたことを後悔するがええで。
管理局、テメーは私を怒らせたっ!!」
「あ、これはダメだね。
フェイトちゃん、わたし行ってくるね〜」
『・・・お、おい、まさか、冗談だろ?』

八神部隊長、理不尽な説教じゃないですよ、怖いから進言しませんけど。
スバル、あんたも走り去る高町一等空尉を止めようかどうしようかなんてオタオタしてないで、
もう黙って見てた方が良いわよ。
それからレジアス中将、冗談じゃないと思います。
南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。
せめて安らかにお眠りください。

「ハンマーコックっ!!」

ブリッジに既に着いたのであろうスタッフたちが部隊長の指示に従い、
戦艦の主砲を発射するための発射孔を開ける。
・・・こういうときには仕事速いのねっ!!

「てぇえええええええええ!!!」
「・・・スターライトブレイカー!!」
『のぉおおおおおおおおおおっ!!!』

部隊長の叫びと、
離れた場所から聞こえる高町一等空尉による『主砲』の音が、
そして画面の向こうからはおっさんの野太い悲鳴が響き渡る。

『ザーーーーーーーーッ』

あ、砂嵐になった。
って言うか、本気で当てたよこの人たち!!!
ほ、本局大丈夫かなぁ・・・。

「言うまでもないが・・・フィクションだ・・・」
「その通りです。
非殺傷設定なんで、魔力ダメージだけですっ!!」

今まで一言も喋ってなかったくせに、
唐突に誰かに向かってフォローを入れる堕天使っぽいのと小さいの。
うん、そうね、これはフィクションよね。
きっと何をしても誰も怪我もしないギャグ空間なのよね、うん。

『はやてちゃーん、本局より文字通信です。
レジアス中将を始め、凄まじい量のクレームが届いていますが・・・』
「バカめ、そう返信するんや!!」
『分かりました、機動六課より返信。
[バカめ]
どうぞ。
わわわっ、さらに凄まじい勢いでメールがぁ!!』

通信士をしていたらしい看護士っぽい人がメールの海で溺れたかのような悲鳴をあげる。
そんな返信したら当たり前だ。
そう思いつつもこの場は何とかして関わらずにいきたいと思っていたあたしが必死につっ込みを堪えていると、スバルが突然声を上げる。

「ああっ、そうだよ、ティア!
八神部隊長って、昨日本局の前で会ったあの女性だよ!!」
「・・・あ、言われて見れば確かに。
そうなんだ・・・、もうあたしの人生お先真っ暗なんだ・・・ハハハ・・・」
「ティ、ティアあああああああっ!?」

がくり、とショックで倒れ付すあたしを何とか抱えてくれるスバル。
ううん、スバル、もういいのよ。
ほら、兄さんもあたしはよく頑張ったって褒めてくれるわ、ね、もうそっちに行っても・・・

「ティアが居なくなったら、誰がこの部隊につっ込みをいれるんだよぉーーーーっ!!」
「そっちかい!!!」

ばし、とスバルの胸につっ込みを入れる。
・・・泣いていいですか。





「さて、気ぃ取り直して再開するで」

管理局への報復を終えると、何事もなかったかのように部隊長が宣言した。
あたしたち以外のメンバーは皆慣れたものなのか、
全く騒ぐことも無く彼女の言葉に従って整列をしなおす。

・・・いや、誰か疑問を発しようよ。

そんなことを思いながらも口には出せないあたしってば、チキン。

「私のこととか部隊についてはさっき話した通りや。
さて、次は隊長陣の紹介やな。
もう皆知ってるやろうけど、フォワード隊は2隊に分かれとる。
そのうちの一つスターズ分隊は今はちょっと外してるけど、高町なのは一等空尉が隊長や。
ランクはS+、空戦のスペシャリストやね。
ライトニング分隊はこっちの、フェイト・テスタロッサ執務官に隊長をしてもらっとる。
ランクは同じくS+、彼女は独自に動いてもらうこともあるからそのつもりでな」

部隊長の声に従って、テスタロッサ隊長がしっかりと頭を下げる。
・・・あ、この人は結構まともそう。
いや、さっきのアレを止めなかった時点で油断は出来ないけど。

「ああ、そうそう。
機動六課には体長2名のほかに、
リインフォース・スターズ分隊副隊長、
シグナム・ライトニング分隊副隊長、
それに私こと八神はやて二等陸佐と、計5名のオーバーS保持者がおるからな。
戦力的には名実ともに管理局最強やから、大船に乗ったつもりで大丈夫や。
ちなみに各部隊のランク制限は改訂させたんで、リミッターなんてみみっちいものもない!
全く問題あらへん!!」

そう言ってニヤリと悪そうな笑みを浮かべる八神部隊長を、
あたしはもう乾いた笑顔で見つめるしかなかった。
・・・ランクSが・・・5人・・・。
そっか、あの侍っぽいのと堕天使っぽいのもランクSかぁ・・・。
確かに雰囲気あるもんなぁ、
と勝手なことを思うあたしを他所に隊長は他のメンバーを一人ずつ紹介していく。
驚くポイントはあの小さい人形みたいなのが部隊長補佐で何と軍曹だというところと、
それからこの部隊のメンバーがひたすら若い、ということだろうか。
あ、今あたしとスバルが呼ばれた。
ペコリ、と一応頭を下げておく。
スバルもあたしの動きを見て、慌てたようにペコペコと周りに頭を下げる。
・・・微妙にみっともない。

「・・・といったところがメンバーやな。
私が選んだ、管理局でも最高のメンバーたちや。
余すところなく、全員がライトスタッフやから、みんな、よろしく頼むな」

そう言って八神部隊長が最後に頭を下げる。
・・・何だかんだと問題はありそうだが、根はいい人なんじゃないだろうか。
だって部隊に所属する人たちを全員覚えるなんて結構大変だ。
あたしはこの部隊長を少し見直して・・・ん?

突如、会議室の電気が落ちた。

「そしてっ!
これが一番大事な・・・っ」

電気が落ちるとほぼ同時に、部屋の上方から映写機が出てきた。
はて、何だろう?
あたしがこのタイミングで紹介するべき人物について考えていると、部隊長の嬉々とした声が響く。

「私の愛しの兄ちゃんやっ♪」

・・・世界が停止した。



・・・世界は再び動き出す。

「「はぁっ!?」」

あたしとスバルのすっとんきょうな声が響く。
だが他のスタッフたちは皆分かっていたのか何なのか、
呆れたような、微笑ましいような苦笑を浮かべるばかりである。
映写機からは隠し撮りとしか思えない角度で何処かの個室型オフィスの様子が映し出されていた。
机に向かってPCを操作している白衣の男性は、年のころは20代の半ば過ぎぐらいだろうか。
恐らくこのカメラの存在など知らずにいるのだろう。
あーあ、こんな衆目に晒されて可哀想に。
あたしは名も知らぬその人にちょっとだけ同情を覚える。

「兄ちゃんはなぁ・・・」

先ほどまでより確実に1オクターブ上がった声で目にハートマークを浮かべながら、
惚気だかなんだかを語りだす部隊長。

・・・めちゃうぜぇ。

そんな私の心が伝わったのか、今も映ったままの画面に動きがあった。

「・・・誰か来たみたい」

思わずぽつり、と呟いてしまった。
というかこれ、リアルタイムなのね・・・。
その部屋に入ってきたのは金髪の髪を隙なくセットしている、
目鼻立ちの整った何処か勝気そうな印象を与える美人さんだった。
年は・・・あたしよりも少し上、部隊長と同じくらいだろうか。
その女性はコーヒーとサンドイッチが乗ったお盆を載せたまま、
機嫌良さそうな、あるいはうきうきとした嬉しそうな表情を浮かべて部屋の中に入っていく。
・・・えーと、もしかして、部隊長のお兄様の『いい人』でしょうか。

「・・・アリサだ」

ポツリ、と声を漏らしたテスタロッサ隊長の声が聞こえる。
あ、お知り合いでしたか。
それならまだ安心安心。

「・・・音声も拾ってみようか。
ちょっと気になるし」

そしていつの間にか音も無く会議室に戻ってきていた高町隊長が画面をちょいちょい、と操作する。
ちょっとだけ顔がにやけているのが気になります。

『お、おはよう先生。
今日は朝早く来ているはずだから、朝ごはんはまだでしょ?
しょ、しょうがないから、あたしが作ってきてあげたわよ。
・・・べ、別に気にしなくていいわよっ。
授業の途中で空腹で倒れられでもしたらあたしが困るんだから、仕方なくだもんっ!』

「ツンデレだねぇ〜」
「そうだね、相変わらずだ」
「・・・っ」

にやにやとした笑顔でデバガメする高町隊長と、
遠慮しながらも興味深そうに画面を見つめるテスタロッサ隊長はともかく、
八神部隊長が頭を俯かせているのがとても怖いです。
応対している男性の声は角度の関係か声の大きさかで聞くことは出来ないが、
それが逆に盗み聞きをしているという背徳感を煽ってドキドキとしてしまう。
見られていることなど気付きもしない画面の中の女性は、
何とも嬉しそうな顔をかすかに紅色に染めながら、手に持つお盆を男性の机の脇に置こうとする。
正直、これでもあたしは年頃の乙女である。

つまり!
こう言った甘酸っぱいイベントは大好物である。
顔も名前も知らない人だから、何も気にせず見れるし。

だからだろうか、バタン、とドアがもう一度開き、
次の女性が顔を出したのを見たあたしは思わずコブシを握り締めてしまった。

『アーニーキー、今日は朝ごはん食べずに出かけたから、おにぎり作ってきてやったぞー。
いやぁ、下でアニキの同僚にも挨拶したんだけどさ、
あたしみたいな可愛い嫁さんもらって羨ましいって散々言われ・・・って、何でアリサが居んだよ』
『・・・あたしはここの学生だし、先生の授業にも出席しているし。
と、当然先生のお手伝いもするわよっ!
ヴィータこそ部外者なんだからダメでしょ?』
『家族だから、アニキの世話をすんのは当然だ!!』
『言葉は正しく使わないとダメね。
妹でしょう、ヴィータは。
教授の奥さん面されると教授にロリコンとかいらぬレッテルが貼られちゃうから止めなさいよ。
その先生もきっと内心滅茶苦茶微笑ましく思ってるわよっ!!』
『おめーこそアニキが学生に手を出しているみたいに見られんだろ?
もしくはスポンサーが手心をくわえているように見えるかもしれないぜ、お嬢さまだし。
どっちにしろ百害あって一利なしだから出入りすんな、しっしっ』

・・・うわ、修羅場だ。
うわーうわー。
かなり背の小さな、可愛らしいという形容がぴったりな赤毛の女の子が、
手にランチボックスを持ったまま、手にお盆を持った女の子とガルルル、といがみ合う。

『っていうか、おめーは研究室は別だろーが。
所属先の教授を世話してやれよ』
『・・・うっ!?
べ、別にいいじゃない、先生はウチの社の研究員でもあるわけだし』
『よくねー。
変な噂がたったらアニキが困るだろ?』
『どっちがお腹か背中が分からないくらいの幼児体系のヴィータが出入りしている方が問題よっ!
せめて140cmになってから出直しなさいっ!』
『言いやがったなっ!
あたしはアニキのせいで人間にされちまったんだ!
アニキはあたしに対して責任があるんだよっ!』
『こっちだって10年前、助けてもらってからずっと先生に恩返ししていくって決めてるのっ!!』
『と言うか、これでも3センチは身長伸びたんだぞっ!!』
『あたしは30センチは伸びたわよっ!!』

ぎゃーぎゃーと言い争いを始めた2人を身を乗り出すようにして見つめてしまう。
わくわく。
てかてか。
他人の色恋の争いって何だか興味が湧くのよねぇ〜。
だが、残念と言っていいのか良かったと言っていいのか、
男性が2人に近づいてぽんぽん、と彼女たちの頭を軽く叩くと、
むーむーと唸りながらも彼女たちは借りてきた猫のように大人しくなった。

・・・初心だなぁ。

あたしはそんな感想を抱き微笑ましい気持ちになったが、そうでないお方もいたらしい。
その人物は唐突に言い放った。

「もうやめた!
管理局辞める!!
機動六課も解散する!!
地球に帰る!!!
帰って兄ちゃんのお嫁さんになるーーーっ!!!!
世界の幸せより女の幸せやーーーーーっ!!!!!」

じたばたと両腕を振り回しながら八神部隊長がいきなりの解散宣言である。
さすがにコレには驚いたのか、
先ほどまでむしろ煽っていた高町隊長にテスタロッサ隊長が慌ててフォローに入る。
・・・あーうん、いきなり解散って言われても・・・ねぇ。

「・・・ねぇ、ティア、この部隊って大丈夫かな」
「今さらそれ言うの!?」

あたしはそんな不安はもうとっくに通り越しているから大丈夫。
諦観とも言うが。



とにかく、あたしたちが次の配属先について何となく話している間に説得が終わったらしい。
しぶしぶ、と言った口調で八神部隊長はやる気なさそうな口調で続ける。

「今追っているレリック事件を終えたら、六課、というか私は大型休暇を取りますんでよろしゅう。
さて、フェイトちゃん。
犯人の予想は?」
「えっと、一応今挙がっている容疑者で一番可能性が高いのはジェイル・スカリエッティかな。
次元犯罪者として別件でも色々と手配中」
「そっか、それなら間違って逮捕してもかまわへんな」
「うん、逮捕状は片手じゃ足りないくらい取れるよ」
「じゃあソイツを取りあえず逮捕するで」

あっさりとそう言ってのけた八神部隊長に、テスタロッサ隊長がはぁ、とため息と吐く。

「はやてに掛かると私の長年の捜査が無駄になっちゃうよ、ずるいなぁ」
「逮捕できるだけの証拠集めはどっちにしろしなくっちゃいけないから必要や」

はて。
あたしやその他ここに集められたスタッフたちは放置なんですが、
・・・と思ったらみんないつの間にかいなくなっていた。
自分で仕事を探しに行ったのか、もう関わりたくないから逃げたのか・・・。
考えたくないや。

「いくで、リインフォース、リインフォースU!
ユニゾン!!」

部隊長の言葉と同時に堕天使っぽいのと小さな人形っぽいのが、
彼女の身体に吸い込まれるように消えていった。
・・・は?

「相変わらず滅茶苦茶だね〜」
「うん、3人ユニゾンなんて過去の記録にも全く残っていないらしいよ」

隊長たちの言葉によると、どうやらあのリインフォース副隊長とリインフォースU曹長は
八神部隊長のユニゾンデバイスでもあるらしい。
・・・何それ。
どんなチートだよ。
あたしがブーたれている間にユニゾンは完成したらしく、6対の漆黒の翼を持つ、
アホみたいな巨大な魔力を立っているだけで垂れ流している部隊長が、
続けて自分のデバイスを掲げる。

「BERG KAISER!
FORM ZWEI Flugel!!」

左右非対称の不恰好なデバイスが、部隊長の白い魔力によって欠損部分を補っていく。
元々の大きさの二倍にまで膨れ上がった魔杖が、
白銀の光を撒き散らしながら威風堂々と皇帝という名に恥じぬ壮言な一振りの神器と化す。

「すごぉ・・・」
「ホント・・・」

隣に立つスバルが呆然として呟くが、私もそうとしか言いようが無い。
それほどまでに、部隊長の魔力は規格外だった。

「alles Dimension Welt Gebiet Suche!!」

そして、彼女の言葉に従って、まるで世界が部隊長に平伏したが如く全てが白く染め上げられた。
・・・これって、もしかして探索魔法!?

「これじゃわたしたちも立つ瀬がないね」
「た、高町一等空尉?」
「はやて隊長はね、全次元世界を同時にエリアサーチしているんだよ。
その中で、たった一人のスカリエッティって言う人間を探してるんだ」
「・・・はぁ!?」
「す、すごいんですね・・・」

いつの間にかあたしたちの横に立っていた高町一等空尉の発言に、
あたしは思わず素で驚いてしまった。
つまりはアレか?
八神部隊長相手には世界中何処に居ても逃げられない、ってこと!?
大魔王か。

「・・・ど、どんだけ魔力持ちなんですか」
「うーん、管理局の基準で言うと・・・。
そうだね、Sランクの上の上の上の・・・うん、5Sってランクになるのかな?」
「信じられません・・・」
「すっごーい、あたし何十人分だろ・・・」

スバルはあんまり実感が湧いていないようだが、正直人間のレベルを軽く超えている。
それこそ神様とかそんなレベルに近い魔力なんじゃなかろうか。
それっぽい翼も生えてることだし。

・・・全く、これが才能の差ってわけ?

いい加減にしろ、って言いたくもなる。

「もちろん、二回もユニゾンしているし、それからあのデバイスでさらに魔力を水増ししてようやく、かな。
それにこんな大魔法を使っちゃうと、さすがのはやて隊長でももう弾切れだから、
その後のフォローはわたしたちがしっかりしなくっちゃいけないんだ」
「・・・なるほど。
ありがとうございます、何だか色々と吹っ切れそうです」
「どういたしまして」

だけど、あたしは高町一等空尉が続けた言葉に素直に納得して、感謝の言葉を伝える。
思い返してみると、ここまで才能の差があるともう嫉妬することですらバカバカしい。
そして一度こんなものを見てしまうと、それでも完全なんかじゃないってことが分かると、
今まであたしが拘ってきたことがひどく小さく思えてしまうのだ。
・・・ようはバカもハサミも魔道師も才能も使い方次第ってわけね。

「見つけたっ!!
なのはちゃん、今日2発目!!
もういっちょ主砲行くで!!!」
「了解!」
「フェイトは砲撃後、被疑者確保のために現場に直行!
思ったよりも近くや、座標も送るで!!」
「了解、・・・うん、はやての勘は正しかったみたいだね。
この世界にアジトがあるのなら、レリック事件にも関わっている可能性は高いよ」



・・・まぁ、この後のことは語るまでもない。
高町一等空尉からフルパワーで放たれた星を砕く魔砲はスカリエッティ一味のアジトを容赦なく粉砕。
強襲したテスタロッサ執務官は混乱した現場からあっさりとスカリエッティ本人を含む、
10名以上の関係者を逮捕してみせた。
それだけの話だ。
最後に、もうへばって動けない、魔力も完全に尽きたなどとのたまって、
無理矢理休暇申請をとらせていた八神部隊長が、
休暇が決まった瞬間、大急ぎで地球に転移していったことだけはお伝えする。





「・・・なにこの夢」

あたしは自室のベッドの中で目を覚ますとまず自分の頭が正常かどうかを疑った。
それから、一つため息を吐いてから呟いた。

「ま、こんな狂った世界の登場人物にはなりたくはないわね。
少なくてもあたしは」

もちろん、現実はそんな突拍子もない世界ではない。
いや、しかし今日に限って言えば・・・

「刺激的な一日になるんでしょうけどね」

Bランク昇格試験を受ける日だと言うのに何でこんな夢を、あたしはもう一度だけため息を吐いてから、
隣のベッドで平和そうに寝るソイツを腹いせに蹴っ飛ばしながら今日と言う一日を迎えたのである。




(魔法少女リリカルなのはStS×遊撃警艦パトベセル=魔法少女ブリーディングはやてStS 了)

(続かない)