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魔法少女リリカルなのは SS
『魔法少女ブリーディングはやて 第11話』


その日の夕方、沈みかけの真っ赤な太陽がまるで物語の終端を現すように、
海鳴臨海公園を柔らかな光で覆い尽くしていた。
真紅に染まる空の中、『3人』の魔法使いが対峙する。
1人は、真っ白なバリアジャケットに身を包んだ、あどけなさの残る顔つきの少女。
1人は、金髪をツインテールに結んだ髪型が特徴な、無表情に見える顔つきの少女。
そして、最後の1人は・・・。
真っ黒なバリアジャケットで全身を固めた、2人の魔法少女の戦いに真正面からぶつかり、
彼女たちのデバイスを見事に受け止めてみせた少年の姿だった。
3人から少し離れた場所には、モンスターのような狼とパチモノくさいフェレットの姿も見える。
誰もが突然の強力な闖入者に驚き、意識が完全に上空へと向っていた。
地面に立つちっぽけな俺なんかには、誰も気付きはしない。

・・・ここまで来て、俺はまだ悩んでいた。
俺が物語に介入するのが正しいかどうかなんてのは分かっちゃいない。
分かっちゃいないが、もう賽は投げちまった。
俺はポケットの中にある、既に空になったフラスコを指先で撫で付ける。
今さら引くことなんて出来やしない。

「まずは2人とも武器を引くんだ!」

なのはとフェイトに下に降りるよう促した少年が地面を見下ろした瞬間、ぎょっとした表情を浮かべた。

「いや、5人ともだ。
全員、武器を引いてもらおう。
そっちの使い魔とあっちのフェレット。
お前たちも俺から見える位置まで移動してもらう」

何故なら、全員を地面から見渡せる位置に、彼にとって想定外の人物が立っていたからだ。
俺の言葉に少年は顔を顰めてみせるが、瞬時に頭を切り換えたのか、
宙に浮かんだままデバイスをかざして、こちらを一瞥する。
・・・俺の言葉に従うつもりはないようだ。

「何だ、オマエは。
そのフザけた格好は僕を馬鹿にしているのか!?」
「・・・馬鹿に?
そんなつもりはない」

ちなみに俺の格好は適当なシャツとスラックスの上にバリアジャケットとは名ばかりの白衣を羽織り、
目深に被った帽子とサングラス、マスクで完全に素顔を隠した格好である。
・・・まぁ、監視阻害の魔法でも使えればいいんだが、
使えない俺はどこぞの通信士Aに顔を記録に残されたくないとしたら、
こんな手段をとるしかないわけで。

「・・・っ!
フザケルな!
所属を答えろ!!」
「・・・監視されているのにわざわざ素顔を晒す阿呆がいるか。
俺は地球圏文化保全管理組合の者だ。
そこの黒いの、オマエは時空管理局の人間だろう?
許可なく管理外世界に干渉されていることは禁止されているはずだが、
こちらには書類が届いていないぞ?」

出来るだけ、お役人然と淡々とした口調で喋ってやる。
さり気なくなのはとユーノの方へと視線を向けると、
事態の展開に着いていけないらしく眼を白黒とさせていた。
フェイトとアルフは、アイコンタクトを交わし、俺と管理局の少年のどちらに攻撃をしかけるべきか、
あるいは両方とも敵対すべきなのかを探っているようである。
そして、管理局の黒いのは・・・

「そんな組織は聞いたことなどない!
適当なことを言うんじゃないっ!!」
「そちらの事情は聞いていない。
事実として管理外世界で管理局を名乗る者が騒ぎを起こしている、そのことについて問うている」
「・・・くそっ!
・・・次元干渉に関わる犯罪がこの地で行われている可能性がある。
見逃すことは出来ない事態と判断した。
超法規的措置として、時空管理局・巡航L級8番艦アースラ、
およびクロノ・ハラオウン執務官が管理外世界に干渉させて頂く。
書類が必要だと言うならば後日改めて送らせよう」

少しの間激高していた少年だったが、
すぐに冷静さを取り戻してこちらの真意を探るかのような視線をぶつけてきた。
それもこの手の掛け合いにも慣れているのか、
テンプレ的な答えをすらすらとよどみ無く返してくれたおまけ付きだ。

「・・・次元犯罪?
何だそれは」
「・・・答える必要はない。
一世界の管理組織にどうこう言えることではないし、
何よりコトはこの世界のみに留まることでは・・・ごほっ・・・ない」

突如咳き込んだことに一瞬だけ訝しげな表情を浮かべた少年だが、
気にする必要も無いと判断したようだ。
そのまま、こちらに鋭い視線を送ってきた。
俺はそんな彼の態度に肩をすくめて、できる限りの皮肉を込めて言ってやる。

「まぁ、そちらの事情などさっきも言ったが聞いていない。
ここで重要なのは、
この地球圏では如何なる事情があろうとも管理局に関わってもらいたくないということだ。
お前たちの身勝手な都合のせいで、この世界から数少ない魔力適正者が拉致されているんだ。
我々は地球圏の遺伝子多様性を保護する観点から、決してお前たちの介入を認めない」
「な、何を言っている!?」
「とぼけなくて結構。
数十年以上昔からお前たちの手によって、
少なくても数十人単位で地球人が拉致されていることが判明している。
我々は彼ら被害者の親族たちによって組織させられたのが発端だ。
・・・あんたはグレアム家、という名前に心当たりはないか?」
「・・・なっ?」

今度こそ少年は驚愕に目を見開いた。
本当はその辺りどうなっているのか、などと言うことは知らないが、
どちらにしろあの少年が知るべき事実とは思えない。
突如、自分も知る人物の名が出され、さすがに咄嗟の対応が出来なかったようだ。

「だが、そんなこと・・ごほっげほっ」

反論をしようとした少年の口から咳が零れ、口上が遮られる。
自身の口を抑えた手を眺め、それでも何とか冷静さを取り戻そうとしていた彼だったが、
・・・最早、彼の劣勢は覆せない。

「・・・えと、その・・・危ない組織の方なんですか?」

眼を白黒とさせてばかりいたなのはだったが、さすがに場の不穏な空気に気がついたのか、
少年からゆっくりと離れ、彼に向けて杖を向けた。
フェイトはむしろ、彼の体調が急に悪くなってきたことをいぶかしんでいるようだ。
・・・さて、頃合だ。

「それからだ。
どうやら外の世界、
・・・特にミッドチルダの人間はこの世界の日和見菌の数種とすこぶる相性が悪いらしい。
こちらで活動するにあたり、ワクチン接種など対策はとってきたか?
どうやら体調が芳しくないようだが」
「そ、そんな話は・・・ごほごほっ!
く、くそっ・・・」

再び咳き込んだ彼は、自身の口を覆った手のひらを見つめた途端、
ここからですら分かるほど蒼白な顔色になる。
手を振った彼の指先から、かすかに赤いものが見えた。

「もう遅かったようだな。
・・・さっさと帰ってゆっくりと休んだ方がいい。
後遺症が残るぞ?」
「う・・・うるさっ・・・がはっ!
ごほっげほっ」

大声を出そうとして頭に血が上ったのか、勢い良く咳き込んだ彼の頭が上下にふらふらと揺れる。
そのまま瞬間的に窒息して意識を失ったのか、
彼の身体は地面へと重力に従って加速しながら落ちだした。

「あ、危ないっ!」
「バルディッシュ!」

なのはとフェイトが咄嗟に中空に展開した魔法陣により減速した彼は、地面にゆっくりと膝をついた。
そのまま、肩を震わせ、両手で自身を抱きしめるように震えながら地面に蹲る。
ぜいぜい、と言う途切れ途切れの声と、
がちがち、という歯が合わさる音が俺の耳まで届いたと思った瞬間、

「がはっ!?」

地面に向けて血を吐き出した。
そのまま意識を失ったのか、自ら作った血溜まりにゆっくりと倒れこんでいく。
だが、完全に倒れこむ前に、転移陣が彼の身体を包みこんだ。

「・・・逃げたか」

次の瞬間、俺の視線の先から彼の身体は消えていた。
・・・これで管理局は後手後手に廻ることになるだろう。
何しろ・・・

「バルディッシュ!!」

俺が気を抜く瞬間を狙っていたのだろう。
フェイトが空を駆けた。
なのはの横を素通りし、中空に浮かぶジュエルシードを確保しようとデバイスを伸ばす。

「ストップ!
下手に動き回るんじゃない!」

俺の言葉を聞く理由などあるわけもない。
フェイトはそのままデバイスに取り込もうと声を上げようと口を開き、

「キミも感染している可能性が高い!
早く治療をしないと発病するぞ!」

びくり、と先ほどの黒いのの姿を思い返したのか、彼女の身体が震えたが、
すぐに気を取り直したようで声を張り上げた。

「バルディッシュ!!」
『Capture』
「・・・封印完了。
アルフ、行くよ?」
「で、でも・・・フェイトぉ?」
「大丈夫」

フェイトはアルフの問いに根拠の無い簡潔な言葉を返すと、こちらに背を向ける。
・・・やばいな。
フェイトが保菌者になったまま結界外に出てしまったら一気にバイオハザードだ。
街中病人で溢れかえっちまう。

「だから、ちょっと待て!!
なのはっ!
フェイトを止めろっ!!」
「ふえぇっ!?
・・・あ、はいっ!」

コトの急展開に着いて行けなかったせいで蚊帳の外だったなのはだが、
俺の言葉に素直に従ってフェイトの目の前に立ち塞がった。

「良く分からないけど、ちょっと待って!
病気になっちゃったならきちんと診察してもらわないと・・・ん?
フェイトちゃんが感染しているかもってことは・・・もしかしてわたしも?
え・・・ええーーーーーっ!?」

フェイトに向けて説得の言葉を投げかけようとして、自分も感染している可能性に気付いたらしい。
突如仰天した表情で自分の腕や足、その他もろもろ全身をじろじろと凝視し始めたなのはは、
今にも泣き出しそうな様子だ。

「・・・あ、そうだね。
一緒にいたし・・・」
「にゃぁあああああっ!?」

なのは涙目。
可愛いなぁ・・・などと和んでいる場合ではないな。
彼女たちが発病する可能性は低いが、保菌者になっているだろうしな。
さっさと治療してあげることにしよう。

「・・・そのことについて説明するから降りてきてくれ。
使い魔たちもだ。
ちょっとお願いしたいこともある」





「・・・と言うわけで、Y型染色体を持たない女性は発病確立がかなり低いんだ。
それからさっきの子も死んだりはしない、ちょっと苦しい療養生活が1,2週間は続くが、
その後はけろりと治っちまう。
2人とも安心してくれ」

俺の話がひと段落つくと、未だ涙目だったなのはもようやく胸をなで下ろしたようだ。
それから何気なく気にしていたのだろう、フェイトもかすかに安堵の吐息を零した。
・・・それにしてもセイの力で作った新型バチルスは凶悪だったなぁ。
ただ、芽胞は作らず、人獣共通感染もない特別性だから残存性は滅茶苦茶低いんですよ?
一月で全滅するよう自死コードも仕込んでるし、どこぞのグリュナードのような事はしませんよー。

「・・・さて。
安心してもらったところでちょっとお願いだ。
そっちのお二人さん、次元空間にいる管理局の船にまだ監視されている可能性がある。
監視を妨害できるか?」
「あ・・・はい、やってみます」
「・・・なんであたしがそんなこと・・・」

素直に従ってくれるユーノと、ぶつくさと言うアルフが魔法を展開するのを見て、
ようやく俺は変装を解いた。
・・・既にアースラは野戦病院さながらに連鎖的に発症が起こっているだろうから、
こちらをモニタする余力があるとは思えないけど一応な。

「・・・ふぅ。
今朝ぶりだな、フェイト」
「・・・っ!?
あの、今朝はどうもありがとうございました」
「あーっ!
この前の変な人っ!!
・・・あれ?
そうであってますよね?」

俺に気付いたフェイトが軽くペコリと頭を下げてくれる。
なのはには変な人呼ばわりだが・・・まぁ、あの出会いでは仕方ない。

「取りあえずコレを飲んでくれないか?
ワクチンだ」

これを忘れてしまっては大惨事が起こる。
具体的にはバイオテロ犯で俺逮捕。
・・・うーん、独房で過ごす半生。

「・・・?」
「・・・えと」

だが2人とも訝しげな顔を浮かべるばかりで、
俺の手にあるソレをまじまじと見つめつつも受け取る仕草を見せてはくれない。
・・・はて、どうしたのだろう。

「・・・あの、大丈夫なんですかコレ?」
「うん、ちょっと怖いかも」
「・・・そうか?
まぁ確かに試験管に入っているし、
あまり見た目良くないかもしれないけど中身は飲むヨーグルトみたいなものだ。
味はまずくないはずだぞ」

俺の言葉に従って恐る恐るワクチンを受け取った2人が、
覚悟を決めた感じでシリコン栓を抜いてぐいっ、と中の液体を呷る。
・・・うーん、何というか知らない人から貰ったものをそう易々と食べたり飲んだりしてはいけませんよ。
そう注意してやりたくもなるが、
個人的には今回に関しては素直に受け取ってもらったほうが良いので気にしないことにする。

「・・・あの、そんなものを持っているということはもしかして。
この菌は自然のものではないんですか?」

2人の飲みっぷりに感心していると、ユーノが俺に話しかけてきた。

「ああ、俺が作った特別性の菌だ。
人間にしか感染しないし、空気感染するが感染できないとすぐに死滅する。
効果は先ほど見た通り喀血と高熱で体力にもよるが1〜2週間寝込む。
人から人への感染力は高く飛沫感染する。
恐らく彼が戻った船の中は今頃大惨事だろう、女性には発病しにくいけど0ってわけでもないし、
そもそも男性クルー全員倒れたらこちらに関与するどころじゃなくなるだろう。
・・・まぁ一度感染した人は再度の感染はないし、
菌自体にも仕込みがしてあるので1月もすれば全て自動的に死滅する。
必要以上に大事にはならないと・・・思いたいな」
「思いたい・・・って」

俺の説明を聞いて、起用に口をひくつかせるフェレットだったが、何かに思い当たったらしい。
恐る恐る、といった雰囲気でこちらに話しかけてきた。

「・・・あの、この病気って、人間に感染するんですよね?
例えば、変身魔法を使っている人にも感染しますか?」
「・・・するな。
そう言えばそうだったか」
「ぇええっ!?
あのっ、僕の分なんて・・・」

わたわたと慌てふためきながらも、こちらにびくびくとした視線を送ってくる。
・・・何ともS心をくすぐる視線だ。

「・・・さて、どうだったか・・・?」
「・・・うそぉ」

ガーン、と言った効果音を背中にしょったユーノだが、まぁあんまりイジメすぎても可哀想か。
そう思って懐に手を突っ込んだ俺が、新しいワクチンを取り出すよりも先に、
なのはがにっこりと笑いかけ、自分が飲んでいたワクチンを差し出した。

「ユーノ君、半分こしよう?」
「な、なのはぁ・・・ありがとぉ」
「ああ、冗談、冗談だから。
ちゃんと用意してあるから、ちゃんと自分の分を全部飲んでくれ。
万が一があっては大変だ」

俺は慌ててもう一本を取り出し、ユーノ用に準備していたストローを挿して彼に差し出した。
なのはも俺の慌てようにきちんと飲んだ方が良いと思ったのか、
ぐいっ、と残っていた分を一気に呷る。

「・・・ありがとうございます。
あの、アルフは大丈夫なんですか?」

こちらは飲み終えたのだろうか。
どうにかして試験管の中身を飲もうと格闘しているユーノを
手助けしているなのはにちらりと眼をやったフェイトは、
自身の使い魔の体調を心配してか、アルフのすぐ側で心配そうな表情を浮かべていた。

「ああ、使い魔は大丈夫。
それは俺が保証するよ」
「そうですか。
・・・では失礼します。
アルフ、行くよ?」
「あっ、フェイトっ!
待っておくれ!!」

マントを靡かせながら俺たちに背中を向けて立ち去ろうとする少女と、
その使い魔の背中に向けて声を上げる。

「喜んでもらえたかっ!?」
「・・・」

ピタリ、と彼女の足が止まる。
こちらを振り向くことはなく、ただ、
ぼそりと彼女が自分に言い聞かせるように呟いた言葉が耳に届いた。

「・・・もっと頑張らないと」

そのまま彼女たちは、夕闇の中に溶け込むように消えていく。
気付くと、この場には俺となのは達が残されているだけだった。





「・・・あの、ありがとうございました。
すいません、それで少し尋ねたいことがあるんですけど」

フェイトたちが立ち去ってからすぐに、ワクチンを飲み終えたユーノが俺の前に近づいてきた。
なのははフェイトが立ち去った方向を見つめている。
・・・何か思うところがあるのだろうか?
とにかく、ユーノは意を決した様子で、俺をまっすぐに見据えて尋ねてきた。

「・・・管理組合というのが本当にあるんでしょうか?
でしたらすいません、ジュエルシードをこの星にばら撒いてしまったのは僕が悪いんです。
なのはは、この世界の人間ですし、その・・・」
「ああ、もちろんあの話は出鱈目だ。
あの黒いのが発病するまでの時間稼ぎだよ」
「・・・ぇえ!?
それじゃあすぐにあの執務官が戻ってきてしまいますよっ!?」
「さっきも言ったとおり、彼らが現場に復帰できるまで一月はかかるだろうからな。
恐らく一度本部かどこかに撤退することになるだろうさ。
・・・その間には全部片がついているはずだ」
「え、えげつないですね」

眼を見開いて驚いているユーノに俺は肩をすくめてみせる。
あの黒いの相手にまともにやって俺が敵うわけがないし、搦め手を使っても相手の方が上手だろう。
となれば、相手には速やかに無力化してもらう必要があったんだがね。

「強力な魔法も権力もない人間が組織に対抗しようなんて大それたことを考えたんだ。
よっぽどのこと、それもなるべく自然現象と誤解されるようなことじゃないといけないしな。
・・・まぁ、ちょっと荒療治だったのは否定しない」
「ちょっとどころじゃ・・・っ!?」
「まぁ待て。
オマエだって現地人に協力してもらっていた、
どころか管理外世界の人間にデバイスを貸していたなんてバレたらやばいだろ?」
「・・・僕は罪は償います」

生真面目な口調で、しっかりとした声色で彼は言った。
・・・俺は未だフェイトが立ち去った方を見つめているなのはをちらり、
と見つめてから彼に言ってやった。

「彼女にもその罪を背負わせるつもりか?」
「・・・あっ!?」
「管理局と管理外世界の人間が関わってしまった場合の道は二つに一つ。
一つは魔法を失って記憶を奪われる、あるいはそれに準拠した対応。
もう一つは管理局の嘱託魔道師として生きる道だ。
・・・酷な話だとは思わないか?
彼女にそんな話をしたら嘱託魔道師として生きる、と言うに決まっている」
「・・・それは・・・。
でも、なのはの才能があれば、悪いことでは・・・」
「才能があるから彼女は平和な女の子としての道を捨て、軍人もどきとして生きていくのが良いって?
家族や周囲の人間を誤魔化しながらか?
・・・少なくても俺は感心しないな」
「・・・そうですね、貴方の言う通りだ」

ユーノは俺の言ったことにようやく思い当たったのだろう。
自分が如何に軽率な考えだったのか気付いたようで。
しょんぼりと頭を下げ、過去の自分の行動を悔いているようだった。

「あの、2人で何を話しているんですか?」
「ん?」
「にゃっ、にゃのはっ!?」

考え事は終了したのか、きょとんとしたなのはが俺たちの話に割り込んできた。
・・・ちなみにユーノは慌てすぎだ。
あれでは彼女に関係あることを喋ってました、とゲロっているようなものだ。

「いや、ちゃんと薬が効いたか確かめたかったから、元の姿に戻れって話をしていてな」
「・・・もとの姿?」
「ああ、そうだよな?」
「は、はい!?
・・・あ、ああ、そうなんだよ、なのは。
あ、あははははは・・・」
「ええと、もとの姿って・・・?」

動転しているユーノは首を捻っているなのはに気付くこともなく、言葉を重ねる。
恐らく言葉を途切れさせたらなのはに詰問されるとでも思っているのだろう。

「じゃあ、戻りますねっ!」

ユーノの身体が光輝き、ぐんぐんとその身体が大きくなり、やがて人の形をとっていく
リアクションが気になってなのはの方を見てみると、ぽかん、と口を開いて固まっていた。
・・・美少女台無しだな。

「なのははこの姿で会うのは久しぶりかな?」
「ぇ、ふえぇーーーーーっ!?」
「うわ、びっくりした!?」

なのはに当然のような口調で話しかけた少年へ向けて、なのはの悲鳴が被さった。
咄嗟に耳を防いだユーノは、頭に疑問符を浮かべたまま、何かに思い当たったらしい。
なのはに恐る恐ると言った感じで声をかけた。

「・・・もしかしてこの姿は始めて?
初めて会ったのときは?」
「そ、そうだよっ!
初めて会ったときからフェレットだったよ!!」
「そ、そうだったのっ!?
ご、ごめん、なのは、騙すつもりとかは無かったんだけどっ!!」
「あ、ううん、それは良いんだけど・・・。
こっちこそゴメンね、大げさで。
驚いちゃっただけで、ユーノ君を怒ってたりはしないよ?」

わたわたとした様子で喋る2人を俺は苦笑を浮かべながら見つめていたが、
何とか話がまとまったようだ。
改めて、2人揃ってこちらへと向き直る。

「・・・すいません。
お見苦しいところをお見せしてしまって・・・」
「す、すいませんでした・・・」

ペコリ、と頭を下げる2人に気にしなくていい、とばかりに首をふってやる。

「どうやらユーノも発病していないようだし、これで安心だ。
・・・じゃあ自己紹介からかな。
俺はしがない一般人だ。
訳あってジュエルシードを集めてはいるが、目的は自身の魔力強化という程度のことだ。
ちなみにジュエルシードの解析は終わっていて、制御も既に完璧だ。
持っている数は5個だな」
「・・・解析に・・・」
「・・・せ、制御・・・?」

2人は俺の言葉が俄かに信じられなかったらしく、まじまじとこちらを見つめてきた。
特にユーノは疑いの気持ちが強いようで、俺を得体の知らないモノのように見てきやがる。

「ああ、本当だ。
俺の専門はデータベース管理と生命操作技術なんでな。
ジュエルシードは防御や攻撃、それに結界系について補助エネルギーとして使っている。
・・・と言うか、キミの持っているそのデバイスも一部の力を制御して
自身のパワーアップに利用しているようだけどね」
「・・・ユーノ君、分かる?」
「・・・うん、ちょっと信じがたいことだけど、ジュエルシードを乾電池みたいに使う方法があるみたい。
あの、失礼ですが魔法はミッドチルダ式とは違うんですか?」
「ああ、その通り。
・・・何式、とかっていうのはよく分からないけどね」
「良く分からないですけど、すごいんですね・・・」

なのははよく分かっていないらしく、ただ何と無く凄いんだろうなぁ、と感じているだけだろうが、
ユーノは仰天した顔で必死でジュエルシードを制御するための方法を考えているようだった。

「さて、今度はキミたちの番かな?」
「あ、はい。
わたしは高町なのはです。
えと、私立聖祥大学付属小学校の3年生で、
ユーノ君からこの子・・・レイジングハートを受けとって魔道師になりました。
ジュエルシードを集めている理由は、暴走されるとわたしの住んでいる街が、
大好きな人たちが傷ついてしまうから、それを防ぎたいんです。
集めた数は、6個です」
「僕の名前はユーノ・スクライアといいます。
次元世界を超えて遺跡発掘をしている一族の出で、
僕が不甲斐ないばかりに発掘したジュエルシードがこの世界に散らばってしまいました。
それでこの世界でジュエルシードを探しているんですが・・・。
ええと、ジュエルシードは全部で21個ありましたので、貴方が5個、なのはが6個、それから・・・」
「フェイトは7個持っているはずだ」
「・・・そんなに。
じゃあ残りは3個ですね」

あごに手を当てながらそう呟くように答えたユーノと、
フェイトが思ったよりもたくさんの数を集めていたことに驚いているなのはに
俺は提案を出すことにした。

「・・そう。
俺たちはフェイトに遅れをとっているんだ。
しかも、あまり時間を掛けては管理局がまた横槍を入れてくる可能性がある。
そこでだ。
・・・ここは一つ、協力しないか?」
「「・・・え?」」

2人のユニゾンした声に、俺は笑顔を返してやった。
何しろ相対すべきは、なのはとフェイト、
そして俺とプレシア、別々の相手なのだ。
ここは協力するのが一番の手であろうことは間違いない。
俺は2人が首を縦に振るのを半ば確信しながら、そんな同盟を持ちかけたのであった。

(続く)