本文へジャンプ
main information Side Story link

魔法少女リリカルなのは SS
『魔法少女ブリーディングはやて 第12話』


そろそろPT事件もクライマックス、だからこそ日常シーンも必要だろう。
そんな訳で俺は我が家の家主と食いしん坊騎士が待つ居間へと昼食を運んでいる真っ最中である。

「出来たぞー」

声を掛けながら居間へ入ると、テレビを見ていた2人の視線がこちらへと向いた。
ヴィータは可愛らしい鼻をひくひくとさせながら涎を垂らしそうなだらしの無い顔だったが、
はやては大皿に盛り付けられた料理を見て、軽くため息を零してから苦言を呈す。

「兄ちゃん、だから盛り付けもちゃんとせなダメやって」
「そうか?
あたしはこんなに旨そうな匂いだったら、全然気になんねーぞ?」
「ほら見ぃ。
ヴィータがガサツな子になってもうたら、兄ちゃんの責任や」
「確かに。
ヴィータがこれ以上野生児のようになってはご近所様に申し訳がたたんな。
気をつけるようにするよ」
「・・・流石にそこまで言われる筋合いはねーぞ」

ぷぅ、と頬を膨らまして怒っているというポーズを取るヴィータの前に
続けて持ってきた次の焼き魚の皿を置くと、ぴくりと彼女は身体を震わせる。
次にヴィータの目の前のお茶碗を取ってご飯を盛ってやると立ち上った湯気が食欲を煽ったのか、
ごくりと喉が鳴った。
最後に芳醇な香りをたっぷりと閉じ込めた味噌汁を入れたお椀をそっとヴィータの目の前へ。

「・・・くそぉ。
あ、ああああたしは騎士だ。
兵糧攻めなんて、な、ななななんてことねー」
「ヴィータは可愛えなぁ」

ガタガタと何かの末期患者のように震えるヴィータを、
ほえほえとした笑顔で見つめるはやては満足そうに呟いた。

「・・・言いすぎた、ヴィータはちゃんと可愛い女の子だって。
俺が悪かったよ、食べてくれ」
「そやな、ヴィータはとっても可愛い女の子や」
「べ、別に褒めても何もでねーぞ」

ぷい、と顔を逸らしてしまったヴィータの横で、
優しげな笑顔を浮かべたはやてが食卓に向けて両手を合わせる。

「さ、わたしもうお腹ぺこぺこや。
早くご飯にしないと、お腹と背中がくっ付きそう。
ヴィータ、兄ちゃん、いただきます」
「おう、そうだな。
熱いうちに食べてくれ、いただきます」
「・・・あーーっ!?
何先に食べてやがんだぁ!
あたしはまだアニキたちを許してねーぞ!!」

すぐに顔をこちらに向けたヴィータが俺に向かって箸の先を向ける。
その箸の先はぷるぷると上下に震えて今にもテーブル上の料理に振り下ろされそうだったりするので、
ぶっちゃけあんまり怖くない。

「・・・箸をこちらに向けるな。
行儀が悪いぞ」
「あ、このきんぴらおいしいで。
兄ちゃん、後でレシピ教えてな?」
「お、そうか?
ちょっとはやてたちには辛いかな、とも思ったんだが」
「そやなぁ、ヴィータには辛いかもなぁ?」
「・・・む、あたしは辛いもんなんて別に平気だ」
「そか?
ほな、あーん」
「あーん、・・・もぐもぐもぐ。
うん、ちょっと辛いけど、あたしも大丈夫だぜ・・・って」

箸をからんからん、と落として呆然した顔で頭を抱えるヴィータだったが、

「あーもう、ちくしょーーーっ!
あたしの負けだ負けっ!!
いただきますっ!!!」

神速で箸を掴みなおすと、勢いよくご飯をかっ込み始める。
よっぽど我慢が堪えたのか、普段の2割増しの速度だ。
そのままの勢いを保ったまま、不器用な箸づかいで焼き魚の身を解そうとしたが、
ぼろぼろと身が崩れてしまう。

「う〜〜〜」
「ほれ、貸してみろ。
俺も上手くはないが、ヴィータよりはマシだ」
「・・・ん、頼む」

素直に渡してくれたヴィータの皿から魚の身を取り分けていく。
作業を終えてお皿を返してやると、ヴィータの横からきらきらとした視線が俺にぶつかってきた。

「・・・もしかしてはやても?」
「ええな、ヴィータ、ええな〜」
「・・・貸しなさい」
「はーいっ♪」

見るとはやての魚は綺麗に食べられていたようだったが、
まぁ、人にほぐしてもらうのはある意味格別な気分になるものだ。
俺ははやてから魚を受け取ってほぐし始めると、すぐにむず痒い気持ちを覚える。

「・・・はやてさん?」
「なんや?」

にっこりと笑顔で返してくれたはやては、両手の肘をテーブルについてじっとこちらを見つめていた。

「・・・少々、やりづらいのですが」
「気にせんでええよ?」
「・・・了解」

ちらちらとはやての方に眼をやりながら手を動かすと、再びにっこり。
ちなみにヴィータさんはご飯を食べるのに一生懸命でこちらのことには気付く素振りもみせない。
・・・多分ご飯以外に眼がいくのは『お代わり』の声が掛かるときだろう。

「・・・ほれ、終わったぞ」
「ふふっ、兄ちゃんは不器用さんやなぁ」

俺から魚の皿を受け取ったはやてが滅茶苦茶笑顔でそんなことを言ってくる。
確かに器用ではないが、あんなに見つめられてなければもうちょいきれいにほぐせるわい。
俺は声に出さずに呟くと、とは言えあそこまで喜んでもらえるとやった甲斐もあるか、
と自分を納得させるように考えた後、ようやく己の皿に取り掛かるのだった。



ずずず・・・
昼食を終えた俺たちは居間に留まったまま、食後の一服を嗜んでいた。
はやてとヴィータの視線は先ほども見ていたテレビに向っている。
最近流行りなのかドキュメンタリー風の昼ドラだった。
これから戦争に行くという男と、それを見送る女。

・・・これは真昼間からやるべき番組なのだろうか。

俺は首をひねって考えるが、まぁ、浮気云々なドロドロな話よりは幾分健全だろう。
そう思いながら、俺もお茶を啜りながらぼんやりとテレビ画面に視線を向ける。
どうやら今日のお話はクライマックスのようで、別れの日の、
駅のプラットホームで男と女が口づけを交わすと同時にエンディングが流れ始めた。

「・・・なぁ、なんでアイツらあんなことしてんだ?」

そんな最中、思いも寄らぬ疑問が降ってわいて出た。
どうやら全く意味が分からなかったらしい。
質問が飛んできた方向を見やると、本気で首を傾げているヴィータの姿があった。

「・・・そやなぁ」

はやてもそんなことを言われても、なんと答えれば良いのか悩んでいるようだった。
だが、すぐにぽん、と手を打つとヴィータに向けて答えを出す。

「おまじないみたいなもんやな。
無事にあの男の人が帰ってこれるように願をかけとるんちゃうかな?」
「ふーん、そういうもんなのか」

あまり自信の無さそうなはやての回答だったが、ヴィータはさして気にとめた様子も見せずに呟き、
自身の湯のみに残っていたお茶を飲み干す。
俺も彼女にならって一気に湯のみを傾けると、時計に眼を向けた。
・・・ちょうど良い頃合だった。

「さて、俺はそろそろ出かけてくるよ。
帰りは夕方ぐらいになるかな?」
「そか。
・・・兄ちゃん、ちゃんと全部終わったら話聞かせてもらうで?」
「・・・んー。
頑張れよ、アニキ」

はやての信頼が篭った声と、何かを考え込んだかのようなヴィータの声を聞きながら、
俺は八神家を後にした。
・・・まずはジュエルシードを全部集めてしまわないとな。





「・・・こんにちは」

俺が待ち合わせ場所に選んだのは昨日の決戦の舞台、海鳴臨海公園だった。
昨日の舞台となった場所からはかなり離れた、公園の入り口にある案内板が待ち合わせ場所である。
俺が集合時刻より5分ほど早く辿り着いたときには、もう既に相手は待っていた。
近づいてきた俺に挨拶を交わしたなのはの口調は、どこか緊張したものであったため、
俺は首を傾げてしまう。

「待たせちゃったな。
こんにちは、なのは」
「はい、少し聞きたいことがあって、それで居ても立ってもいられなかったんです」

相変わらず子供らしからぬ凛とした視線で俺を見つめる彼女は、
一度大きく深呼吸してから口を開いた。

「あの、やっぱり昨日みたいなのはとってもいけないことだと思います。
あんな風に病気にさせちゃうのはとっても・・・その、悪いことなんじゃないかって。
一歩間違えれば大惨事になるってご自分でも仰ってましたし・・・」

上背が圧倒的に高い俺を必死に見上げながら、それでも真摯な口調でなのはは俺に訴えてきた。
・・・確かにバイオハザードに対する影響はしっかり取っていたとは言え、やり過ぎだったかもな。
もしかしたら、俺自身、セイの本当の力を最大限に発揮してみたいとか、
いつかは元の世界に帰るんだから少々の無茶も大丈夫とか、
どこか軽く考えていたところがあったのではないだろうか。
確かに万が一、いや、実際には10億が1ぐらいだが、事故が起こらないとも限らない。
それに何より、・・・小学生の女の子に見せるもんじゃあなかった。

「・・・そうだな。
スマン、怖い思いをさせちゃったもんな。
悪いことをした」
「いえ、そんな、頭を下げなくても・・・」

俺がゆっくりと頭を下げると今度はなのはがおろおろ、と慌てだす。
この辺はまだ年相応と言った感じで、微笑ましさが先立った。

「とにかく、もうああいう無差別的なことはしないよ。
約束する」
「そうですか・・・よかったです」
「ああ、前も言ったけど、昨日の件は上手くいった。
だからこのことはもう心配はしなくても大丈夫だ。
今後のことは、・・・まぁ、もしも俺が暴走してたら止めてくれれば助かる」
「・・・暴走って、にゃはは」

俺の発言がおかしかったのか、ようやくなのはの顔から笑顔が見れた。
それから彼女は佇まいを正し、ペコリと頭を下げた。

「すいません、ムリを言ってしまって。
・・・でもどうしても気になるんです」
「いや、俺たち科学者はどうも自分の善悪の観点が100%正しいと思い込みやすい人種のようでな。
そうやって間違っているときはそう言ってもらえた方が気が楽だ」
「そういうもんなんですか?」
「んー、まぁ多かれ少なかれそういうもんだ」
「はぁ・・・」

頭の上にでっかい疑問符を浮かべたような、
納得のいかない顔をしたなのはを苦笑を浮かべながら見つめる。
まぁ、こういったものは現場に居なければよく分からないだろう。

「ユーノはそう言った感覚分からないか?
学者みたいなもんなんだろ?」
「へっ?
そうですね、僕の周りの人たちは・・・ははは・・・確かに仰るとおりです」
「そうなんだ!?」

どこか乾いた笑いで俺の質問に答えるユーノの言葉をぎょっとした顔で見るなのは。
・・・何を思い出したのかはまぁ、大筋とは関係ないし、スルーといこう。

「さて、協力はしていただけるってことでいいのか?」
「あ、はい。
少しでも味方は多い方が心強いですし、それに少しでも早く解決したいんです!」
「僕も問題ありません」

俺は2人の言葉に満足げに頷き、それからニヤリ、と人の悪い笑みを浮かべる。

「さて、ではチートの時間の始まりだ。
今日でジュエルシードの探索を終えることにしよう」
「チート?」
「なんだろ?」

全く想像がつかないようで、首を捻る2人に種明かしをしてやる。

「簡単な話だよ。
俺は『待機状態の』ジュエルシードの波長を捜索できるし、なのはは広範囲のエリアサーチが出来る。
ユーノは魔力増幅でなのはをサポート。
俺はなのはのサーチに後乗りさせてもらって街全域からジュエルシードを探す」
「・・・ま、街全部っ!?」

驚いた様子でなのはが叫ぶ。
確かになのはの疑問通り、彼女一人の力では、
例えユーノのサポートがあったとしてもエリアサーチの広範囲使用は難しいだろう。
・・・何しろ俺は1m四方が限界だ。
俺の基準に合わせなくても、数十km四方なんてどんな無茶だ、と笑うしかない。
だが、忘れたか、なのは?
俺は、『チート』と言ったんだ。

「心配するな。
足りない魔力分はジュエルシードを解放させて補う。
制御はこちらに任せてもらえばよい」
「・・・はぁ」
「ま、案ずるより生むが易し、ってな。
後は結果をお楽しみに」

まだそれが本当に可能なのか疑っている様子のなのはと、俺の発言に驚愕しているユーノ。
2人のそれぞれの対応を見て、くすりと笑ってからセイを取り出す。

「さぁ始めよう。
なのはも準備を」
「あ、はいっ!
レイジングハートっ、セットアップ!!」

ペカッ、と光ったかと思うと一瞬のうちに早着替えをするなのは。
やっぱり見えない、残念。
・・・こほん、では気を取り直していきましょうか!!

「レイジングハート内ジュエルシード捕捉。
擬似リンカーコアに変換解放、・・・数3。
宿主の魔力値を15.8倍に補正」
「レイジングハートっ、探して!!」
『Area Search』
「ブーストっ!!」

・・・すげぇ。
世界に薄く広がっていく魔力の光は、街どころか、市、いや、県まで届く勢いか?
見渡す限りの世界がなのはの魔力によって覆われていく。
・・・補正の値が大き過ぎた、反省。

「にゃ、にゃにゃにゃにゃっ!?
ちょ、ちょっと力が大きすぎて制御がぁっ!?」
「・・・うそー」

レイジングハートに引っ張られるように、
ぐるぐると回転を始めたなのはが目を廻しながら悲鳴を上げる。
ちなみにユーノはぽかん、と広がり続けるサーチ領域を見つめている。

「にゃーーーーっ!?」

ついに耐えられなくなったのか、勢いあまって縦にごろごろと回転を始めてしまったなのはが、
公園にあった木にべちんとぶつかったため、ようやく魔力流が止まる。

「・・・きゅう」
「な、なのはーーーっ!?」
「大丈夫か?
まぁ、3つとも見つかったから、結果オーライだよな?」

なのはに大声で呼びかけながら駆け寄るユーノ、目を廻して倒れているなのは。
・・・犠牲は大きかったが、目的は果たせた、無問題!!





「お、あったあった」
「・・・んんぅ・・・あ、あれ?」

俺が一個目の収穫を済ましたと同時に、
ベンチに横になっていたなのはも都合よく眼を覚ましたようだ。
そちらを振り向くと、
きょろきょろと首を巡らして辺りを確認するなのはをユーノが心配そうに見つめていた。

「なのは、大丈夫?」
「ユーノ君、あれ、わたし一体・・・?」
「ああ、ちょっと力を増幅し過ぎてな。
レイジングハートを暴走させちゃったんだ。
・・・すまんな」
「い、いえっ!
わたしこと不甲斐なくてごめんなさいっ!
あの、それで・・・」

言葉を重ねようとするなのはを遮るように、
今さっき見つけたジュエルシードをなのはに向けて投げてやる。

「わっ!?
・・・わわっ!」
「1個目は結構近くにあったよ。
封印しておいてくれ」
「・・・レイジングハート、お願い」
『Capture』

俺が投げたジュエルシードをお手玉して遊んでいたなのはだったが、
なんとかキャッチすると、ほっと息をついてからレイジングハートに封印する。

「・・・それにしても凄いですね。
今までの苦労が嘘みたい」
「そーだなぁ。
残りの2つも場所はもう分かっている。
歩いていける距離だから、なのはがもう歩けるなら行こうと思うんだが」
「は、はいっ!
大丈夫ですっ!」

ユーノの言葉に同意してからなのはに体調を確認すると、
彼女はベンチからばっ、と立ち上がり、むん、と握りこぶしをこちらに向けた。
俺はそんな微笑ましい勇ましさに一つ頷きを返すと、早速公園の出口に向けて歩き出す。

「わっ、待ってくださいっ!」
「おう、歩いて10分も掛からない距離に2つあるみたいだな。
楽勝だ」

ぱたぱたと走り寄るなのはを立ち止まり待ってやってから、声をかける。
・・・それにしてもホントに楽勝だな。
初めからなのはと協力してたらほとんど瞬間的に終わってたんじゃね?
そんな自分の考えの浅さを嘆いてしまう。


「・・・あの、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
「何だ?」

俺たちが次のジュエルシードが落ちている場所へと向かって歩いていると、俺の肩にそそくさと飛び乗ってきたユーノが声をかけてきた。

「・・・あなたはジュエルシードをええと、5個持っているんですよね?
それから先ほど、確かにジュエルシードを制御出来る所を見させていただきました。
・・・それで聞きたいんですが、あなたはジュエルシードを何に使おうとしているんですか?」
「気になるか?」
「・・・はい、気にならない、と言えば嘘になります」

俺はユーノの真剣な口調に気付いて、彼の疑問に答えてやることにした。

「・・・4個は別のロストロギアの封印に使っている。
その4個がないとそのロストロギアは暴走しちまうからな、もう外せないんだ」
「・・・そうですか、では残りの1個は?」
「さっきのなのはと似たような感じだ。
俺の魔力値は低くてな、魔力を底上げするのに使っている。
・・・でだ、それを聞いてどうするつもりだ?」

素直に答えてくれるとは思っていなかったのだろう、ユーノからは戸惑いの気配が漏れてきた。
ちょっとの間、彼は頭を悩ましていたようだったが、やがて決心したかのように呟いた。

「・・・信じます。
僕はこの件が全部片付いたら、管理局に事の次第を報告に行こうと思っていますが、
そこでは貴方が獲得したものは・・・ばら撒かれた際に壊れてしまったと、そう記録しておきます」
「・・・いいのか?」
「はい。
代わりと言っては何ですが、なのはを気にかけてもらっても良いですか?
・・・僕が居なくなったあと、彼女が、魔法とどう付き合っていくべきなのか、
それを彼女自身が答えを出すのを見てあげてほしいんです」
「・・・それは荷が重いな。
だがまぁ、気にかけるぐらいなら・・・な」
「それで大丈夫です。
なのはなら、きちんと自分で考えられると思いますから」

ユーノはそう自信ありげに答える。
俺は2人の信頼関係を羨ましく思いながらも、
それも関わってしまった俺の責務なのだろうと考えていた。

「あー、あったっ!
にゃーっ、すごいねっ!!」

俺たちの話し合いはなのはの叫びによって妨げられた。
とは言え言いたいことは言い終えていたのだから、丁度良いタイミングだとも言える。
先行していた彼女は、街路樹の間に挟まっていたジュエルシードを発見したようで、
興奮した様子でぶんぶんと指を振って、見て見て、と騒いでいた。

「なのは、封印封印っ」

ユーノが俺の肩から飛び降りてなのはの前に駆け出していく。

「あ、そだね。
レイジングハートっ!」
『Capture』
「さて、これであとは最後の1個だ」

俺の声に従って、なのはとユーノがぱたぱたとこちらに駆けてくる。
まぁ、ジュエルシード集めは順調だが・・・さて、それで全てが解決するわけじゃない。
もうそろそろ、その後のことを考えないといけないよな。


次の目的地へと歩き始めた俺の横に、なのはが並んだ。
彼女もジュエルシードを集め終えた後を考えていたようで、
歩きながらも俺に向けて、自分の考えをぽつぽつと喋りかけてきた。

「・・・わたし、フェイトちゃんを助けてあげたいんです。
フェイトちゃんはとっても寂しそうな、悲しそうな顔をいつもしています。
それを支えてあげたい、分け合いたい、何とかしたい・・・」
「・・・何でだ?
それは彼女の都合だろ?
なのはが気にかけてやる必要はない」
「そうですね、でも理屈じゃないんです。
わたし、昔、といってもちょっと昔ぐらいなんですけど、
ずっとお家で一人でした。
一人は寂しくて、悲しくて、嫌なんです。
私が好きな子が、そんな嫌な気持ちで・・・」
「どうした?」
「・・・そうだ」

なのはは立ち止まり、晴れ晴れとした顔で、こちらを見つめた。
何かを吹っ切ったようで、俺は、彼女の本当の笑顔を始めて見た、そんな気分にさせられた。

「わたし、フェイトちゃんと友達になりたいんです。
だから、ちょっとぐらい図々しくても、お節介だと思われても、
フェイトちゃんのために、・・・ううん、わたしとフェイトちゃんのために、頑張りたいんです」

そう言った、彼女の顔は本当に綺麗で、俺はしばらくの間、呆、と見つめてしまっていた。
・・・全く、俺たち一般人とは、本当に輝きが違うな。
ここまで輝きが違うと、最早羨望も感じないぐらいだよ。

「だったらさ。
なのはにフェイトのことは任せる。
なのはなりのやり方で、フェイトにそれを教えてあげれば良い」
「私なり?
・・・はいっ、私なりのやり方で、話をしてみますっ!!」
「ああ、フェイトの後ろに居る奴は俺が何とかしてみせるさ」
「・・・後ろですか?
あの、それって・・・?」

なのはの疑問を手をかざして遮ってから、ゆっくりと住宅地の外れにある空き地に進入する。
最後の一個を草むらをかき分けて手に入れてから、なのはの方を振り向いた。

「ラスボスさ。
・・・さて、もう言ってもいい頃合だろう。
プレシア・テスタロッサという魔道師だ」
「なんでアナタがその名前をっ!?」

反応は思わぬところからやってきた。
空き地を挟んで道の反対側には、フェイトが立っていた。
恐らくなのはのエリアサーチを把握して様子を探りに来たのだろう。
それが思わぬ展開を始めていたために、我慢できずに出てきてしまったと言ったところだろうか。

「さてね・・・セイ」
『Absorb』
「・・・くっ!!」

誤魔化しの言葉を告げた俺に対して、展開したバルディッシュの切っ先を向けるフェイトの姿は、
俺たちの間を遮るようにふわりと舞い降りたなのはによって視界から消失した。

「フェイトちゃん、もうジュエルシードは全部集まったんだ。
・・・わたしは8個、フェイトちゃんは7個。
お互いに全部をかけて決闘しよう・・・いいかな?」

俺の視界に映っているなのはの背中は、かすかに震えていた。
それでも彼女は、はっきりとした口調で、自分の言葉で、彼女に言葉を投げかける。

「・・・分かった」

そして、フェイトの声も、しっかりと、なのはの意思に応えるかのような色合いがこもっていた。
最後の決戦が、始まる。

(続く)