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魔法少女リリカルなのは SS
『魔法少女ブリーディングはやて 第23話』


俺はこの場に立っている経緯の説明を終えると改めて周囲を見渡した。
教壇を挟んだ向こう側には、同じ制服を着たたくさんの子供達の姿が見える。
彼らは新任教師の俺を興味津々、といった様子で眺めている。
正確に言うと、俺だけではなくその隣に立った3人にも同様の視線がぶつかっていた。
視線だけではなく、ざわざわ、ひそひそと
隣り合う生徒たちが囁きあう言葉さえかすかに耳についてくる。
それを見ている3人が少し居心地が悪そうに身をよじる。
外から客観的に見たら俺だって騒ぎたくなるわい、と諦めのこもったため息を漏らした俺は、
騒ぐ生徒達を大人しくさせることを放棄して、俺から見て一番奥に立つフェイトに前に出るように促す。
彼女が一歩前へと出るとやはり皆気になってしょうがなかったのだろう。
一転して、しん、と場が静まり返った。

「フェイト・テスタロッサと言います。
えと、初めてのことばかりで戸惑ってます。
よろしくお願いします」

ふわふわとした絹糸のような金髪をいつものツインテールにしたフェイトがペコリと頭を下げると、
パチパチという拍手の音とともにざわめきが起こる。
全く以って当然なのだが、日本人離れした西洋人形のように整った顔立ちのフェイトは
かなりのインパクトを教室に与えているようだ。
クラスメイトたちのジロジロとした不躾な視線に萎縮したのか、
少しおどおどとした様子を見せるフェイトではあったが、
座る生徒たちの中からなのはの姿に気が付くと心底嬉しそうな笑顔をのぞかせた。
あ、男子が数人真っ赤な顔をしてる。
破壊力抜群ですね。

「八神ヴィータだ。
あたしはお前たちよりはしっかりしているつもりだ。
困ったことがあったら何でも相談してくれ」

続けて一歩前に出たのはヴィータである。
目を見張るほど鮮やかな赤色の髪を三つ編みにした彼女が、
しっかりと胸を張ってバリバリ上から目線の挨拶をすると、
パチパチという拍手の音とともに女子陣からキャーという黄色い悲鳴が響く。
まぁ、彼女のことを何も知らない人が見る限りでは、
小さくて可愛らしい女の子が精一杯背伸びをしているようにしか見えず、それはそれは愛らしい。
ただ、ヴィータの『睨んでない』視線の鋭さのせいで、
気の弱そうな子が何人か既にビビって涙目を浮かべてさえいる。
小学生にしては眼光厳しすぎだろう。
だが、その小さな体躯と視線の鋭さのギャップが堪らない生徒もいるようだ。
・・・言うまでもなく、先ほど黄色い声をあげた方々だ。

「八神はやてです。
見ての通りなんですけど、足が不自由でご迷惑を掛けるかもしれません。
夏休み明けまでにはリハビリは終わっていると思いますので、よろしくお願いします」

最後に、こちらに身体を預けていたはやてが一歩俺から離れて、
ちょっと不恰好な感じではあったが自分だけの力でしっかりと頭を下げる。
パチパチという拍手の音とともにどうしても避けられないのだろう、
同情のような視線を向けられてしまっているが、
それでも彼女を侮っているような雰囲気は見受けられない。
俺はなのは達だけでなくこのクラスは全員しっかりしてる良い子たちばかりだなぁ、と舌を巻く。
というか本当に小学校かよココ、と首を捻りたくなってしまう。

うむ、俺が小学生の頃はもっとこう・・・バカだったはずだ。


「さて、全員の挨拶がすんだな。
えぇっと彼女たちの席は・・・」
「先生、こっちです!」

3人がそれぞれ紹介を終えたので、早速席に着いてもらおうと空き席を探して
キョロキョロと視線をさまよわせていると、俺を誘導するかのような声が響いた。
声のした方に目線を向けると、大きく手をあげているアリサの姿と、
その隣に誰の姿もないぽっかりとした空席が見える。
同時になのはとすずかちゃんも自分の隣が空いていると教えてくれる。
これは確実に狙ってこの配置にしてるな、・・・とは言え別に問題はない、
どころかはやてはやはりまだ少々周囲に迷惑をかけてしまうだろうから、
隣は頼りになって優しい子の方が良いだろうから願ったり適ったりとも言える。

「お、先に席を空けておいてくれたのか。
じゃあ、はやてはすずかちゃんの隣、ヴィータはアリサの隣だな。
それからフェイトはなのはの隣・・・でいいかな」
「ええよ」
「おう」
「はい」

先ほどの自己紹介ではやて達は俺の親戚という説明をしてあるので、
俺と彼女たちの親しげな様子にも皆が動揺する気配はなかった。

・・・それにしても、なのはたちもつい普段通りの呼び方をしてしまったけど、大丈夫そうだな。

俺は近づいてきたヴィータにはやてを任せると、
なのはに小さく手を振るフェイトにも移動するように促す。

「あたしに掴まってくれ」
「ありがとな、ヴィータ」

ヴィータの肩を借りながら移動するはやてを見るクラスメイトたちが、
彼女の事情を自分たちの目で確認してさすがに少し騒がしくなった。
一声掛けておこうかとも思ったが、上から押さえつけるやり方はあまり好まないので自重しておく。
どうせはやての足が悪いのはこれからの生活でイヤと言うほど分かるだろうからな。
それにヴィータが甲斐甲斐しくはやての世話をするのを見て、
先ほど彼女の眼差しの鋭さに脅えていた生徒たちが、
見た目ほど怖い女の子じゃないんだろうと安堵の息を漏らしている。
ただ、それでも複雑そうな事情を持つ少女や単純に見た目や雰囲気が怖そうな少女には
声は掛けにくいのだろう。
皆の好奇心に満ちた視線は自然にフェイトに集中する。
なのはの元へ移動していたフェイトの背中が、びくり、と一度大きく震えた。

「皆も転校生たちに聞きたいことはたくさんあるだろうし、
突然担任が変わってしまったので不安に思うことも多いだろう。
だからこのまま一時限目はホームルームにしようと思う」

俺がこの浮ついた雰囲気の中で授業をするのは難しいだろうと提案すると、
案の定一気に教室中が喧騒に包まれた。
あちらこちらでざわめきが起こり、そこかしこでひそひそとナイショ話をしている生徒たちの姿があった。
落ち着くまで少し待った方が良いかな、と俺が彼らの顔をぐるりと見回していると、

ドンっ!

大きな音を立てて机を叩く音が聞こえたせいで、皆の視線が集中する。
俺はもちろん、クラスメイトたちの視線も全て一身に集めた少女は、にこり、と笑った。
可愛い笑顔ではあるが、何処か本能をくすぐるような凄みを感じる少女の表情に、
皆のお喋りがぴたりと止まる。
さらさらとした金髪はまるで本物の黄金のような光沢を幻視させ、
少し痛んだ髪は完全にその艶を取り戻したようだった。
勝気な印象を与えるつり目がちだがぱっちりとした瞳は、少女の活力溢れる可愛らしさを強調する。
口元に浮かべた不敵な笑みが、自分の信念としっかりとした意思を持った大人びた雰囲気を形作る。
フェイトに負けず劣らず整った顔立ちなのに、
そんなエネルギー溢れる所作がフランクな印象を与える少女の名は、言うまでもない。

「アリサ、ありがとうな」

俺が礼を言うと、彼女の耳にも届いたのだろう。
胸元で小さくピースサインを作る彼女が、もういちどにっこりと極上の笑みを浮かべる。
彼女の作ってくれた機会を無駄にはしたくなかったので、
俺は彼女に向けて感謝を込めて笑顔を浮かべてから、改めてクラス全体に向き直った。






質問攻めの一時間はあっと言う間に過ぎていった。
ちなみに回答者はフェイト4割、はやて3割、ヴィータ2割、そして俺1割である。
もっとフェイトに質問が集中するかとも思ったが、そこそこ分散した印象があった。
そして、一応は相互理解を高められたと思われる時間が終わり、
休み時間を挟んで俺が再び教室に戻ってくると、
教室の真中辺りの席ではフェイトがナルトのような目をしながら首までぐるぐると回転させていた。
長いツインテールも彼女に合わせてぶんぶんと回転しているせいで
周囲の人に迷惑を与えていそうな気もするし、実際なのはが苦笑いを浮かべていたが、
取りあえず今は余裕の無さそうなフェイトは放置しておくことにする。

その少し後ろの席でははやてがもう打ち解けたのか、
数人の女子に囲まれてにこやかな笑顔で何事かをおしゃべりしていた。
すずかちゃんが一冊の本をはやてに薦めているようだが、
それを見た他の少女たちも文庫サイズの本を差し出していた。
どうやら早速文芸仲間が出来たらしい。

窓際に視線を転じるとヴィータが対照的にぐてり、とあごを机の上に載せて顔を突っ伏していた。
隣に座るアリサが何事か口にすると、ヴィータが指をちっちっちっ、と器用に振ってみせる。
その動作にむっとした表情を浮かべたアリサが顔を上げたヴィータと手のひらを握り締めあうと、
唐突に腕相撲を2人は始める。
・・・だが、勝負はあっさりとついた。
たちまちのうちに、ばちん、と結構な音が響いてアリサの手の甲が机の上に落ちた。
声にならない悲鳴をあげる負け犬アリサを勝者であるヴィータがけらけらと笑っている。

うぅむ、子供は仲良くなるのが早い。

そんな爺むさい感想を覚えながら、俺は両手に抱えていた紙の束をどさり、と教壇の上に落とす。
俺が入ってきたことに目敏く気付いた幾人かの生徒が2名ほどこちらに近寄ってきた。

「せんせぃ、これなぁに?」
「おしえてー?」

駆け寄ってきたポニーテールに髪を結んだたれ目の少女と、
おかっぱな糸目がちの少女が声をかけてくれる。
どうせすぐに種晴らしをするのだから構わないだろうと、俺が口を開こうとした瞬間、

『キンコーンカーンコーン♪』

チャイムの音が耳に届いた。
俺はすぐに分かるさ、と手短に彼女たちの質問を打ち切って席に戻す。
素直に言うことを聞いて戻ってくれた少女たちが席についたのを確認してからクラス中を見渡すと、
皆が既に自分の席に着いていた。
俺は彼らに向き直って、にこやかに宣言する。

「これからテストをするぞー」

ざわり、と教室に動揺が走った。
さすがにコレには反応するか。

「これは皆の学力を見るためのものだから、
気楽に解いてくれればいいし成績にももちろん反映しない。
それから問題数がすごい多いから絶対に全問は終わらないけれど、そこも気にしなくていいぞ。
とにかく分かる問題だけやってみてくれ」

そう言って十ページ以上ある冊子を持ち上げて、彼らに向けてひらひらと振ってみせる。
俺の話を聞いて余計にざわざわと教室が騒がしくなってきた。
ううむ、100点が取れるのが当たり前なテストばっかりやってきた小学生には
ショッキングな話だろうか。

「いいか、一問1点で全100点。
最初にはボーナス問題が5問あって、そこはちゃんと書いてくれれば必ず1点あげるからな。
その後は算数、国語、理科、社会とそのほかの全教科の問題がランダムにあって、
問いが進むたびに難しくなっていく。
前から順番にやっていった方が良いと思う。
ただし、分からなくても気にせずどんどん次の問題に移っていってくれ」

続けて注意点を口頭で言いながら冊子を配り始めると、
皆、すぐにしんと静まり返ってテストに集中する体勢を作ってくれる。
おおぅ、本当に小学生とは思えぬな。
コイツら、落ち着きすぎだよ。
俺がそんなことを考えていると、全員にプリントが行渡ったらしい。
こちらにテストを開始していいのか、という無言の訴えが伝わってきた。


「よし、皆受け取ったな。
それじゃあ始めてくれ」

そう俺が宣言したと同時にテストを開いた生徒たちの顔が、ぴしり、と驚愕に固まった。
ボーナス問題に戸惑っているのだろう雰囲気がアリアリと伝わってくる。
ちなみに内容は、

問.1 じこしょうかいをしなさい
問.2 自分の良いところと悪いところをあげなさい
問.3 クラスの良いところと悪いところをあげなさい
問.4 どうすればじゅぎょうが楽しくなるのかをあなたの考えを書きなさい
問.5 先生に何をしてほしいのかを書きなさい

こんな感じである。
大したことではないが小学生向けか、と聞かれると首を捻らざるをえない内容である。
その後は極端に簡単な足し算や漢字など小学校1年生向けぐらいからの問題から始まって、
20問目ぐらいから40問目程度までが3年生の内容。
その後は50問目を超えると中学生向けの内容になって60問目を超えると高校生向け。
80問目を超えると大学生向けになり、そしてラスト問題ともなると博士号レベルの問題になってしまう。

・・・俺がやっても多分45分の制限時間じゃ60点を越えられればイイトコだろう。

平均的な小学校3年生とは比べ物にならないほどレベルの高いこのクラスでも、
平均点は40点を超えないだろうと踏んでいる。
単純に時間制限的な問題でそれ以上はムリだろう。
そんな風に俺が自分で作成した妙ちくりんなテストのことを考えながら生徒達の顔を見渡すと、
皆戸惑いながらも文句も言わずに解き始めたようである。
ざっと彼らの様子を眺めてみる。

はやてとヴィータ、フェイトの3人は普通の学校のテストですら受けたことがないので、
このテストの異常性に気付くことも無く問題と向かいあっているようだ。
学力で言うとはやてはともかく、ヴィータとフェイトの2人は理数のレベルはかなり高いはずだ。
しかし国語と社会がともにネックになってしまうだろう。
さて、何点ぐらい取れるんだろうなあの2人は。
なのはも素直に一問目から解き始めたようであるが、
ほとんど悩むこともなくスラスラと書き進めていく。
うぅむ、マルチタスクが得意なせいか客観性を問う問題には強いのかなぁ。
だが持ち前の好奇心のせいか、
時折ペラペラと冊子のページを捲って先の問題を見てみたりしていたりする。
あ、最後の方のページで一瞬固まった。
すずかちゃんはテストというよりただの質問に近い最初の5問は飛ばすことにしたらしく、
6問目以降からスタートしたようである。
当然だがすらすらと問題を解いていっている彼女は機転が利くような印象を受ける。
効率的に物事を進めようとするタイプなのかもしれない。
それから、アリサはと言うと・・・俺は彼女の方に向けた顔に苦笑を浮かべた。

「全く・・・」

口の中だけで、集中している生徒たちには聞こえないように呟く。
彼女は何を思ったのか、あるいはトチ狂ったのか最後の問題を解いていた。
いや、正確に言うと、『解こうと頭を悩ましていた』。
解けるわけないんだけどなぁ、と思いつつも自分で作った問題を思い出す。

問.100
『C40の直鎖を持つ化合物に適切な官能基を組み合わせ特定疾患を治療するための配列を組め。
ただし、特定疾患、および出来上がった化合物の種類は問わず、
既知の組み合わせでも構わないことにする。
また、化合物の作用機序とそれを証明するための臨床試験のプロトコルを作れ』

うん、これ一問で45分なんてオーバーするわ。
ちなみにこれも他の問題と差別無く1点。
自分で作っておいて滅茶苦茶だと思ってしまうが、
どうせ最後まで辿りつく奴なんて居ないと考えた俺の
ちょっとしたいたずら心が炸裂してしまった問題である。
アリサもすぐに諦めて前のページへともど・・・らない。
彼女は何を血迷ったのか、じぃっとその問題を睨み付けるように見つめていた。

「そりゃムリだって」

つい漏れてしまった声を慌てて押さえ込む。
どうやら俺の呟きが聞こえた生徒はいなかったようだが、
これはムキになってしまう生徒もいることを失念した俺のミスだろう。
心の閻魔帳を開き、アリサ・バニングスの項に
『負けず嫌い』
と記しておく。
・・・まぁ、問題文中にもヒントはほとんどないんだ。
そのうち諦めるだろう。
実際、最後から解こうとした捻くれ者、もとい学力に自信のあった者は他にもいたようだが、
皆すぐに問題の難易度を確認して諦めていたのだ。
アリサだって、まさか45分も同じ問題に拘り続けたりはしないはずだ。


『キーンコーンカーンコーン』

授業終了のチャイムが聞こえると、俺は立ち上がって告げる。

「はい、終了〜。
冊子を閉じて前に回してくださーい」

当然だが、誰一人最後までやりきった猛者は存在しなかった。
全員がげっそりとした憔悴した表情で、肩を落として黙々と閉じた冊子を前に送っていく。
小学校のテストでこんなテスト内容が出されるとは誰も予想していなかったのだろう。
はやて達3人も予想云々以前に初めてのテストを相手にして、
当然だが皆同様の疲れきった表情を浮かべている。
それから、窓際に突っ伏す女生徒の姿があった。

「・・・玉砕か」

俺は両腕を投げ出して机の上に倒れ伏す、
ピクリとも動かないアリサの燃え尽きた姿を見て、ぽつりと声に出して呟いた。
こちらの呟きが聞こえたかのように、
ビクリ、と一度大きく震えた彼女が今度はふるふると小刻みに肩を震わせる。
アリサの後ろに座る生徒が、冊子を抱えながら戸惑っている。
ああ、あんな状態じゃ前に回せないもんな。

「・・・はぁぁあああ」

それでも後ろの雰囲気は伝わっていたのか、
アリサはのそのそと身体を起こして後ろの子から冊子をひったくるように受け取った。
そして、目端にじんわりと大粒の涙を浮かべたまま、彼女の周りだけ
余計に加重がかかっているようなしんどそうな動きでさらに前の子へとテストをまわした。

・・・もしかしてあの一問を頑張って解こうとし続けたのかもな。

再び心の閻魔帳を開いた俺は、アリサ・バニングスの項に
『負けず嫌い、その上視野狭窄の傾向アリ』
と記す。
俺は帰ってくる答案を楽しみに見つめながら、
これからの生活はどうなるのだろうと考えるのだった。





さて、余談であるが昼休みに俺は一人弁当を摘まみながら帰ってきたテストの採点をしていた。
午後イチで返そうと思っているのだから、この時間にやるしかないのは自明の理である。

「八神はやて・・・36点」

苦手科目が少ないのか、コンスタントに得点を稼いではいるものの、
ケアレスミスも多くテストの内容から言うと少し点数は振るわなかった。
しかし、はやてにとってはこれが多分人生初テストだから、
それを加味するとここまで出来ただけで立派なものだろうと思う。
先生は嬉しく思いますよ。

「八神ヴィータ・・・64点」

さすがと言うか何と言うか、小学校レベルと同じにしてはいけないということだろう。
本人の背格好を見ていると疑わしいが、学力で言えば高校生も超えて、
大学生ぐらいでも通用しそうな内容の答案だった。
ただ良くも悪くも一直線なのか、
途中途中にある彼女でも分からない問題を飛ばすことをしなかったせいでこの点数である。
うーん、古語とか来るとさすがのヴィータも解けないようだな。
むしろ精通していた方が怖いか。

「フェイト・テスタロッサ・・・52点」

フェイトも算数と理科は小学校レベルをあっさりと超えていた。
小学校入学が決まった段階で簡単な国語と社会の勉強は教えていたが、
それでもまだまだその二教科は小学校3年生レベルにも達していない。
・・・それなのにこの点数とは・・・っていうか普通に微積分解いてやがるしな。

「高町なのは・・・40点」

なのはは理数が得意、とは言ってもさすがにフェイトやヴィータほど精通しているわけではないようだ。
それでも小学3年生レベルは超越しているが、まぁxとか普通に使う前述の2人に対して、
鶴亀算とか使ってくれるとちょっと安心したりする。
それからなのはの場合はヴィータと一緒で
分からなくても早々に諦めたりはせずに頑張って解こうとする傾向があるようで、
そのせいで余計な時間がかかってしまったのが大きいのだろう。

「月村すずか・・・50点」

すずかちゃんは、チート小学生であるヴィータとフェイトを除くと堂々クラストップの成績である。
彼女の場合は問題の見極めが見事なのだろう。
解ける問題でも時間の掛かりそうなモノは後回しにして、
ひたすら素早く解ける問題をクリアしていった印象を受ける。
特に社会科目は問題が後半になっても新聞にでも目を通していれば結構解ける問題が多いので、
そこを正確に射抜いていった格好である。
今回のテストの攻略法を見事に実践したという意味で、
ヴィータやフェイト以上に良く出来ました、という評価だ。

「アリサ・バニングス・・・1点」

そして最後の生徒は何の因果か、クラス最低点となってしまったアリサである。
とは言え、正直に言おう。
驚いた。
結局最後の問題は知識が無ければ解けない問題なのでアリサも途中で諦めたらしく、
その前の99問目にあった数学の問題にトライしていたようである。
当然だが計算が容易になるいくつかの定理を小学生が知っているわけがないため、
かなり回りくどいことをしているようだが、それでも答えを導きだした時点でそんなものは関係ない。
正解は正解、1点は1点だ。
こんなフザケタ問題を解いても1点か、
そう思うと自分で作った問題ながらなんて無茶苦茶だと思わず笑ってしまった。
うん、すずかちゃんとは別に、このテストに一番果敢に立ち向かったという意味で、
アリサにも良くできましたという評価を送りたい。

・・・と言うかこの1点は、負けず嫌いの勝利だろう。

このテストを俺とアリサの勝負だとするならば、俺の負けだ。
俺はくっくっ、と笑いながら今日3度目となる彼女の評価の書き換えを行う。

『負けず嫌い、その上視野狭窄の傾向アリ、ただし侮っては負けるので注意せよ』

負けてしまった以上は、
午後の授業で捻くれたテストをしてしまったことを最初に謝らないといけないな、
そんな風に俺は考えながら俺は弁当を食べる作業に専念するのであった。

(続く)